第4話「第三の攻略対象が現れた」
第三の攻略対象のことを、少し説明する。
ゲームの攻略対象は三人だった。王子・幼なじみ・そして神官見習いのセバスチャン・ノア。
セバスチャンはミステリアス系だった。銀の髪、静かな目、礼拝堂でよく一人でいる。近寄りがたいけれど、心を開くと誰より温かい。ゲームの中では、一番攻略が難しかった代わりに、エンディングが一番感動的だった。
私の、一番好きな攻略対象だ。
(だから少し、期待していた)
王子もクロードもアルディア様一色だけど、セバスチャンだけは違うかもしれない。彼は孤独を好む。アルディア様のような「みんなに注目される」タイプとは相性が合わないはずだ。
そう思っていた。
十二日目、礼拝堂の前でセバスチャンに会った。
「……君が、リリア・ベルか」
静かな声だった。ゲームと同じ、落ち着いた低い声。
「はい、そうです。セバスチャン・ノア様ですよね」
「知っていたのか」
「お噂は聞いていました」
セバスチャンが少し目を細めた。
「君は、変わっているな」
「え?」
「俺を見て、怖がらない」
(ゲームでは近寄りがたい雰囲気があるから、みんな避けるんだった)
「怖くないです」
「なぜ」
「怖そうに見えますが、目が優しいので」
セバスチャンが少し黙った。
「……珍しいことを言う」
(好感度、上がった気がする)
「一つ聞いていいか」
「どうぞ」
「アルディア・フォン・クレシェントと、仲がいいのか」
(また出てきた)
「友人です」
「そうか」セバスチャンが少し考えるように言った。「あの人は、変わっている」
「変わっていますか」
「ああ。あの立場で、あの顔で、あの頭で……なのに、どこか人間らしい。気になる」
(気になる)
(セバスチャンまでアルディア様が気になってる)
「……セバスチャン様」
「何だ」
「私のことは気になりませんか」
直球で聞いた。自分でも驚いた。
セバスチャンが、初めてこちらをちゃんと見た。
「……なぜそれを聞く」
「なんとなく」
セバスチャンはしばらく黙って、それから静かに言った。
「気になる、かもしれない」
(来た!!!)
「なぜ」
「アルディアに臆せず話しかけて、クロードに振り回されても笑っていて……君は、不思議な人だ」
(観察されていた)
「観察していたんですか」
「少し」
「怖いです」
「すまない」
謝った。ゲームでは謝るキャラじゃなかったのに。設定と少し違う。でも、嫌いじゃない。
「また話せますか」
セバスチャンが少し考えてから、頷いた。
「……ああ」
(攻略対象を一人、確保した)
礼拝堂から出た後、私は小さくガッツポーズをした。
誰にも見られていないことを確認してから。
◇
──リリア・ベルの日記より。
『セバスチャン様と話した。私のことを「気になる」と言ってくれた。やっと攻略対象らしい攻略対象が現れた。でもその理由が「アルディア様と仲がいいから」「アルディア様に怯まないから」……結局アルディア様経由だった』
次話:「アルディア様は自覚がない」




