第45話 諦めと戦争
謹賀新年
皆様大変長らく、お待たせ致しまして大変申し訳有りませんでした。
プロットや設定などが全て消えて、絶望的だったのですが、少しだけ書き終えたのでゆっくりですがまた更新していきます。
それでは今年もよろしくお願い致します。
1週間後、テツヤは確実に衰弱していた。以前のような覇気は衰え、何処となく暗い雰囲気を感じさせるテツヤは本人かどうか問われれば首をかしげるほどに違和感があった。
だが、テツヤがそんな状態でも未だに第一妖刀は見つかっていなかった。それでも不幸というものは向こうからやってくるらしい。
「恐れながら国王陛下に申し上げます!アメシア帝国より宣戦布告、既に帝国軍は国境まで迫っています」
「なんだと⁉︎我が国と帝国は休戦協定を結んだばかりだぞ!」
「なんでも大使の殺害が気に障ったようです」
「あれは魔族だったであろう!帝国め難癖をつけおって、結局は戦争がしたいだけではないか!」
「落ち着け王様、俺が出る。それでしばらくしのげるだろう」
「しかしレウス殿だけでは…」
「……まて、俺も行く」
俺は聞いてられなくてレウスと国王の会話に口を挟んだ。だが、そう言った俺を皆が信じられないような顔をしてみている。
「マスター、貴方は何を仰っているんですか⁉︎」
「そうだぞテツヤ。お前はやらなくちゃいけない事があるだろう」
「……どうせこのまま死ぬならせめて暴れてから死にたい。それに、戦場には妖刀を持っているやつが来るかもしれないだろう」
「それは、そうだが…」
「マスター私は絶対に反対です。貴方がそんな事をするのなら私が代わりに戦います」
「いや、いい。どうせもう長くない。これだけ探し回って見つからないんだから妖刀はもう諦めるさ」
「マスター!」
テツヤたちは目が覚めた日からロマリア王国の王城を拠点として妖刀を求めてあちこちを探し回った。だが、結果として妖刀がみつかることはなかった。
少なくともロマリア王国内には無いだろう。だからと言って国境を越えて他国に行っても見つかる保障は無い。そう考えてテツヤは既に諦めに入っていた。
「……さあ、行くぞ。アンチは他の従魔たちを連れてきてくれ」
そう告げて部屋から出て行くテツヤを皆はどこか辛そうな目で見ていたのだった。
「ぐっ……」
部屋から離れた人気のない廊下。そこでテツヤは座り込んでいた。心臓に左手を当て、右手は壁についている。テツヤは乱れた呼吸を整えるようにゆっくりと息を吸った。
アイテムボックスから鎮魂石というテツヤが錬金術で作った宝石を取り出し噛み砕いて飲み込むとテツヤは一息ついた。
鎮魂石は中級アンデット系魔物の魔石200個と破魔草という魔物の魂に直接傷をつけることが出来る特殊な薬草を用いて作られている。
効果は体内に摂取すれば魂の劣化が一時的に止まるというものだが、この一時的に止まる時間はおよそ3時間ほどで一度使うと半日は再使用しても効果を現さず、逆に魂が傷つくという悪影響を及ぼす。
つまり、テツヤはそんな物に頼る必要があるほど切羽詰っていたのだ。
「あー、畜生。こんなところで終わりかよ……」
生きる光を失った目を虚空に向け、乾いた笑いを浮かべてテツヤは呟いた。自身の寿命まで残り3週間。もはや生存は絶望的だった。
「まあ、いいや。最後にいっちょ暴れてやるか…」
テツヤは呟き、そして歩きだした。
2日後、テツヤたちの姿は戦場にあった。
敵国であるアメシア帝国とテツヤがいるロマリア王国の国境ではお互いの軍勢が向かい合い、睨みを利かせている。
アメシア帝国は重装歩兵2万、軽歩兵3万、弓兵2万、騎兵1万の総勢8万の軍隊。
対するロマリア王国は重装歩兵1万、軽歩兵2万、弓兵1万、騎兵2万の総勢6万の軍隊。
ロマリア王国の方が数でも兵の質でも劣っている。だが、時に究極の個は数を凌駕する。
ロマリア王国にはSランク冒険者、レウス ロベルトと同じくSランク冒険者のテツヤ、そしてその従魔たちがいる。また、多くのAランク冒険者たちも戦争に参加していた。
対するアメシア帝国はAランク冒険者とBランク冒険者がそこそこ。向こうには究極の個は居なかった。
ブオオオオオッ!!!!
ドンドンドンドンッ!!!!
笛の音と太鼓の音が鳴り響き戦争が始まった。
レウスを先頭にロマリア王国の重装歩兵と軽歩兵が突撃する。左右に分かれた騎兵が駆け、弓兵たちが弓を引き絞る。
そしてアメシア帝国の戦闘と激突するその瞬間
悪夢が現れた。
「僕を忘れてもらったら困るなぁ?」
気がつけばレウスは吹き飛ばされ、先頭のロマリア王国の重装歩兵たちは斬られている。
情報にない圧倒的な強さを持つ敵。
そいつはこう名乗った。
「初めまして。僕はSSランク冒険者、『疾風』のカムラ ベルノット。よろしくね」
そして『黒い瘴気を吹き出す刀』を肩に担ぎ、そいつは笑った。




