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プロローグ
相反する存在を、内に抱え込みきれなくなった「世界」は、「世界」を産む。
それはその世界の「人」の意思でもある。
かつて、現在「人間界」と呼ばれる世界は、「魔界」を生み出した。
人と獣が混ざり合う姿を持ち、
異能を使役する同胞を受け入れがたいものとし、
自らそれらを切り離したのだ。
世界各国の創世神話に疑問をもったことはないだろうか。
神や魔物と呼ばれる絶対者が、無造作に海を満たし、大地の型を成す。
人に祝福を与え、動物を作り出し、炎を呼び、敵を退治する。
神話の中の神や魔物は、人に近しく、名前を持ち、時に交わり、あるいは罰する。
異能を用いて。
そして決まったように人から離れていく。
どんなに慕われようと、どんなに憎まれようと、神や魔物は去っていくのだ。
あるいは眠り、あるいは討ち果たされ。
本当は神や魔物が自ら去っていったのではないとしたら?
自分たちが神や魔物を切り離したのだとしたら?
神話の世界は去るのではなく、むしろ人が神話を切り離すのだとしたら?