第3話 気になる依頼
「ん……んん〜?あ〜朝か………」
俺は柔らかくはないベッドから体を起こしてグッと背伸びをする。同時に軽く柔軟運動をすると関節がバキバキと鳴るのが心地よい。身支度を整えて宿に併設されている食堂に降りていくと、まだ早い時間だからなのかあまり人数はいなかった。
「おはよう。よく眠れたかい?」
「ん〜?おはようございます。よく寝れましたよ」
昨日の女将さんに挨拶をして朝食を持ってきてもらった。今日の朝食はライ麦パンに野菜と鶏肉の入ったスープ。それにリンゴのような果物が一切れだ。
「ご馳走様でした」
パンっと手を合わせて感謝をすると空の食器を女将さんに返す。そのまま部屋に戻ってレザーアーマーとコート、そしてショートソードを腰に刺す。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
俺は宿を出て冒険者ギルドにやってきた。二の鐘がなったので9時くらいだろう。この世界では6時頃に一の鐘、9時頃に二の鐘といって風に3時間ごとに鐘が鳴る。18時に鐘が鳴って最後だ。
「おはようございます」
「はい、おはようございます」
俺は昨日の受付嬢に挨拶をして依頼が貼ってあるボードに向かっていく。ボードには様々な依頼が貼ってあった。幾つか見ているうちに気になった依頼があった。
「すみません」
「なんでしょうか?」
「この依頼なんですけど…」
俺は気になった依頼を受付嬢に出した。その依頼書には
東の森の遺跡探索訓練
適正ランク E
報酬 銀貨1枚
内容 初心者冒険者限定の依頼です。遺跡の探索訓練を行い、次に活かしてください。
と書いてあった。俺は訓練をするのにお金が貰えるのを不思議に思った。
「ああ、これですか。この依頼は一人一度だけ受けられる依頼です。既に踏破及び探索終了済みの遺跡に罠を仕掛けてあるので訓練にしています」
「なんでこんなことしてんの?」
「無謀な事に遺跡に勝手に行って死ぬ冒険者が良くいたのでそれを減らすためだと聞いています。受けますか?」
「んん〜。よし、受けるか。手続き頼む」
「わかりました。これは期限は特にありませんが怪我をするかもしれないので気をつけていてください」
「はいはい。そういや受付嬢さんって名前なに?受付嬢さんって言いずらいんだよね」
「私の名前はレナです。よろしくお願いしますね新米冒険者さん」
「ああ、よろしく」
そう言って依頼を受けてギルドから出ようとしたその時、
「おい、待てや坊主」
スキンヘッドのおっさんに絡まれた。テンプレとしか言いようがない。
「なんだよ?」
「お前みたいな奴がレナちゃんと仲良くしてんじゃねーよ。さっさとお家に帰りな」
「お前バカ?あれは冒険者が依頼を受けるのに必要な会話ばかりだろう?その程度で文句を言ってくるなんてお前の器がしれてるな」
「んだとこのガキ!」
おっさんが殴りかかってきたのでその腕を掴み、脇の下を軽く押してそのまま投げ飛ばした。一本背負いをイメージして投げたので綺麗に飛んで行った。おっさんが伸びてるのを確認して俺はギルドを出て行った。
「グレーーイ!」
俺は門兵に挨拶をして街から出て来た。そして昨日の林の近くまで行ってグレイを呼ぶと林の奥からものすごい勢いで何かが走ってきた。
「ウオーーンッ‼︎」
ズガドシャベキグチャッ
「ぐふっ」
「ヴォウッ⁉︎」
グレイに思いっきり体当たりされて俺は吹き飛ばされて地面を一回バウンドし、細い木に当たって木が折れて俺もそのまま落下。その結果がズガドシャベキグチャッという擬音の招待だ。
「いてて。グレイ元気そうだな」
「ヴォウ!」
「よしよし。あ、これをつけてくれ」
俺はグレイを撫でながらアイテムボックスから従魔の首輪を取り出してグレイにつける。これでグレイも街に入れるようになる。
「それじゃ、行くか」
「ヴォウ!」
俺はグレイを伴って遺跡へと向かった。
「これはデカイな」
「ヴォウ!」
俺は遺跡を見て半ば呆然としていた。教えてもらったとおりに道を進み20分程。かなりサイズの大きい遺跡があった。入り口には係員がいて、依頼の旨を伝えて中に入った。
俺は遺跡に入ったあと、様々な罠を解除しつつ遺跡内の魔物を倒しながら着々とレベルアップをしていた。今の俺とグレイのステータスはこれだ。
名前 テツヤ タニグチ
種族 人間
性別 男
年齢 17歳
職業 無職
レベル12
スキル
モンスターテイムLv4
剣術Lv3
鑑定Lv2
特殊スキル
SPシステム:残5pt
全言語理解
アイテムボックス∞
称号
世界神の加護
従魔
グレイLv16
名前 グレイ
種族 グレーウルフ
性別 雄
年齢 3歳
レベル16
スキル
索敵Lv5
隠密Lv2
集団戦闘Lv2
嗅覚上昇Lv6
特殊スキル
称号
テツヤの従魔
こんな感じで俺たちは順調にレベルアップをしながら進み、最後の部屋に辿り着いた。最後の部屋に置いてある札を取ってくれば合格らしい。俺は罠を解除して部屋に入り、札を取ってアイテムボックスに仕舞う。部屋を出ようとした時、札が置いてあった台座と壁の文様が気にかかった。
(なんだ?これは…文字か?)
俺は文様に手を這わせながら特殊スキルの全言語理解を発動して読む。
「『我らここに大いなる罪を封印せん。何人たりとも罪を解き放ちてはならぬ。罪は其の者を飲み込むだろう』か?」
俺は壁の文様を読んだ。次は台座の文様を読むがなんとなく壁の文様とは違う気がするが構わずに読み解く。
「『ここは大いなる罪を封じるところ。力を求める者よ、罪を受け入れるべし、さすれば道は開かれるだろう』か。なんとなく面倒くさい言い回しだな。ん?これは?」
よく見ると台座の下に黒い宝石がはめ込まれ、壁や台座の文様とは違う文様が彫られていた。
「なになに?『大罪門よ開け』?よくわからな……」
その時、俺の足元は割れ、俺は暗い闇の中へと落ちていった。




