8限目 体験授業
「それでは、始めていきましょう!プリント3枚目開いてくださーい」
「はっさん!この子持ってないんじゃないの?」
「はっさん?」
「あの人。早田昴っていうから、はっさんてみんな呼んでるんだ〜」
「へぇ」
はっさん。かなりおじさんだけど。髪の毛は真っ白で長髪。左右で違う形のメガネをかけてる。ちょっとっていうか、かなりの癖強だ。
「これはなんの授業なんすか?」
「今は数学!」
数学。私は算数で完全に時が止まってる。
「ん?なんこれ」
プリントには意味のわからない数列が並んでいた。
分数+分数?これは分からん。なに言ってんの。
「なにこれ暗号?」
「ちょっとまって!あんた分数分からんの!?そりゃあーそうなっちゃうわけだ!みんな見て!」
隣のきゅうてぃーが叫ぶと、ゾロゾロと周りに人が集まってきた。
「”分数について”おもろー!あんた最高じゃん!」
「うちら分数なら分かるから教えてやんよ!」
「なんでも聞き!」
わぁ。なに、この感覚。人生で味わったことないタイプの.....なんとか感。
「これは、どうやって足すの?」
「うわ!これうちもできねぇやーつだ」
「4分の3+5分の7?下が違うから足せないじゃん!はっさんどうやってやんのこれ!」
全員で一斉に教壇に立っている、“はっさん”を見た。
「そうか〜…そうか!まだ君たち通分をお習いではないのか」
「早く教えてよー!」
「よし分かった!みんな、ペンを置いて黒板を見ろ!絶対に下を向くのではないぞ!」
「おっす!」
びっくりした!いきなり大声出すんじゃねぇよ。
はっさんは青色のチョークを使って大きな文字で分数を書き始めた。
「きゅうてぃー?」
「ほいほーい?」
「あの人なんで青のチョークで書いてるの?」
するときゅうてぃーは自信満々に、こう答えた。
「青色で文字を書いたり、見たりすると、集中力が上がって効率よく勉強が出来るんだって〜。あたしもよく分かんないけど」
集中力…効率よく?
「なんかが分泌するとか、なんとか?はっさーん!」
「はいコチョさん!」
前に座ってた女が手を上げた。名前はコチョというらしい。
「なんではっさんっていつも青色で書くのー?」
「コチョ…..いい質問だっ!青、という色には私たちの五感の一つである“視覚”に大きな影響をもたらす。例えば、いくぞ」
はっさんは黒板の端に白色のチョークで文字を書いた。
「この問題、いま持ってるノートに書け!」
「おー!昨日習ったやつだ!」
「今からこのクラスを2つのチームにに別ける。半分からこちらのチームはこの問題を赤ペンで書け。もう半分のこちらのチームは青ペンで書け」
私ときゅうてぃーはちょうど半分で別れてしまった。私は青ペンチーム、きゅうてぃーは赤ペンチーム。
唯一名前を知ってる人と違うチームになってしまった。
問題は分数の割り算が10題。
「これを振り分けられたペンの色で解いて提出!」
「内容むっず!?何これ?」
「やり方は調べない!いまあなたたちが持ってる知識と集中力で解いてきなさぁい!」
「うっす!こればりむずくなーい?」
教室中が課題の話題でいっぱいになった。
でも、わざわざ2つのチームに分けてなんの意味があるの?はっさんは何をしようとしてるんだ?
「では、あなたたちに通分を教えます!」
でもこのクラス、居心地は悪くないかもしれない———




