第3話「攻略対象その二も、アルディア様一筋だった」
クロードへのアプローチを試みた。
ゲームの攻略知識では、クロードは「困っている人を見ると放っておけない」性格だ。さりげなく助けてもらう状況を作れば、好感度が上がるはずだった。
重い荷物を持って廊下を歩いた。
クロードが来た。
(来た、このタイミングで助けてもらう)
「あ、リリア。荷物多いな、持つよ」
(やった! イベント発生!)
「ありがとうございます、クロード様」
「どこ行くんだ?」
「図書室に」
「じゃあ途中まで一緒に」
(好感度上がってる! これは!)
「──ちょっと待って」
クロードが急に立ち止まった。
「アルディア、一人で本抱えてるぞ。あいつにも声かけてくる」
私の荷物を持ったまま、クロードが走っていった。
(持ってった)
(私の荷物ごと持ってった)
遠くでクロードがアルディア様に話しかけているのが見えた。アルディア様が何か言い返している。クロードが笑っている。
私は荷物なしで立っていた。
昼食の時間、クロードの隣に座ることができた。
「クロード様って、昔からアルディア様と一緒にいるんですか」
「ああ。物心ついた頃から隣にいた」
「どんな子供でしたか」
クロードが少し遠い目をした。
「よく転んでた。でも絶対泣かなかった。強がりで、一人で全部やろうとして」
「今も、そういうとこありますよね」
「あるな」クロードが笑った。「だから隣にいたくなる」
「ずっと好きだったんですね」
「……お前、また鋭いこと言う」
「すみません」
「謝らなくていい」クロードが少し真剣な顔になった。「ただ、俺の気持ちはまだあいつに伝えていない。だからそういう話は、まだ」
「分かりました。ごめんなさい」
「いいって。リリアは話しやすいな」
(話しやすい)
(攻略対象に「話しやすい」と言われるのは、フレンドリーエンド一直線の台詞だ)
ゲームだったら、この後「でも君のことが気になって」と続くはずだった。
「でも」とクロードが言った。
(来た!)
「アルディアのことで相談があったら、俺に言ってくれ。あいつ、友達少ないから」
(アルディア様の相談窓口にされた)
「……分かりました」
「頼むな、リリア」
クロードが立ち上がって、アルディア様の方へ歩いていった。
私は一人で昼食を食べながら、静かに思った。
(私、なんかアルディア様の応援団長になってきてる)
その日の放課後、アルディア様が話しかけてきた。
「リリア様、最近よくクロードと話しているようですね」
「は、はい。仲良くしていただいて」
「クロードのこと、どう思いますか」
(どう思うか)
「……いい人だなと思います」
アルディア様が少し目を細めた。
「そうですね。あの人は、本当にいい人です」
その言い方が、なんだかとても柔らかかった。
(この人、クロード様のこと、ちゃんと好きなんだ)
自覚があるかどうかは分からない。でも声のトーンが変わった。
(両想いじゃないか)
(両想いなのに、なんでくっついてないんですか)
「アルディア様」
「何ですか」
「好きな人、いますか」
アルディア様が一瞬だけ固まった。
「……突然ですね」
「気になって」
「どうして」
「なんとなく」
アルディア様はしばらく黙ってから、静かに言った。
「それを聞くのは、まだ早い気がします」
否定しなかった。
(やっぱり両想いだ)
(なんで私がこんなにやきもきしてるんだろう)
◇
──リリア・ベルの日記より。
『クロード様観察記録。アルディア様への視線:終日。私への好感度:友達枠で安定。アルディア様も多分クロード様のことが好き。なんで私がこんなに二人の仲を心配してるんだ。私はヒロインのはずなのに』
次話:「第三の攻略対象が現れた」




