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ヒロインだったので、攻略対象を全員アルディア様に取られました  作者: 夜凪 蒼


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10/11

第10話「クロードが動いた」

翌日、クロードが私を呼び止めた。


 「リリア、少し話せるか」


 「はい」


 「アルディアのこと、聞いてもいいか」


 (来た)


 「どんなことですか」


 「最近、あいつが……なんか、こっちを見る回数が増えた気がして」


 「増えてますよ、だいぶ前から」


 クロードが目を丸くした。


 「知ってたのか」


 「見ていれば分かります」


 「……俺、どうすればいい」


 珍しく、クロードが迷っている顔をしていた。いつも堂々としているのに、アルディア様のことになると途端に子供みたいになる。


 「どうしたいんですか、クロード様は」


 「そばにいたい」


 「それだけですか」


 「……もっと、ちゃんとそばにいたい」


 「伝えてください」


 「怖い」


 「アルディア様も同じこと言ってました」


 クロードが固まった。


 「……アルディアが?」


 「二人とも同じ場所で止まってます。どっちかが動かないと」


 「お前、アルディアとそんな話してたのか」


 「友達なので」


 クロードがしばらく黙った。


 「リリア、お前はいいやつだな」


 「それより、動いてください」


 「分かった」


 「いつ動きますか」


 「今日」


 「え、今日ですか」


 「迷ってたら一生言えない」


 (急に決断力が出てきた)


 「応援してます」


 「ああ」


 クロードが歩き出した。アルディア様がいる図書室の方向に。


 私はその背中を見送りながら、心の中で全力で応援した。


 一時間後、図書室から出てきたクロードを廊下で待っていた。


 クロードの顔を見た瞬間、分かった。


 耳まで赤かった。


 「クロード様」


 「……うるさい」


 「何も言ってないです」


 「顔に書いてある」


 「どうでしたか」


 クロードが天井を見上げた。


 「言った」


 「アルディア様は?」


 「……泣いた」


 「え」


 「怖いって言って、でも嬉しいって言って、泣いた」


 「それで?」


 「それで……まあ、その、なんだ」


 「うまくいったんですね」


 「うるさい」


 でも、口元が笑っていた。


 (よかった)


 胸の中が、ぱっと明るくなった。ヒロインとして攻略対象を落とした瞬間より、ずっと嬉しかった。


 「おめでとうございます、クロード様」


 「お前のおかげだ、リリア」


 「私は何もしてないです」


 「してる。背中を押してくれた」


 クロードが、真剣な顔でこちらを見た。


 「ありがとう」


 「どういたしまして」


 クロードが笑って、また図書室の方へ戻っていった。


 アルディア様のところへ。


 私は一人で廊下に残って、窓の外の青い空を見た。


 (ヒロインらしいことが、一個できた気がする)


 恋愛じゃないけど。でも、これで良かった。


    ◇


 ──リリア・ベルの日記より。


 『クロード様が動いた。アルディア様が泣いた。うまくいった。私は廊下で一人でいた。でも、全然寂しくなかった。なんでだろう。多分、幸せだったから』


次話:「セバスチャンが言葉にした」

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