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ヒロインだったので、攻略対象を全員アルディア様に取られました  作者: 夜凪 蒼


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2/6

第2話「攻略対象その一、完全にアルディア様を見ている」

観察を続けた。


 ヒロインとして、攻略対象の好感度を上げなければならない。そのためにはまず、現状把握が必要だ。前世のゲームプレイ経験が活きるときが来た。


 アルヴィン王子の行動パターンを三日間記録した。


 結果。


 午前:執務。ただし廊下でアルディア様とすれ違うと足を止める。

 昼:図書室。アルディア様がいると同じテーブルに座る。

 午後:また執務。アルディア様が書類を整理しているのをちらちら見る。

 夕方:帰り際にアルディア様に一言かけて帰る。


 (一日に何回アルディア様のことを見てるんですか)


 私との接触は、廊下で会ったとき「ベル嬢」と名前を呼んでくれた一回だけだ。


 正確に言うと、アルヴィン王子は私のことを「可もなく不可もない存在」として認識している気がする。悪意はない。ただ、興味がない。


 (ゲームではこの時点で好感度イベントが三回起きているはずなのに)




 作戦を立てた。


 ゲームの攻略知識を使う。アルヴィン王子は本が好きだ。図書室で本の話をすれば好感度が上がる。確かそういうイベントがあった。


 図書室に行った。


 アルヴィン王子がいた。そしてアルディア様もいた。


 二人は同じテーブルに向かい合って、それぞれの本を読んでいた。


 話しかけるタイミングが、ない。


 (なんでそんなに自然に一緒にいるんですか)


 仕方なく別のテーブルで本を読んだ。


 一時間後、アルヴィン王子がアルディア様に何か話しかけた。アルディア様が答えた。王子がわずかに笑った。


 (笑った。あの無表情の王子が笑った)


 私はそっと席を立った。


 今日は撤退だ。




 廊下でクロードに会った。


 「リリア、どうした、暗い顔して」


 「ちょっと考え事を」


 「何か困ってるか?」


 (困ってる。でも「攻略対象に興味を持ってもらえない」とは言えない)


 「図書室に行ったら、思ったより混んでて」


 「ああ、あそこ最近アルディアもよく来るからな」


 「アルディア様と、よく話すんですか」


 「ずっと幼なじみだから」


 「仲いいですね」


 「まあな」クロードが少し表情を和らげた。「昔から、あいつは一人で抱えすぎるから。隣にいてやりたくて」


 (隣にいてやりたくて)


 (これは、もう完全に)


 「クロード様、アルディア様のこと、好きなんですか」


 クロードが少し固まった。


 「……そういう話か」


 「違いますか」


 「難しい質問だな」クロードが頭をかいた。「お前、鋭いな」


 「否定しないんですね」


 「……するのも違う気がして」


 (やっぱりそうか)


 「応援します」


 「え」


 「アルディア様のこと。うまくいくといいですね」


 クロードが目を丸くした。


 「お前、いいやつだな」


 「ヒロインですから」


 「え?」


 「なんでもないです」


 とぼけて歩き出した。


 (ヒロインが攻略対象の恋を応援してどうするんだ)


 でも、嘘をついた気がしなかった。本当に、うまくいってほしいと思った。


 (私、何しに転生してきたんだろう)




    ◇


 ──リリア・ベルの日記より。


 『アルヴィン王子観察記録、三日目。王子の視線がアルディア様に向いている回数:本日14回。私に向いた回数:1回(名前を呼ばれた)。このゲーム、攻略難易度が高すぎる』




次話:「攻略対象その二も、アルディア様一筋だった」

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