ただ大富豪をするだけの話
「ついにお前との雌雄を決する時が来たな」
「あなたでは僕には勝てませんよ」
「そんな安い挑発に乗ると思うか?」
「この程度で『絶対不屈』の名を持つあなたが降参するとは思っていませんよ」
「『冷血皇帝』様にそう言ってもらえるとは光栄だな」
「手札は互いに12枚、交換も完了した。それでは――」
「「決闘!!!」」
「先攻は俺が貰う! 俺はフィールドに『ダイヤの3』をセット! ターンエンドだ!」
「ほう? さっそく僕が渡したカードを使いましたか。いいでしょ、まずは小手調べです。僕は『スペードの7』でアタック!」
「甘いな! 俺は『スペードの9』で『スペードの7』をロックする!!! これで貴様は『スペード』以外の『スート』のカードを出すことはできない!」
「ふっ、その程度で僕は止められませんよ。僕は『スペードのJ』でアタック! そしてそのまま『J』が持つスキル『イレブンバック』を発動します!」
「なにぃ!!!」
「『イレブンバック』の効果により限定的な革命が発生します。現在のフィールドが破壊されるまでの間、カードの強弱が逆転します」
「くっ!」
「さてさて、ロックしたからには『スペード』のカードを用意していたのでしょうが、立場が逆転した今そのカードを出すことはできるでしょうか?」
「……出せない、フィールドブレイクだ」
「そうですか、それは僥倖。では僕は新たなフィールドに『ダイヤの4』と『クラブの4』をペアでセットさせてもらいますね」
「ふ、くふっ、中々いい手を出してくれるじゃねぇか! 俺は『ダイヤの6』と『クラブの6』によって再びフィールドをロック! 今度は逃がさねぇぜ!」
「はぁ、まったくワンパターンな人ですね。僕は『ダイヤのQ』と『クラブのQ』でアタック。その程度では僕は止められませんよ」
「俺もこの程度で勝てるとは思っていないさ。だが俺にはこのエースカードがある! 『ダイヤのA』と『クラブのA』でお前のクイーンを粉砕する!」
「『ダイヤの2』と『クラブの2』でガードです」
「なん……だと……。それは最初に俺が渡したカード……もう一枚『2』を持っていたのか!」
「この程度で勝ち誇れるとは、おめでたい頭をしていますね。それでまだ手はありますか?」
「……ない」
「ではこのフィールドは崩壊、ですがまだ終わりませんよ。僕はフィールドに『クラブの8』をセット! そのスキルを発動する! 必殺『エイトブレイカー』、この効果によりフィールドは強制的に破壊される」
「く、うぉ!」
「そしてこれが僕の切り札、『JOKER』をフィールドにセット! 絶対強者である『JOKER』の前ではいかなる抵抗も無意味! これであなたの負けです!」
「……ふ、ふふふ、ふははっはははははははは!!!」
「な、なんですか! 気でも触れたのですか!」
「いやいや、俺は正常さ。さっきの言葉そのまま返してやるぜ、たかだ『JOKER』で勝ち誇れるなんておめでたい頭をしているなぁ、『冷血皇帝』様よぅ!」
「ま、まさか!」
「そのまさかさ! 俺は『スペードの3』が持つトラップスキル『エンドオブワールド』を発動! これによって『JOKER』はフィールドごと破壊される!」
「馬鹿な! なぜお前がそのカードを持っている! 持っていたのならば『イレブンバック』を発動した時に出していたはずだろう!」
「はっ、切り札っていうのは絶対的に優位な場面で切ってこそなんだよ。まだ余力がある相手に切る方が馬鹿なんだよ」
「何を――」
「つまり、切り札を切ったという事は俺の勝ちが確定したということだ! 新たなフィールドに『ハートの8』をセット! そしてスキルを発動、必殺『エイトブレイカァァァァァーーー』!」
「ば、馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!」
「『エイトブレイカ―』の効果によってフィールドは崩壊する、そして新たな場に『ハートの3』『ハートの4』『ハートの5』の三枚をシークエンスでセット! シークエンスに支配されたこのフィールドでは同じ3枚のカードによるシークエンスでしかアタックできない! そしてお前の手札は残り2枚! よってこのシークエンスによりフィールドは強制的に破壊される!」
「な、なんだとぉぉぉぉぉ!」
「ラストフェイズ! 君臨せしは剣を象徴する最強の王! 『スペードのK』をフィールドにセット! これで俺の手札は0」
「く、う、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!」
「俺の、勝ちだ!!!」
思い立ったから書いた、反省はしている、後悔はしていない。
これを書いてみて、連日このテンションで戦い続けるカードバトルもの主人公はすごいと思った。
私は一試合書いただけでグロッキーです。
登場人物
『絶対不屈』
目つきの悪い少年、切り札を温存して華麗に逆転することがかっこいいと思っている。
そのため勝率は2割を切るという悲惨なありさま。
『絶対不屈』の二つ名は、プレイスタイル自体ではなく、どれだけ負けてもそのスタイルを貫く彼の姿勢を指してつけられている。
『冷血皇帝』
知的眼鏡な少年、全体の流れを正確にとらえ支配するフィールドの王者。
いかなる相手にも7割を超える高い勝率を誇っている。
集団戦でこそその真価を発揮する。