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第17話 大氾濫①

「ご主…」


ズギャッ!


「ごふっ…」


「早い。もっと長く寝かせろ」


いつも通りに怠惰ベルフェゴールが俺を起こしに来たので脊髄反射並みの反応で蹴り飛ばす。相変わらず蹴られた怠惰ベルフェゴールは平気そうな顔をして頭を掻いている。こいつ、最近慣れてきたな。


「おい、シロもハクもさっさと起きろ」


「「…んにゃ〜」」


「こいつら……」


俺が揺すっても起きる様子のない双子に軽くない殺意が芽生える。青筋がピクピク痙攣している。俺は未だに起きない双子に怒気と殺意を含ませながらこう言った。


「アンチを量産してその中に放り込むぞ?」


ガバッ!×2


「「おっ、おはようございます!マスター!」」


「おう、おはよう。じゃあアンチ、今日のこいつらの訓練はお前が最高レベルにキツイのをしてくれ」


「Yes、MyLord」


俺にそう答えたのはクリーム色の長髪をしたスレンダーな女性。その顔は無表情で吊り上がったキツそうな目が特徴的だ。全体的に色白で病弱そうに見えるが正体は俺が作った自動人形オートマタだ。正式名称はAnti-phenomenon golem(アンチ-フェノーマノンーゴーレム)、通称アンチという。俺が新たに取得した錬金術を使って造ったゴーレムとホムンクルスの中間的な人造機械擬似生命体だ。


その能力は非常に高く、能力が覚醒してさらにその力を伸ばしているシロとハクを同時に相手にして無傷で完勝出来るほどだ。また、Anti-phenomenonの通りにあらゆる現象が効かない。と、言いたいところだが未だに俺の錬金術のレベル不足なのか分からないが、現在は魔法を無効化することしか出来ていない。それだけでも充分強力だが、俺はまだ満足していない。


さて、人間でも生物ですらないこいつは疲れを知らない。そのため、シロとハクの訓練相手に丁度いいのだが、当然人間の感情の機敏など細かく分かるわけもなく訓練がキツすぎると俺にシロとハクが泣きついてきた。初めての戦闘から1週間ほど、最近は生意気になってきているので丁度いいと俺は笑って訓練に放り込んだが。


俺は嫌がる双子を連れて(連行ともいう)ギルドの訓練所に向かった。


「あ、テツヤさん。おはようございます」


「レナさんか、おはよう。訓練場を借りたいけどお願いしていい?」


「またですか?最近、子供の悲鳴が聞こえるって苦情が来ているんですけど……」


レナさんが苦笑しながら言う。少し訓練場を使わせる事を渋っているようにも見えるその姿を見てシロとハクが期待に満ちた眼を向ける。


「まあ、いいですけどね。それじゃあ気をつけてください」


「ありがとう。シロ、ハク、行くぞ」


だが、その期待は裏切られた。二人とも諦めたような目をして乾いた笑いをしている。俺が訓練場に向かおうと歩を進めた時だった。


カンカンカンカンカンカンカンッ‼︎


「なんだ⁉︎」


「これは⁉︎」


俺が驚いた声を上げると、レナさんは動揺した声を上げた。見ると顔が青ざめている。警報らしき音は未だになり続けていた。


「レナさん!これは一体なんですか⁉︎」


俺が問い詰めるとレナさんは顔を青ざめたまま話し始めた。


「こ、この警報は街の周囲3キロ以内に千体以上のモンスターが現れた時になる警報です。つまり、大氾濫ようの装置です」


「つまり大氾濫が起きたってことか…」


このタイミングで大氾濫とはついていない。シロとハクはまだ経験が足りずに力量も不足している。そこらの冒険者風情よりは強いが俺のような隔絶した強さはない。


「レナさん!冒険者の収集と編成を早く!」


「はい!」


急いで駆けていくレナさんを見ながらアンチにシロとハクを任せて俺はギルドから駆けだした。目指すのはとある宿だ。その宿に着いた俺はある部屋の扉を蹴り開ける。


「レウス!」


「……分かってる。準備は終わった」


扉の向こうには既に装備を整え、顔を引き締めたレウスがいた。この間のレッドオーガ討伐でレウスは現在Aランクだ。俺と組めて、尚且つ他の冒険者を纏められるのはレウスしかいない。


