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ヒロインだったので、攻略対象を全員アルディア様に取られました  作者: 夜凪 蒼


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7/8

第7話「ヒロインの私が、誰かを応援している」

アルディア様が悩んでいるのに気づいたのは、中庭でばったり会ったときだった。


 ベンチに座って、空を見上げていた。いつもの完璧な表情ではなく、少しだけ遠い目をしていた。


 「アルディア様、大丈夫ですか」


 「……リリア。ええ、大丈夫よ」


 「大丈夫じゃなさそうです」


 アルディア様が少し笑った。


 「あなたは正直ですね」


 「昔から、顔に出やすいと言われます」


 「私は逆。出にくいと言われる」


 「出てますよ、今」


 「え」


 「目が、少し疲れています」


 アルディア様が黙った。


 私は隣に座った。


 「話せないですか」


 「……少し、複雑で」


 「聞くだけなら、できます」


 しばらく沈黙が続いた。


 「クロードのことなの」


 「クロード様の?」


 「最近、なんか……近いのよ。いつも以上に。それが、なんというか」


 「嬉しいですか」


 「……分からない。嬉しい、のかな。でも怖くもある」


 「怖い?」


 「近くにいてもらうのに慣れたら、いなくなったとき辛いから」


 (この人、ずっとそうやって一人で抱えてきたんだ)


 「アルディア様」


 「何?」


 「クロード様は、どこにも行かないと思います」


 「根拠は」


 「あの人の目が、ずっとアルディア様を追いかけているから」


 アルディア様が、少し頬を染めた。


 「……それは、幼なじみとしての」


 「違うと思います」


 「リリア、あなた、はっきり言うのね」


 「ごめんなさい、出すぎたことを」


 「謝らなくていい」アルディア様が少し笑った。「……あなたに言われると、信じたくなる」


 「信じてください」


 「なぜそんなに」


 「アルディア様に、幸せになってほしいから」


 アルディア様が目を丸くした。


 「……なぜ」


 「友達だから」


 短く答えたら、アルディア様がしばらく黙った。


 それから、静かに言った。


 「ありがとう、リリア」


 アルディア様の声が、いつもより柔らかかった。




 その夜、布団の中で考えた。


 私はヒロインだ。攻略対象との恋愛がメインストーリーのはずだ。


 でも今日一番、心が動いたのは、アルディア様が「ありがとう」と言ってくれた瞬間だった。


 (私、アルディア様のことが好きなのかもしれない)


 恋愛的な意味ではなく。でも、この人のそばにいたいと思う。この人が笑っていてほしいと思う。


 (友達って、こういうことかな)


 前世でも今世でも、こんなふうに思える友達はいなかった。


 (これも、この世界に転生した意味かもしれない)


 セバスチャン様との恋愛も大事だ。


 でも今夜は、アルディア様とクロード様がうまくいきますようにと、星に願った。


 ヒロインが攻略対象じゃなく悪役令嬢の恋を願うのは、ゲームの設定から外れているかもしれない。


 でも、構わない。




    ◇


 ──リリア・ベルの日記より。


 『アルディア様と話した。この人のことが好きだ。友達として。でも友達という言葉だけじゃ足りない気もする。なんて言えばいいか分からないけど、大事な人だ』




次話:「セバスチャンの秘密」

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