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いつものように魔王様とパルと食事を取って、皆で食堂で休憩しているとオッサンが食堂に入ってきた。
「オッサン、おかえりー。今日の相手はどうだった~?」
「ダメだな。何故女が4人もいるのに全員ババァなのだ?つい力が入って殺してしまうところだったぞ。」
くっ、相変わらずブレないな。このロリの帝王めっ!そこにしびれぬ、あこがれぬっ!って感じだ。
まともなのは俺くらいか。ふっ、参っちゃうな。
「ってことは、一応殺さずに人里近くに捨ててきたのね。良かったわー。久しぶりに問答無用で襲ってこない良いパーティーだったしね~。」
「しかし、全裸だったからのぉ。社会的には死んだかもしれんが。」
「はっはっは。命あっての物種なんだ。それくらい覚悟の上でしょー・・・・ん?俺、勇者のズボンしか取ってないはずなんだけど?何故全裸?」
「軽くブレスを食らわせてみたら、勇者らの服が吹っ飛んでしまってな。ババァの裸なんて見たくなかったので、早々に倒したのだがなぁ。」
「くそったれーーー!!俺の人生でここまでの屈辱は初めてだっ!!どこだ?どこに捨ててきた?今からでも見に行ってく・・・スイマセン、興奮しすぎました。構えた包丁を下ろしていただけませんか?パル様。」
視界の正面に立ったパルは左手に食堂で寝てしまった魔王様を抱え、右手にギラついた包丁を持っている。包丁を下ろしながらも、決して手放そうとしないことに恐怖を感じる。
応手を間違えたら死ぬかもしれない。食堂で毎日死を覚悟している奴なんて俺くらいじゃないのか?
視界の端でドンが我関せずで飯食ってる姿が目に入るが、今はどうでもいい。
「魔王様が寝ているのに騒いで申し訳ございませんでした。何卒お許しいただけないでしょうか?自分で言うのもあれですが、本日は現金のほか、聖剣なども献上させていただいた功績でなんとかなりませんでしょうか?」
俺は一呼吸で一気に弁明を述べる。
パルがため息をついている姿が目に入る。当然だ。目を離したら包丁で刻まれかねないのだ、全く目を離すことなんてできないわっ。
「誤解しないでください。私は汚い空気を吐いているのが許せないので、汚物発生生物を処理しようと思っただけです。」
「待てっ!?ひどくねっ?それ俺のせいじゃないじゃん。いやっ、分かった。まずは包丁を手放せっ!!俺も呼吸しないように努力する。」
「努力ではなく完遂してください。まぁ、今回だけは許しましょう。今日はオンジィ様もお帰りになりますが、あまり騒がないようにして下さい。では、私は魔王様を寝室に連れて行きますので。」
パルはこちらを極力視界に入れないようにしつつも、魔王様を起こさないように細心の注意を払って食堂を出て行った。
なんて無駄な技術だと感心してしまった。
「そうか、オンジィが帰ってくるか。」
「パルから逃げたくせに、居なくなった途端にいきなり話し出すなよ、オッサン。」
「ふんっ、賢い者は危険には近寄らないものなのだ。」
ちっ、冷静な対応しやがって。相変わらず無駄に渋いローリーだ。
「それにしても、伯爵の今回の土産は何かなぁ。」
「うむっ。ワシも楽しみにしておる。」
オッサンと土産の話で盛り上がっていると、小動物の騒ぐ声がしてきた。
むっ!近いなっ。
「そこかっ!!」
俺は窓に向かってフォークを投げつけた。
「たっだいまーーー!!で、このフォーク何?頭蓋骨に突き刺さっちゃってるんだけどぉ。」
窓から現れたのは、王冠をかぶった骸骨、右手に輝く杖を持ち、それにボロボロの外套を着た典型的なリッチ。今は、額のところからフォークが刺さっているが。
そう、伯爵ことオンジィである。
「ごめん。伯爵。なんとなくノリでやった。反省はしてないけど悪かったとは思ってる。」
「うん、正直者は好きだよぉ~。だから、許してあげるぅ~。でも、クレドのお土産は無しね~!!」
「ボヘッ!!」
俺は血反吐をぶちまけて床に沈み込んだ。
「オンジィよ。よくぞ帰ったな。待っておったぞ。」
「うん、ただいま~。はいっ、ドンへのお土産~」
ソワソワしながら話しかけていたくせに、オンジィから包みを受け取るや否や残像を残してオッサンは去って行った。
くそっ。あのロリ帝めっ。部屋で一人で楽しむつもりだなっ!!
「伯爵様お許しください。アレだけが、アレだけが楽しみなんです。」
俺は泣きながら、伯爵に縋りつく。
「本当にしょうがないなぁ。今回だけだからね~。」
「ありがとう、伯爵っ!!」
俺も包みを受け取ると同時に、中身を取り出す。
そうっ!エ○本だっ!!
むむむっ、これはけしからんなぁ。おっ、これも中々。おひょー!!
今日も魔王城の夜は更けていく。