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ヒロインだったので、攻略対象を全員アルディア様に取られました  作者: 夜凪 蒼


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4/8

第4話「第三の攻略対象が現れた」

第三の攻略対象のことを、少し説明する。


 ゲームの攻略対象は三人だった。王子・幼なじみ・そして神官見習いのセバスチャン・ノア。


 セバスチャンはミステリアス系だった。銀の髪、静かな目、礼拝堂でよく一人でいる。近寄りがたいけれど、心を開くと誰より温かい。ゲームの中では、一番攻略が難しかった代わりに、エンディングが一番感動的だった。


 私の、一番好きな攻略対象だ。


 (だから少し、期待していた)


 王子もクロードもアルディア様一色だけど、セバスチャンだけは違うかもしれない。彼は孤独を好む。アルディア様のような「みんなに注目される」タイプとは相性が合わないはずだ。


 そう思っていた。




 十二日目、礼拝堂の前でセバスチャンに会った。


 「……君が、リリア・ベルか」


 静かな声だった。ゲームと同じ、落ち着いた低い声。


 「はい、そうです。セバスチャン・ノア様ですよね」


 「知っていたのか」


 「お噂は聞いていました」


 セバスチャンが少し目を細めた。


 「君は、変わっているな」


 「え?」


 「俺を見て、怖がらない」


 (ゲームでは近寄りがたい雰囲気があるから、みんな避けるんだった)


 「怖くないです」


 「なぜ」


 「怖そうに見えますが、目が優しいので」


 セバスチャンが少し黙った。


 「……珍しいことを言う」


 (好感度、上がった気がする)


 「一つ聞いていいか」


 「どうぞ」


 「アルディア・フォン・クレシェントと、仲がいいのか」


 (また出てきた)


 「友人です」


 「そうか」セバスチャンが少し考えるように言った。「あの人は、変わっている」


 「変わっていますか」


 「ああ。あの立場で、あの顔で、あの頭で……なのに、どこか人間らしい。気になる」


 (気になる)


 (セバスチャンまでアルディア様が気になってる)


 「……セバスチャン様」


 「何だ」


 「私のことは気になりませんか」


 直球で聞いた。自分でも驚いた。


 セバスチャンが、初めてこちらをちゃんと見た。


 「……なぜそれを聞く」


 「なんとなく」


 セバスチャンはしばらく黙って、それから静かに言った。


 「気になる、かもしれない」


 (来た!!!)


 「なぜ」


 「アルディアに臆せず話しかけて、クロードに振り回されても笑っていて……君は、不思議な人だ」


 (観察されていた)


 「観察していたんですか」


 「少し」


 「怖いです」


 「すまない」


 謝った。ゲームでは謝るキャラじゃなかったのに。設定と少し違う。でも、嫌いじゃない。


 「また話せますか」


 セバスチャンが少し考えてから、頷いた。


 「……ああ」


 (攻略対象を一人、確保した)


 礼拝堂から出た後、私は小さくガッツポーズをした。


 誰にも見られていないことを確認してから。




    ◇


 ──リリア・ベルの日記より。


 『セバスチャン様と話した。私のことを「気になる」と言ってくれた。やっと攻略対象らしい攻略対象が現れた。でもその理由が「アルディア様と仲がいいから」「アルディア様に怯まないから」……結局アルディア様経由だった』




次話:「アルディア様は自覚がない」

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