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ヒロシのぱらぱらぱらしゅーと

歯列共生

掲載日:2015/07/28

 ガリッッ!


 口の中に鋭い痛みが走る。左頬の内側あたりに。


 ……噛んじゃった。


 そう思って、舌を動かす。

 噛んだところを舌で触ってみた。


 ベラッとした肉の付いた皮の感触。やっぱり削げてる。

 鉄サビのような血の味が口の中に広がる。


 まあ、何かの拍子に口の中を噛むなんて良くあることだ。

 すぐに気にならなくなる。


 そう思った矢先。


 ガリッッ!


 再び口の中に鋭い痛み。しかもまた左側。


 ……また噛んじゃったよ。


 一応、舌で確認してみる。

 ベラッとする部分が増えていた。


 さすがに口の中が痛い。

 っていうか、口の中のそこらじゅうが痛いんですけど。

 じんじんする。


 ……なんでこんなに痛いんだ?


 ちょっと心配になって、右の人差し指を口の中に入れてみた。

 

 なんかしょっぱい中にも甘みがあるな……


 とか考えながら、指先で創口のあたりを触ってみる。


 びらびらしているけど……別にそれほどの痛みはない、と思う。


 で指を抜く。


 すると口の中がじんじんしてくる。


 ……? なんかできてるのか?

 でも、そんな感じはなかったけどな……


 目を開けてみた。いつもの壁がぼんやり見えた。

 右を向いて寝るのがいつもの姿勢だ。


 あたりはほぼ真っ暗だった。

 仰向けになってみる。窓から少しだけ夜の光がもれてきていた。

 音は何も聞こえない。

 ただ、口の中がじんじんとして熱かった。


 洗面所に行った。


 ぱちん。


 電気をつけた。蛍光灯の光がまぶしい。

 洗面台の鏡の前に立ってみた。

 で、口を軽く開けてみた。


 ……ん? あれ?


 何か違和感を感じた。口の中に。

 もう一度、口を開けた。今度は、思い切り大きく開けた。


 !!!


 目を疑った。

 鏡の中に映る口の中には、これでもかと言わんばかりに生えていたのだ。

 そう、一面に。

 鋭く尖った白い歯が。

 剣山のように。生えていたのだった。


 反射的に口を閉じた。

 閉じたものの、確かに見てしまった。


 ……なにこれ、こわいんですけど!


 恐る恐る口を横に開いてみる。

 普通に歯が並んでいる。


 ……見間違いかな? っていうか、見間違いだよね?


 もう一度、口を開いてみた。

 やっぱり口の中が白い剣山になっている……


 ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……


 声の出ない悲鳴を上げた。

 何度見ても白く鋭い歯が口の中、一面に生えている。

 もともとあった歯が一列目とするなら、その内側に二列目、三列目が並んでいた。

 二列目以降は全部やたら鋭く尖っている。

 まるでサメの口の中のようだった。


 いったい、いつの間に……

 何で気づかなかったんだ……?

 っていうか、ヤバイ、怖すぎる。

 マジでキモい。我ながらキモい。


 鏡の前で口を開けたまま呆然としていた。

 

 ヤバイ、ヤバイよ。

 いくら何でも歯が多すぎる。

 何とかしなきゃ。

 どうすればいいんだ!?


 頭をフル回転させて考えた。

 こんなに考えることは最近ない。

 ……ないけど……閃いた!!


 そうだ!!

 歯を抜こう!!


 我ながらナイスなアイディアだ。

 さっそく口の中に指を突っ込んだ。

 

 しかし、ここで大きな問題に直面した。

 

 鏡を見ながらとはいえ、どの歯が新しく生えた歯なのかわからない!!

 しかも、どの歯もしっかりと生えている。

 簡単に抜けそうにない。


 どうしたらいいんだ!?

 このままじゃ、ヤバイ。


 そう思いながら手当たり次第に歯をいじっていた。

 すると、そのうちの一本が何となく抜けそうな感じになってきた。


 よし、いいぞ。

 この調子で抜いていけば……


 と思ったけれど。

 ふと。

 

 もしかして、せっかく生えてるのに抜く必要はあるのかな?

 歯って生え替わったりしないし。

 本当に抜いちゃっていいのか?


 などという考えが湧いてきたのだ。

 そんなことを思い始めると。

 

 だいたい、どの歯が必要ないかとかわかんないしな……

 それに口の中を見せるってあんまりないし……

 まあ、歯がいっぱいある分には、きっと困らないよね。

 っていうか、きっと困らない!!

 一列目がダメになっても二列目、三列目があるって感じ?

 なら、問題ないんじゃないかな!?

 ……うん、きっと問題ない!!

 むしろ、良かった!!


 口を閉じた。

 もう一度鏡をみたけど、普通だった。


 きっと、みんな、人の口の中なんか気にしない。

 歯の数なんて数える人もいない。


 そう思ってもう一度寝直すことにした。


 めでたし、めでたし。

 もとい。


 歯出たし、派手たし。



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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは雪見です! 感想いただいたので来ちゃいました。小説家になろうで童謡系とか上げてる人って珍しいですよねw このお話はなんか不気味さみたいなものがあって、面白いなと思いましたホラーとか…
2015/09/09 18:56 退会済み
管理
[一言] サメの歯が生えても、のほほんとしていられる主人公に、禅話的な雰囲気を感じました。自分もこんな風に生きられたら、と思います。 サンマは骨も目玉も残す派です。
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