終焉の黒魔術〜パーティー追放された男は『モンスターテイム』でこの世の中を裏からジャックする〜
読みづらいところはぜひ連絡をください。
修正を致します。
※私の勉強にもなりますので……
「お前のおかげで俺らのパーティーは散々だ」
月光が木の葉の隙間から降り注ぎ、まるで神聖な雰囲気を与える。だが、今起こっている状況はそれとは真逆のものだった。
「な、なんでだよ……俺たち今まで頑張ってきてたじゃんか!!」
そう叫ぶのは黒魔術師のサーディー。彼は黒いローブを身に纏い、左手には黒を基調とした杖が握られていた。
そのサーディーの目の前にはだかるのはこのパーティーのリーダーであるジュディ。その後ろには今まで共に活動してきたメンバーの姿がある。
「そういうことじゃない……あのな、黒魔術師がいるとパーティーの評判が下がるんだよ!」
「……う、嘘だろ…………」
この世界にはパーティーごとのランキングが存在する。それはクエストの成功率や国民からの人気などで高下し、そのパーティーの質が分かるものとなっていた。
サーディーのパーティーは成功率自体は悪くないものの、国民からの人気……好感度が恐ろしいほど低かったのだ。
なぜなら、パーティーに黒魔術師がいるから。
死や呪いを扱う黒魔術は、人々から避けられ嫌われていた。そのため、サーディーをパーティーから追い出そうとしているのだ。
「だ、だからって仲間を切り捨てるのか……?」
「…………当たり前だろ……」
「はっ?」
「サーディー……お前はもう少し自分の状況を理解してくれよ」
ジュディはそこまで言うと他のメンバーと目配せをする。まさにそれが合図だった。ジュディはサーディーに背中を向けるように踵を返すと、ゆっくりと歩き出す。
「ま、待てよ……!」
それを流すまいと後ろから黒色のローブが後を追う。サーディー自身もあのような説明では理解できず、とてもじゃないが腑に落ちない。
もう一度話そう、そう思った瞬間だった。
「……やれ」
「わかった……『バインド』」
刹那、サーディーの身体に縄が巻きつき身動きが取れなくなる。それでも、身体は前に突き進もうとするわけで……
「ちょっ……がはっ……」
支えるものも無く派手にすっ転ぶ。縄で拘束されているため立ち上がることもできず、サーディーは地面に這いつくばう。
「まっ、待ってくれ!」
視界の先には森の暗闇へと消えていくパーティーメンバーたち。嬉しいときは喜び合い、悲しいときには励まし合った仲間。それは今この瞬間崩れ去ったのだ。
「まってくれぇぇぇ…………!」
森には野鳥の鳴き声とともに、ある情けない男の声が響き渡っていた。
#####
気がつけば外は豪雨となっていた。黒く厚い雲が空を覆い、白い雷が上から下へと落ちる。暗闇の中、目から得られる情報はそれくらいだった。
「……さ、さむい……」
サーディーは1人、木の下でそう呟く。身体には縄が巻きついたまま、移動したのも芋虫のように身体を地面に擦り付けながらだった。
雨水がサーディーに降り注ぎ、ローブやズボンを濡らしていく。そのため肌に突き刺すように感じる寒気は、もはや濡れた衣類では防ぎきれないものとなっていた。
(くっ……だ、誰か……)
通る人は滅多にいないこの森。この縄を解いて自由を得ることはできるのか。もしかしたらこのまま見つけられることも無く、無様に死んでしまうかもしれない……
(いや、今更そう思ってもか……)
そうだ。もう自身はこの世で必要とされない身だったのだ。そう考えると自ずと気持ちが楽になってくる。そこで、サーディーはある決意を固める。
(もう……死のう…………)
目の前にあった自分の杖を必死で喰らいつく。寒くて感覚が麻痺しているが、多少の感覚から杖を噛んでいることを確認する。ここからは地味な作業。ただ杖の先を自分の方向へと向けるために、噛んでは話してを繰り返す。
(やっときた……)
5分間の格闘の末、ようやく自分の目と鼻の先に杖の先が向けられる。サーディーはここで深呼吸をした。これは恐怖や緊張のためではない。ただ……
人生最後の詠唱を行うためだ。
「この世に存在すべし、全ての闇に告ぐ……いざ汝のためにその力を与えたまらん…………」
自分でも驚くほどにその詠唱はスラスラと口から吐き出されていく。そして杖の先にはどす黒く、禍々しいオーラを纏った黒球が浮かび始める。
「その闇の深さを発揮し、全てを堕とせ……」
そこまで言うとサーディーはゆっくりと目を閉じる。
(さらば……美しき世界…………)
「『デス・スパイナ————」
「プルルンッ!」
「!?」
