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ヒロインだったので、攻略対象を全員アルディア様に取られました  作者: 夜凪 蒼


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3/8

第3話「攻略対象その二も、アルディア様一筋だった」

クロードへのアプローチを試みた。


 ゲームの攻略知識では、クロードは「困っている人を見ると放っておけない」性格だ。さりげなく助けてもらう状況を作れば、好感度が上がるはずだった。


 重い荷物を持って廊下を歩いた。


 クロードが来た。


 (来た、このタイミングで助けてもらう)


 「あ、リリア。荷物多いな、持つよ」


 (やった! イベント発生!)


 「ありがとうございます、クロード様」


 「どこ行くんだ?」


 「図書室に」


 「じゃあ途中まで一緒に」


 (好感度上がってる! これは!)


 「──ちょっと待って」


 クロードが急に立ち止まった。


 「アルディア、一人で本抱えてるぞ。あいつにも声かけてくる」


 私の荷物を持ったまま、クロードが走っていった。


 (持ってった)


 (私の荷物ごと持ってった)


 遠くでクロードがアルディア様に話しかけているのが見えた。アルディア様が何か言い返している。クロードが笑っている。


 私は荷物なしで立っていた。




 昼食の時間、クロードの隣に座ることができた。


 「クロード様って、昔からアルディア様と一緒にいるんですか」


 「ああ。物心ついた頃から隣にいた」


 「どんな子供でしたか」


 クロードが少し遠い目をした。


 「よく転んでた。でも絶対泣かなかった。強がりで、一人で全部やろうとして」


 「今も、そういうとこありますよね」


 「あるな」クロードが笑った。「だから隣にいたくなる」


 「ずっと好きだったんですね」


 「……お前、また鋭いこと言う」


 「すみません」


 「謝らなくていい」クロードが少し真剣な顔になった。「ただ、俺の気持ちはまだあいつに伝えていない。だからそういう話は、まだ」


 「分かりました。ごめんなさい」


 「いいって。リリアは話しやすいな」


 (話しやすい)


 (攻略対象に「話しやすい」と言われるのは、フレンドリーエンド一直線の台詞だ)


 ゲームだったら、この後「でも君のことが気になって」と続くはずだった。


 「でも」とクロードが言った。


 (来た!)


 「アルディアのことで相談があったら、俺に言ってくれ。あいつ、友達少ないから」


 (アルディア様の相談窓口にされた)


 「……分かりました」


 「頼むな、リリア」


 クロードが立ち上がって、アルディア様の方へ歩いていった。


 私は一人で昼食を食べながら、静かに思った。


 (私、なんかアルディア様の応援団長になってきてる)




 その日の放課後、アルディア様が話しかけてきた。


 「リリア様、最近よくクロードと話しているようですね」


 「は、はい。仲良くしていただいて」


 「クロードのこと、どう思いますか」


 (どう思うか)


 「……いい人だなと思います」


 アルディア様が少し目を細めた。


 「そうですね。あの人は、本当にいい人です」


 その言い方が、なんだかとても柔らかかった。


 (この人、クロード様のこと、ちゃんと好きなんだ)


 自覚があるかどうかは分からない。でも声のトーンが変わった。


 (両想いじゃないか)


 (両想いなのに、なんでくっついてないんですか)


 「アルディア様」


 「何ですか」


 「好きな人、いますか」


 アルディア様が一瞬だけ固まった。


 「……突然ですね」


 「気になって」


 「どうして」


 「なんとなく」


 アルディア様はしばらく黙ってから、静かに言った。


 「それを聞くのは、まだ早い気がします」


 否定しなかった。


 (やっぱり両想いだ)


 (なんで私がこんなにやきもきしてるんだろう)




    ◇


 ──リリア・ベルの日記より。


 『クロード様観察記録。アルディア様への視線:終日。私への好感度:友達枠で安定。アルディア様も多分クロード様のことが好き。なんで私がこんなに二人の仲を心配してるんだ。私はヒロインのはずなのに』




次話:「第三の攻略対象が現れた」

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