第11話「セバスチャンが言葉にした」
クロードとアルディア様がうまくいった翌日、セバスチャンが礼拝堂の前で待っていた。
「少し、時間があるか」
「あります」
「話したいことがある」
二人でベンチに座った。いつもの場所。いつもの静かさ。
でも今日のセバスチャンは、少し違った。いつもより、緊張しているように見えた。
「昨日、クロードとアルディアのことを聞いた」
「知っていたんですか」
「廊下で見た。クロードの顔が赤かった」
「ばれてましたね」
「ああ」セバスチャンが少し間を置いた。「二人を見ていて、思ったことがある」
「何ですか」
「言葉にするのが遅いのが俺の悪いところだと、前に言った」
「言ってましたね」
「だから、今日言おうと思って」
セバスチャンがこちらをまっすぐ見た。
いつもの静かな目。でも今日は、その奥に何か確かなものがあった。
「俺は、君のことが好きだ」
静かな、でも迷いのない言葉だった。
「最初は気になる程度だった。でも話すたびに、隣にいるたびに、もっとそばにいたいと思うようになった」
「……セバスチャン様」
「返事はすぐでなくていい。ただ、言わないでいる方が嫌だった」
(言葉にするのが遅いと言っていた人が、ちゃんと言ってくれた)
胸の中が、じわじわと温かくなった。
「セバスチャン様」
「何だ」
「私も、セバスチャン様のことが好きです」
セバスチャンが少し目を丸くした。珍しい表情だった。
「即答だな」
「考えてたから」
「いつから」
「孤児院の子供たちに本を読んでいるのを見たときから、かもしれません」
「あれを見ていたのか」
「偶然です。でも、あのセバスチャン様が好きになりました。ゲームで想像していたよりずっと、温かい人で」
「……また、そのゲームの話か」
「すみません、つい」
「謝らなくていい」
セバスチャンが、ゆっくりと微笑んだ。
今まで見た中で、一番大きな笑顔だった。
「君といると、俺は自分が俺でいられる気がする」
「私も、そうです」
「そうか」
「そうです」
二人でしばらく、何も言わずに座っていた。
礼拝堂の鐘が鳴った。
「また、明日も」
セバスチャンが言った。
「また、明日も」
私が答えた。
(ヒロインとして、ちゃんと恋愛ができた)
でも、それ以上に。
(この世界に来て、本当によかった)
◇
──リリア・ベルの日記より。
『セバスチャン様が言葉にしてくれた。私も伝えた。うまくいった。アルディア様とクロード様もうまくいった。みんな、幸せになった。ヒロインとして、大事な仕事を果たせた気がする』
次話(最終話):「ヒロインで、よかった」