雨音を掻い潜って自身の耳に届いた軽快な音に、サーディーは思わず詠唱を止めてしまう。否、軽快とは違う何かが弾んだような音……
「な、なんだ!?」
身体を捻り、自身の背後へと視線を向けると……
「なっ……!!」
そこには青色のスライムがその身を震わせていた。身体を通しても奥の景色が見える透明度、雨水を跳ね返す弾力感。
それはどこにでもいるスライムの姿だった。
「なんでここに……あっ……」
サーディーがスライムが現れた理由を考えていたとき、彼はあることに気づいた。スライムの近くにある葉や石が溶けているのだ。
「これを使えば……なんとかなるか?」
サーディーは自分の両手首をスライムに限界まで近づける。身体中の骨が軋み、ギリギリと皮膚と肉を傷つける。なぜそこまでして無茶な行動を取ったのか……
それは————
「……んっ……よ、よっしゃ、切れた!」
ブチリという音が鳴ってサーディーの身体に巻き付いていた縄が解かれる。身体の自由を取り戻したサーディーはブルブルと身体を震わせた。
(スライムの酸性で縄を溶かす……パッと出の考えだったけど上手くいったな……)
自分の考えが成功し、その達成感に余韻に浸っていると、サーディーは足元にいるスライムへと目を向けた。可愛らしく身体を揺らすスライム……この森にはこの一体しかいないというわけではないのだろう。
森にはスライムの他に、ゴブリン、ゴーレム、オーク……推定でそれぞれ100体はゆうに超えているだろう。
(……ははっ、やってやろうじゃねぇか)
このときサーディーは人生で初めて、自身の魔法を悪用しようと考えてしまった。自身の魔法……黒魔法の真髄を……
だが、その顔は不敵な笑みで満ちていた……
#####
「おしっ……いい天気だ……」
獣の皮で作られた簡易テントの中から、ジュディが這い出てくる。さらに、ジュディの声を合図に他のパーティーメンバーも各々のテントから出てきた。
「よし、じゃあ……朝食の準備をしよう。」
「「「おっけー!」」」
一夜が明け、今では月光ではなく朝日が木々の間を通り抜けてくる。草花は揺れて、まるで新たな門出を祝っているかのようだった。
(あいつ……今頃はもう死んでるだろ)
そんなことを考えながらも、ジュディは料理を作っていく。グツグツ煮えきった鍋から香ばしい匂いが漂い、ジュディの腹に空腹感を促す。
「ジュディ、スープできたよー!」
「お、おう……サンキュー!」
「……あっ、けど私ほかのこともやらないといけないから、火見といて」
「……わかった!」
食器や水などの用意が終わって暇をしていたため、ジュディは首を縦に振る。ゆっくりと腰を上げた彼は鍋の隣へと座り込む。
「……うん、いい匂いだ」
ジュディは鍋の中を覗き込むと、手を仰ぎながら香りを嗅いだ。そんな彼は最初は静かに火を見ていることができたが、徐々に身体が動きを求めてくるようになる。そう、ただ火を見張っているだけという簡単な仕事にジュディは暇を持て余していのだ。
(……ちょっとテントから剣を取ってこよう)
剣の手入れをしながら火を見ようと考えたジュディ。腰をさすりながらあくびをすると、両手を頭の後ろに回しながら歩き出す。
(まぁ、ちょっとだけなら大丈夫だろ)
彼はそう考える。
だが、まだ鍋の火は消えていない……
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朝食の準備が一通り終わり、パーティーメンバー全員が簡易的な机を囲む。その上には少し焦げがあるパン、肉汁が溢れる焼肉、そして輝くような色をしたスープ。それらを見渡した一同に我慢という言葉は全く存在しなかった。
「「「「いただきます!」」」」
それを合図に食べ物に喰らいつくメンバー。会話を交わしては食べる。その繰り返し……
気がつけば机の上の料理は全て食べ尽くしていた。
「……よし、片付けして出発しよう」
ジュディがみんなの顔を見ながらそう告げる。みんなもその考えに賛成して立ち上がる。
だが、そのとき異変が起こる。
「あ、あれ?」
突然、立とうとしていたメンバーの1人が倒れ込む。それを境目にして他のメンバーも地面に倒れ込んだ。それはリーダーのジュディも避けられない。
(な、なんだ……何が起こった!?)
立ちあがろうとしても手足の感覚がないため失敗し、腹部からも謎の痛みが湧き出てくる。みんなの顔を見てみると、顔色が蒼白で悪く、身体が子鹿のように震えていた。
(ど、毒か!!)
ジュディは今まで旅をしてきた経験からそう推定する。だが、その根拠はゼロに等しい。なぜなら、先ほどの料理には毒物が入っていないから。
(けど、この状態……毒じゃないと説明がつかない……!)