「レウスは先にギルドへ走ってくれ!俺は荷物を受け取ってくる!」


「分かった。後で会おう」


宿から出た俺とレウスはそれぞれ逆方向へ走っていく。俺が向かうのはデンガの鍛冶屋だ。鍛冶屋では既にデンガが外で俺を待っていた。


「遅かったなテツヤ!」


「そいつは悪い!出来てるか⁉︎」


「当然!」


デンガがそう言って俺に投げて渡したのは、ふた振りの剣と2セットの防具だ。剣はエンペラーオーガの角から作った剣だ。本来ならずっと前に完成していたはずだが、デンガは最高の作品にしたいと期日を伸ばした。だから俺はそれを許可しつつ防具も頼んだ。それの受取日は今日だった。これだけはギリギリ間に合ってよかった。


「よし、ありがとな!安全なトコに避難しとけよ!」


「任せとけ!」


そう言ってデンガはサムズアップする。ったく、そこは誇るとこじゃねえだろうがっての。


俺は受け取った荷物を持ったまま走ってギルドに戻る。ギルドでは既に編成が終わるところだった。今回はレウスが指揮官兼遊撃をするようだ。俺?俺は当然、遊撃に決まってるだろう。


俺はシロとハクに近ずくと装備を二人に渡した。


「それを今すぐ装備しろ。これからは長くなるぞ、気を抜くなよ」


「「はい、マスター!」」


全く、こういうところは素直で可愛いんだがな。まあ、戦闘で役には立っているから問題はないし、いいかな。


「アンチ。お前には魔力を供給しておく。それと戦闘ではこいつを使え」


「Yes、MyLord」


アンチは魔力を燃料として動いている。俺はアンチの限界容量まで魔力を流して入れた。そしてアイテムボックスから出したある腕輪を渡す。





名称 スペースリング

等級 特別級ユニーク

効果 異空間に物を仕舞っておける腕輪。異空間に仕舞ったものは思考で取り出すことが出来る。収容重量は500kgまで。




当然、遺跡から取ったものだ。俺はアイテムボックスが有るのでいらなかったが、アンチには必要だと思い渡した。ちなみにリングの中には多種多様な武器が入っている。これで戦闘でマトモにアンチを使える。俺も必要な装備を整えているとレウスが話し始めた。


「お前らよく聞け!魔物どもがもうすぐこの街に到着する!絶対にこの街に入らせるな!この街は、俺たちの手で守るんだ!」


「「「「「「「「うをおおおおおおおおおおおおっ‼︎」」」」」」」」


レウスの言葉に冒険者達が雄叫びをあげる。俺含め冒険者達が準備を終えるとギルド職員が一般人の避難完了の旨を伝えてきた。冒険者達はその知らせを聞いてギルドから街の外壁に向かって走る。俺も走りながら隣を走るシロとハクに問いかけた。


「お前ら、いけるか?」


「「うんっ!」」


「はあ、無理はするなよ。あと、絶対に調子にのるな。分かったな?」


「「はい、マスター!」」


「ったく装備もせっかく作ってもらったんだから壊すなよ」


俺は二人が着ている防具を見る。渡した素材が素材だけあって、とんでもないモンを作ってくれたようだ。二人の装備はこれだ。





名称 白糸のコート

等級 希少級レア

効果 ホワイトスパイダーの糸を使ったコート。その糸の効果を増やす付与がかかっており、対刃、対衝の効果がある。



名称 白蛇の胸当て

等級 希少級レア

効果 ホワイトスネイクの鱗と皮膚を使った胸当て。魔法の威力を軽減する。また、普通の防具よりも防御力は高い。



名称 白蛇の手甲and脚甲

等級 希少級レア

効果 ホワイトスネイクの鱗と皮膚を使った手甲and脚甲。自身の魔力を補助する効果が付与されている。また、魔法の威力を軽減する効果もあり、防御力は普通の防具よりも高い。



名称 鬼帝之劔キテイノツルギ

等級 特別級ユニーク

効果 エンペラーオーガの角を主として使った剣。全体的な身体強化と武器破壊の効果をもつ。




これだけお膳立てしたからには死んでもらったら困る。俺はもう一度、注意を言った後に二人は俺の後ろで戦えと指示を出した。二人ともその指示に素直に頷く。


「アンチ、お前は俺のサポートだ」


「Yes、MyLord」


アンチの準備も良さそうだ。外壁に着いた俺は跳躍して外壁の上に乗る。そこからはもう直ぐそこまで来ている魔物の姿があった。俺は腰から怠惰を抜く。気づくと隣にレウスが立っていた。


「テツヤ、準備はいいか?」


「当然」


「よし、お前らぁぁあ!戦闘、開始ぃい‼︎」


「「「「「「「うをおおおおおおおおおおおおっ‼︎」」」」」」」


冒険者が衛兵と共に雄叫びをあげる。魔物はそこまで来ている。戦闘開始だ。


「さあ、遊びの時間だ」


俺は外壁から魔物の中へととびこんだ。


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