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二重丸の証明問題  作者: 水無月旬
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謎解きの文藝部

手紙を受け取ったのちの話。

 なんでこんな部に入ろうとしてしまったのか。


俺はここ最近常々そう思っていた。


今目の前で展開されている数学の授業など目に留まらず、白紙のノートを広げ恰好だけにペンを持ち、虚ろになっていた。


こんなにも物事を考えたことは勉強以外にありえなかった。興味を引くなどはもっての外。


いつもなら真面目に2次関数の場合分けなどをせっせと頭の中で展開して、誰よりも早く問題をこなせるはずだった。


もっと言えば俺の興味をひくものなどこの世に存在したのだろうか。そこまで行っても誇張ではないと思う。


無関心、無愛想、詩で例えるとしたら無韻詩。そんなレッテルを俺は持っている。


俺は何にも関心が持てない、なので必然的に無愛想になる。他人に好かれようとは思わない、なので無韻詩になる。


この間、同中だった東雲秋桜(しののめあいか)というやつからこんな事を言われた。


冬馬(とうま)は見た目だったらイケメンだけど、性格ブスだから…」


とんだ仕打ちだとおもったな。まあ、見た目はどうか知らないが、性格ブスはご名答といったところか…


こんな性格になってしまったのか実は俺にはよくわからない。


然程苦労しない人生の王道、無影の生活、一般peopleを生きていたらいつの間にかこうなっていた。


別に変えようとは思わない。さ、もう本題に入るか…


「おい、ここの問題の答え解る奴いるか?…なんだいないのか、じゃあ一尺八寸(かまつか)。」


 俺は頭が良い。昔からそうだった。授業を活気なく受ける生徒と違って、しっかり授業を受けている俺は、それ相当の学年1位という成績から授業中各教師なら名指しで問題を答えさせられることがしばしばある。


それゆえ冷徹な発言もしばしば。


「………」


「どうした?一尺八寸?」


 答えられるはずがなかった。だって授業をきいていなかったからな。


「先生。」


「なんだ?」


「わからないです。興味のある問題を解いていたので話を聞いていませんでした。」


 俺は手に手紙を握ってそう言った


 数学の授業が終わった放課後の事


「珍しいね、冬馬にわかんない所があるなんて。」


 早とちりだ、あんなの解こうと思えば30秒で解ける。俺は一言(ひとこと)を見てそう思っていた。


「そんな顔しないでよ、なんか考え事してたんでしょ?まさか恋煩い!?」


「話を大きくするな。単なる考え事だ。」


「ふーん、冬馬が考え事ね~」


「考え事は別に珍しいことではないだろ。」


 ちょっと怒った。あまりに無愛想な俺の扱いとして間違っている。別に王様を気取るわけでもないが…


「いや冬馬じゃ珍しいんだよ。」


「どこが」


「今日全体がさ、気づいていないかもしれないけど冬馬ずっと考え事してたんだよ。あの冬馬が、だよ。」


 もういい、付き合い切れん。


 こいつは一言武瑠(たける)。俺の大して付き合いのあるわけでない旧友みたいなもの、気づけばついてきてるみたいな、そんな存在。ひょうきんな性格ゆえ付き合いが広い人間だが、なぜか不思議と俺みたいな物静かな人間と一緒にいる。


「昨日なんかあった?」一言がそう聞く。


「武瑠、おまえ月見里星七(やまなしせな)って生徒知ってるか?」


「知ってるかって?うーん、聞いたことないな。その人がどうしたの?」


「そうか、いや何でもない。」


「まさか!本当に冬馬が恋煩いを!」


「だから違うと言っているだろう。次言ったら絞め殺すぞ。」


「ごめんごめん、でもまさか他人に興味を持つ冬馬もまた珍しいからね、今日夕立が起きてもおかしくない

よ。」


「まだ4月だぞ。夕立なんかあり得るものか。」


「事のジョークだって。で、昨日本当になんかあったの?」


 俺はさっきまで熟読していた、書物を一言に見せる。


 一言は、状を察したようで、少しニヤニヤして俺を見てくる。


「へー、冬馬が謎解きかぁー」


 何でもかんでももの珍しそうに人を見るな。俺は特別記念物か、絶滅危惧種か何かなのか!


「と、まあこんなわけだ。俺はもう文藝部をやめるぞ。」


「え、やめちゃうの?もったいない、こんな面白い部活だったら進んで入っちゃうけどな。でもこの浮木って人、相当な推理小説好きかもしれない。新入部員にこんなことさせるなんて。」


「そうかもな、文藝部を帰宅部扱いしてた俺が馬鹿だった」


 そう俺は、部活などには、まったくもって興味がなかった。針の触れる方角がないコンパスのように部活を探していた。なんならいっそのこと部活に入らなければいいじゃないかと思う人もいるのかもしれないが、うちの学校はそうもいかない、桐原東(きりはらひがし)高校に帰宅部は存在しない、生徒は必ずどこかの部活動に所属していなければならない。そういう決まりがあった。


 だから俺はできるだけ面倒くさくない部活に入ろうとしていた。先輩後輩同士の主従関係のない部、毎日活動をしない部、ましてや幽霊部員になってもよい部。


 そういう基準を満たしたうえで、俺は文藝部に入ろうとしていた。


 しかし現状は違うようであった。


「そういえば、文藝部とその月見里さんとはどういう関係があるんだい?」


 一言がそう聞いてくるので話してやろう。俺の厄日な昨日の話を。


どうも、プロローグに続いて、高校の授業風景を描写さてていただきました。もしかしたら気づいているかもしれませんが、一尺八寸(かまつか)クンの名前をとうまにしたのは十間からきているんです。一尺八寸十間になりますね、以上雑談でした。

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