表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二重丸の証明問題  作者: 水無月旬
3/7

失踪した文藝部の鍵

文藝部の鍵が失踪した?顧問の教師に尋ねるも意味不明な回答を、そして部室で現る不思議な少女月見里の推理を聞かされる羽目に

 昨日は仮入部の始まる日だった。わが校では2週間の仮入部を経た後本入部が決定される。

 

 俺はその日、行こうか行かないか迷った挙句、なんとなく気分的に前から目をつけていた文藝部へと足を運んだ。


 俺は部活動説明のオリエンテーションで文藝部員が0人だということ聞いていた。


 文藝などに興味は甚だなかったが、本はよく読む方だったので、これが一番無難なものだと自分でそういうファイルに文藝部を入れてしまっていたのだ。


 好きな本のジャンルは一言によく驚かれるのだが、ミステリが俺は結構好きなジャンルだったりする、ミステリなら何でもいける。本格ミステリから、日常の謎系の推理小説、暗黒ミステリ等々、最近読んだ作家では、山梨柄杓(やまなしひさく)という変な名前の作家がお気に入りだったりしていた。ここ最近デビューした作家らしく。有名なミステリ作家の大賞の最終候補作を書いたらしい。よくわからないが年齢未詳らしく、作者までもがミステリなんて感じだ。けれど出身地はわかっている。俺と同じ静岡県出身なのだそうだ。


 例によって文藝部へと足を運んだ俺なのだが、部員数0だと聞いて何もせず部室へ来てしまったことに気付いた。部室の鍵が恐らく開いていないんじゃないか?


 そして俺は文藝部室に何も人の気配がしないのを少し離れたところで確認をし、ドアノブを捻らず、鍵を借りに職員室へ向かった。


 文藝部室は第二部室寮の3番目の部屋にある。第一部室寮は運動部の部室が集まっていて、汚いながらも豪勢に2階建てになっている。


 一方文藝部の部室がある方は、学校の端にポツンと設備されていて、おまけに職員室から遠い、まったく骨の折れる作業だと思った。


 そして俺は、職員室について鍵を取ろうと思っていたのだが、なぜかそこには鍵がかかっていなかった。文藝部部室の鍵置き場に。


 そして理不尽な事に、この学校の鍵のシステムは、鍵を借りた人が鍵を借りたのち、そのかかっている壁は黒板になっていて、そこに借りた人が名前を書くようになっているのだが、文藝部鍵置き場には何も記載されていない。冗談だろ?


 俺はしょうがないから顧問の先生を訪ねた。何故俺が顧問が誰であるか知っているのかというと、オリエンテーションの時に、文藝部員が0人であるということを告げたのはまさしく顧問の先生であったからである。


 運がいいのか悪いのか、顧問の先生は、実の俺のクラスの担任の先生であった。名は木本香代子(きもとかよこ)という。古典の先生だ。


 俺はその先生を訪ねた。先生の机へと向かった。木本先生の机は職員室の中でも、鍵置き場からずいぶん離れたところにあった。


 すると、先生の所へは先客がいた。一年生であろうか、上履きが学年色の青色だった。


 そこにいたのは髪の長い女性であった。後姿しか見えなかった。髪には何も装飾がなされておらず、ただ長く黒い髪の毛を真下へと垂らしているだけであった。しかし離れたところからでもわかるような良い髪質で、癖と枝毛の多い俺の髪とは非対称的な髪だった。


 やがて話しているのが終わったのか、先生にお辞儀をしてからその場を立ち去る。


 俺はその時初めてその女子生徒の顔を見た。目鼻立ちがそろっていて、清楚な雰囲気が出ていた。かざりっけが髪同様全くなかったが、余分なものがないのは余計にいいのかもしれない。


 彼女は何か俺にとってひきつけるものがあったのかもしれない。恋愛感情か何かまではよくわからない。高校生の出会いは一目ぼれが多いというが、俺を一般的な高校生に分類できるか、俺から見ても少し危うい所である。


