2
やはり翌日になって人間どもが侵攻してきました。
今日は5人パーティーの勇者です。
対して、俺は一人。ゴブリンシーフだから一匹というべきなのかな?
うん。今日も勝てない気配しかしない。そして、死亡の気配しかしない。
にしても、相手は正統派っぽい勇者(♂)以外の戦士・魔法使い・僧侶・踊り子全て雌ってどういうことだ?
ハーレム?ハーレムなのか?
くそっ!シーフの名に懸けて某3代目怪盗みたいに女心を盗みたいっ!!!
それが無理なら、勇者の股間の聖剣を盗んでやりたいっ!!!
いやっ、手に入ってもいらないけど。
ふぅ、心の中でとはいえ、叫んだおかげで落ち着いてきたわ。
さてっ、まともに仕事するかな。俺ってデキる男だし。デキる男はモテるってオンジィも言ってたしね。
「ふふふっ。飽きもせず、よく来たな人間ども。我が名はクレド。四天王のクレドだっ!!さぁ、掛かって来い!!」
うん。偉そうに言ってるけど、普通に戦ったら1秒かからずに死ぬけどね。
「ゴ、ゴブリンが喋った!?」
何か勇者たちが驚いてる。
あぁ、こいつ等情報収集せずに来たな。久しぶりのカモだわ。
なら、ちゃんと説明してあげるかな。でないと、可愛そうだもんね、うん。
「くくくっ。勇者どもよ、貴様らも知っての通り、魔王様の下へ行くには俺の守るこの地獄門を通過するほかにない。俺も含めて四天王がそれぞれ魔王様の待つ玉座へ繋がる門を守護しているぞ。」
実際には、魔王様は玉座じゃなくて私室でパルに勉強教わってるんだけどね。
「そして、この門は守護する四天王を倒さない限りは決して開くことはない。」
実際には、通過しようと思えば通過できるんだけどね。意外とみんな信じてくれるんだよね。不思議だ。
「わかった。ならば勝負だ。」
勇者はゴクリと息を呑み、剣を抜いて身構えた。戦士も剣を構え、僧侶はパーティーにバフを掛けた。魔法使いも杖を構え、魔法を唱える機会をうかがっている。踊り子も短剣を構えている。
ようやく戦闘態勢万端かぁ。戦闘態勢まで時間かかり過ぎ、実力不足だな。久しぶりの問答無用に戦闘って訳じゃないパーティーだから、好感度高いんだけどな。
「くくっ、では改めて戦うとしようか。行くぞっ!!!」
俺は体を低くして、疾風のような速さで敵に近づく。
予想外の早さと素手のまま接近する俺に虚を突かれた勇者に近づき・・・
くらえっ!!俺の必殺のぉぉぉぉぉ
「盗むっ!盗むっ!!盗むっ!!!ついでに顔面にぶんどるっ!!!!!」
「なっ?」
ふふふっ、まぁまぁの戦果だな。
聖剣に、7万Gに勇者のズボンにパンツか。パンツいらねえっ!!!
当初の俺の思いに反応したのか?
でも、ぷっ!
勇者が真顔なのに、下半身全開でマントがたなびいてる姿が最高に面白い。
何でブーツ履いてるの?何で胸当てしてるのに下半身全開なの?
笑いが止まらないよぉ。もう勇者と目を合わせられない。勇者も俺も顔真っ赤だよ、理由は全く逆だろうけどな。
俺は慣れた手つきで、盗んだアイテムを門の横の転送ボックスに入れ、パルの下にアイテムを転送する。
さて、次は誰を狙うかなぁ。
戦士のビキニアーマーか、僧侶のパンツか、魔法使いのローブか、踊り子の服か、くくくっ!
どれでも損は無しっ!!行くぞっ!!!と向き直った瞬間に俺の意識は暗転した。
気が付くと目の前にはうちのマスコット幼女こと魔王様がいた。
うん、いつも通り可愛い。
「あれーーー???俺、なんで死んだ?魔王様、復活あざーっす。死んだ理由分かります?」
「おかえり~。多分、勇者に後ろから蹴られて死んじゃったんじゃないかなぁ」
「くっ、後ろからとは卑怯な。勇者のくせにっ!!折角のラッキースケベの機会がっ!!!!まぁ、いいか。あれならオッサンは突破できないだろうし、ペナルティーも発動しただろうしなぁ。」
「うんっ。ドンがいつもみたいに弱体化した勇者を送り返してたよぉ。」
人に教えられるのが嬉しいのか、ドヤ顔の幼女可愛い。
思わず、頭を撫でてしまう。
「もう侵入者も来ないだろうから、食堂でパルが待ってるだろうから行こうか?」
と手を差し出す。
「うんっ!」
魔王様と手を繋いでルンルン気分で食堂に飛び込んだ俺は、いつものようにパルから「魔王様に触れるな、愚物っ!!」と頭に麺棒を食らった。
調理用品使いパルって名を変えたほうが良くないかな?