ここから導き出されたのは……
『まさか……誰かが料理の中に————』
「……正解だよ」
ふいに後ろから声が響く。その声は低く鈍い……それでもどこかで聞いたことがあるような声だった。
「ま……ま、まさか……!?」
「あぁ……そのまさかだよ……」
ここまできたら背後を取られていても誰だか分かる。そう奴は……否、彼は……
「サーディーッ!!」
まさしく、ジュディの後ろには黒いローブに身を包んだサーディーが立っていた。サーディーは目の前でうずくまっている男を見下ろすと、今度は周りへと視線を向ける。
「……ははっ、ひっでぇありさまだな」
元は仲間として背中を預け合った仲間が、今は自分のせいで地面に倒れている。だが、そんな状況でも不思議と心は落ち着いていた。
「お、お前……サーディー、料理に何入れた!?」
「ん……? あぁ、スライムをまるまる一体鍋に入れたんだ」
「……はっ?」
「森には色々とキノコがあるからねぇ……そいつをスライムに食わせたんだよ」
確かにスライムという生物は取り込んだものの性質を体内に残す。そのため鍋なんかに入れたら、スライムの中にあったキノコの毒素が溢れ出てくることは目に見える。
辻褄は合う。
だが、それでも納得できないことが一つあった。
「い、いつ入れやがった……」
「えっとね……ジュディがなんかテントに戻ったときだったよ」
ジュディが訳がわからず考えていると、ふと自分の剣が視界に入る。それがトリガーとなって、そのときの記憶が溢れ出てきた。
「あっ……う、嘘だ……」
「嘘じゃねぇよ、実際に起こったんだから」
ジュディは瞳に涙を浮かべる。もし自分がテントに戻らなかったら、こんな悲劇は起こらなかっただろう。
ただ、申し訳ない。それがジュディの脳内を駆け巡った。
「な、何が目的なんだ……お前はッ!?」
無力ながらも今自分にできる最大限の力でサーディーの足首を掴む。だが、毒で弱りきった腕では止めるどころか、時間稼ぎにもならない。
「……よっと!」
「ガハッ!」
刹那、サーディーの鋭い蹴りがジュディの腹部に当たる。元々痛かった腹部がそのせいでさらに痛みを増す。
「無駄なことすんなよ……」
サーディーはそう言うと、ジュディへと唾を吐き捨てる。普段なら避けることができるが、今ではただそれを受けるだけ……まるで人形のようになってしまった。
「さてと、殺すか……」
もう俺を捨てたパーティーに用はない。そう言い切るかのようにサーディーは森へ向けて手をかざす。
「お、お前……な、何を……」
「……何をって言われても…………」
サーディーは地面で這いつくばうジュディを一瞥すると、その質問に対しての答えを発した。
「お前らが、俺のこと捨てたんだろ……もう、あとは分かるよな?」
「…………」
ジュディが後悔で黙り込んでいると、森から不気味な叫び声が聞こえた。気になった彼は首を捻り、その方向へと目を向ける。すると、そこには……
「なっ……!」
「お前らみたいなクソ野郎どもに、冥土の土産に最高の景色を見せてやる」
視界に埋め尽くされる、スライム、ゴブリン、ゴーレム、オーク……簡単に数えただけでも、ゆうに300は超えているだろう。
「お、お前……!?」
「気づいたか……これがお前らが見限った黒魔法の真骨頂……『モンスターテイム』だ」
『モンスターテイム』……その言葉を聞いてジュディの背筋に冷や汗が流れる。それは野生のモンスターを魔法で支配して配下にするというもの。たったそれだけだが、国から厳重に使用を禁止されている。
「ば、バカやろう! お、お前死にたいのか!?」
「はっ……?」
「『モンスターテイム』を使ったものは即刻死刑になるんだぞ!」
必死な顔をこちらに向けるジュディ。だが、今のサーディーに聞く耳というものはない。
「はぁ……今の状況わかってる?」
そこまで言うと、サーディーの心の内には呆れという感情が湧き出る。ただ、それだけ……それだけでこのパーティーは壊滅する末路を追う。
「もう、お前らも限界だろう……こいつら食っていいぞ」
その合図にモンスターたちのリミッターが外れる。鋭い歯を輝かせ、ジュディを含むパーティーメンバー全員へと飛び込んでいく。
「や、やめろ……やめろぉぉぉ!!」
サーディーが最後の力を振り絞って声を上げる。だが、その声は誰にも届くことはない。その代わりに鳴り響いた音は、肉が潰され骨が砕ける音だった。
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暖かな風が頬に触れる。地面には生ぬるく、赤く染まった液体。それらを見たサーディーは歩み始める。
「さぁ、次はこの国を堕とそうか」
ご拝読ありがとうございます。
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なお、ウケが良かったら続きを短編で書くか、長編に切り替えて執筆したいと思います。