 俺はその女子生徒が去るのを目で見送ると、先生が何か不思議な顔してこちらを見てくるので、先生にさっきまでの話を告げた。


「うんうん、大体話は分かったよ。すると鍵は無断で貸し出されていることになるね、部員0人の文藝部の鍵が。」

「そういうことになりますね。」


「じゃあ、一尺八寸(かまつか)君、鍵は貸し出されているんだよ。もう一回部室行ってみな。たぶん鍵は開いてるよ。」


「しかし先生。」


「あ、あと文藝部員になるんだったら、これを持っていなさい。」


と先生は俺の話をまるっきり無視して何やら封筒たるものを俺に手渡してきた。


「これなんですか?」


「見ればわかるでしょ、手紙よ」


「誰から、誰宛の?」


「読めばわかるよ。話がややこしくなるから、手紙は部室で読んでね。」


この時点で話がややこしくなっている。(あんたのせいで)などとは言えず、俺は自信たっぷりと先生が言っていた通りまた職員室から離れた文藝部部室へと向かう。


 俺は部室へと向かっている間、手紙の事よりも先程の女子生徒の事を考えていた。


 なぜかって、そんなの俺が聞きたい。


 県内最大規模の校舎を持つ我が高校は、最果ての地第二部室寮へ向かうだけで数分かかってしまっていた。


俺はまたこの古い部室の前に立っていた。


 しかしなぜか中に人がいる気配がなく、電気はついていない。部室のについている裏の窓は透明ではなく濁った窓が張られていたので、中を覗こうにも覗けない。


 勇気をだして入り口を開けてみる。ドアノブを捻ると、鍵はかかっていないようであった。


 ドアを開けて中を覗く、すると部室の中には、パソコン1台と、女子生徒が一人。それもさっきの女子生徒。驚愕だった。


「こんにちは。」その女子生徒は驚いている俺に向かってそういった。


 彼女はもう俺がここに来るとわかりきっていたような顔をしていて、何かを含んだような笑みをしていた。


「どちら様ですか?」


 俺は冷静を装った。


「人の名を訊ねるときはまず自分から名乗るべきよ。」彼女はそういう。


「ああ、悪い。俺は一尺八寸冬馬(とうま)。」


「知ってる。だってあなた学年1位でこの学校に入学してきたんでしょ、入学式の時、前に出ていたし。」


「なら聞くなよ!」


「一応礼儀よ。」


 そういうお前は礼儀がなってないように思えるんだが…


「私は、こういうものよ。」


 なぜか彼女は、名前を口では名乗らず、名刺を差し出した。名前しか書いていない、よく意味の解らない名刺だった。


 月見里星七


 と、その名刺には書いてあった。


「やまなしせな?」


「よく月見里が読めたわね、久しぶりに『つきみざとさん』と呼ばれなかったわ。」


「人を馬鹿にしているのか?」


「そんなつもりはないわ。」

 彼女は苦笑してそういった。心底俺を馬鹿にしているようにしか見えないのだが。


「で、月見里さんは何しているんだ?こんなところで。」


「見ればわかるじゃない。文藝部に入るのよ。それとあと、あなたを待っていた。」


「そうですか、で待っていたって?俺を?」


「そうよ、」


「なんで俺がここに来ることを知っていたんだ?」


「職員室で見かけたから。」


「それだけじゃ理由にならないだろ。」


「まあそれもそうね、頭の悪い君はわからないのかもしれないわね。」

 彼女はそういった。えっ?何?聞こえなかった。


「だから、頭の悪いあなたの行動を見ていればここに来るなんてわかりきったことなのよ。」


 心底ムカついた。なぜかって、学年1位に学年何位だかわからないただのお嬢様気取りの女子生徒にバカ扱いされたからな。


「怒っているようね、でも安心して、私が言う頭の悪い、ということは、学力でなく、頭の回転が悪い、と言っているのよ。」


