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ヒロインだったので、攻略対象を全員アルディア様に取られました  作者: 夜凪 蒼


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9/10

第9話「アルディア様に全部話した」

嘘をつき続けるのが、しんどくなってきた。


 この世界が特別な場所だということ。前世の記憶があること。ゲームのことを知っていること。


 セバスチャンには少しだけ話した。でも全部は言えなかった。


 アルヴィン王子には話せない。クロードには話せない。


 でも、アルディア様になら話せるかもしれないと思ったのは、なぜだろう。


 「アルディア様、少し時間をもらえますか」


 放課後、二人きりで中庭のベンチに座った。


 「改まって、どうしましたか」


 「変なことを話します。信じなくていいです。でも聞いてほしくて」


 アルディア様が、静かに頷いた。


 「聞きます」


 「私……この世界に来る前の記憶があります。別の場所で生きていた記憶が」


 アルディア様が目を細めた。


 「続けて」


 「その場所では、この世界は物語の中にありました。乙女ゲームという、恋愛のゲームで。私はそれを知っていて、この世界に来ました」


 沈黙。


 「ゲームの中では、私がヒロインで、アルヴィン王子とクロード様とセバスチャン様が攻略対象でした。私が三人と恋愛するお話でした」


 「……なるほど」


 「アルディア様は、そのゲームでは悪役令嬢でした。私をいじめて、最後に断罪されるキャラクターで」


 「そうですか」


 アルディア様の顔は変わらなかった。驚いていないのか、驚きを出さないのか。


 「信じますか」


 「信じます」


 「え、即座に?」


 「あなたが嘘をつくような人じゃないのは分かっています。それに」アルディア様が少し笑った。「私にも、似たような事情があるので」


 「え」


 「私も、前世の記憶があります。この世界とは違う場所の」


 「……え?」


 「ゲームの存在も知っています。私がやっていたゲームなので」


 リリアは固まった。


 「つまり」


 「つまり、私たち、同じ側から来ているのかもしれません」


 「……うろ覚えでしたよね」


 「ええ、酷くうろ覚えで。あなたのことも、花っぽい名前のヒロインがいたとしか覚えていなかった」


 「リリア・ベルです」


 「花の名前でしたね、やっぱり」


 二人で顔を見合わせて、それから同時に笑った。


 こんなに笑ったのは、この世界に来て初めてかもしれなかった。


 「じゃあ」リリアは言った。「アルディア様は、クロード様のことも、ゲームで知っていたんですね」


 「知っていました。でも、実際に会ったら全然ゲームと違って」


 「違いますよね!」


 「全然違う。ゲームより、ずっと」


 アルディア様が少し照れたように言葉を止めた。


 「ずっと?」


 「……ずっと、いい人で」


 (自覚、あったんだ)


 「アルディア様」


 「何ですか」


 「好きなんですよね、クロード様のこと」


 アルディア様がしばらく黙った。


 それから、静かに答えた。


 「……多分、そうです」


 初めて認めた。


 リリアは、胸の中が温かくなった。


 「伝えてください」


 「怖い」


 「私が応援します」


 「なぜそこまで」


 「友達だから」


 アルディア様が、また笑った。


 今度は、とても柔らかい笑顔だった。




    ◇


 ──リリア・ベルの日記より。


 『アルディア様も転生者だった。しかもうろ覚えで転生していた。全部話したら全部分かり合えた。この人と友達になれてよかった。今日が、この世界で一番いい日かもしれない』




次話:「クロードが動いた」

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