「それでも怒るだろ。」

 俺は見知らぬ人と難なく会話をしている。これは結構珍しいことなのかもしれないと俺は自分で思っていた。こいつが見た目以上に、変な奴だったからだ。


「で、なんで俺が来るのがわかったんだ?」


「だからあなたが職員室に来たからよ。」


「詳しく説明しろ。」


「もう、しょうがないわね、まず、私は、さっき職員室で木本先生と話をしている間ずっと、あなたを見ていた。」


「そこからもう俺は知らねーよ。」


「あらそう、悪いわね。 それであなたは鍵を探していた。しかも何か奇天烈なものでも見ているように滑稽にね。」


「一言多いぞ。」


「そしてあなたは、職員室を出なかった。ここでまずあなたがどういう状況に陥っていたかが大体理解できる。そう、あなたは鍵置き場の記名欄に名前がなかったのを不思議に思っていた。」


「そんなの決まったことじゃない、例えば、なんだ、ただ俺は鍵のありかがわからなかったとか、記名欄の名前が読めなかった、あるいは誰だかわからなかった。とか」


「でも実際は私が言ったとおりでしょ。そしてここが一番のポイント、あなたはその後木本先生の元へ来た。それならもう決定打でしょ。」


「しかし、木本は俺の担任だ。クラスの生徒が担任のもとに来る理由などいくらでもあるはずだ。他に古典の授業でわからない所があるとか。」


「学年1位のあなたにそんなことはあり得ないわ。それに担任に用って、鍵置き場に来た後になんで担任の元に来るのかしら、それに木本先生の席は鍵置き場から遠い、鍵の在処が知りたければ、鍵置き場に近い机の先生に尋ねるはずよ。」


 いちいち言い方がイラつく。まあ話をきいて納得しない事には、俺もなにか引っかかる部分があった。


「それであなたが文藝部の部室に行きたい、ということがわかった訳、実際、鍵を借りたのも、鍵置き場の記名欄に名前を書かなかったのも私だし、木本先生には入部の挨拶をしていたの。それに、あなたが鍵を借りに来ていただけで、大体の事はわかっていたけれど。」


「どういうことだ?」


「言ったでしょ、私はあなたを知っている、学年1位だから、だからあなたが1年生であることは、学年色見ずともわかっていた。」


「だからなんだ?1年が鍵を取りに来ちゃまずいのか?」


「ええ、まずいとまでは言わないけどおかしいわね。」


「なぜだ。」


「今日は仮入部初日、部活動裁量枠で入学してきたわでもないから、今日から部活動の人は多い。それ故部活動をやる部活がほとんどの中、あなたは放課後に鍵を取りに来た。放課後に鍵を取りに来る理由なんてのは部室の鍵を取りに来る以外ありえないから、おかしいと思ったの。だって今日から仮入部の1年が部室の鍵を取りに来るなんて不自然じゃない。」

 おしゃべりな女だ。もう清楚なんてものとはかけはなられている。


「現在、部員0の部活は文藝部しかいない。部員が少ない部活ならあり得るけど、そんな部活で、あなたに合いそうなものは一個もないのよね。 以上、あなたがここに来る理由ってわけ。わかったお馬鹿さん?」


「さいですか。」俺は人がいいから怒ったりはしない。何があっても。


「それより、一尺八寸さん?あんた文藝部入るの?」


「ああ、そのつもりだが。」


「結構めんどくさいことになりそうよ。」


「何がだ?」


「あれ?まだ手紙呼んでないの?」


「手紙って、あの木本に渡された奴か?」


「そう、読んでみて。」


 俺は言われた通りに封筒を開く。


 そうかそういうことか。


 俺は中に入っている封筒をみて肩を落とした。


いまだプロローグの内容に入っていないですが、次回ようやく書けそうです。

そして不思議な少女月見里の知られざる過去とは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