5限目 決意
「ただいま」
あたりが暗くなったタイミングで家に帰った。その間はカフェで時間を潰したり、胡桃に会ったりした。
「はい、はい...わざわざご連絡ありがとうございます。はい、失礼します」
ババアが電話越しで誰かと話してる。多分、私のことだな。あの口調の時はいつもそう。
後ろをスッと通り自室に入ろうとした。
「黒波。ちょっと待ちなさい」
「はぁ。なに?」
「学校から連絡があったの。あなた、今日無断で欠席したの?」
「それがなに」
「お母さん、あれだけ無断欠席はダメって言ったのに、なんで」
目を痒そうに掻いていた。その格好すら鼻につく。
「知らんって。そんなのあっちの事情でしょ。こっちにも事情があんの。ババアは黙ってろよ」
「...あなたは、いつからそうなったの」
その言葉がいっっっっちばん嫌いなんだよ私。なぜそうなったの?いつからそうなったの?この一言だけで頭が痛くなる。
「うるせ。あんたには関係ないだろ」
ガチャン!
「はぁ...あぁもう!」
何でみんな私をそんな目で見るの。ババアも学校も。もうこれ以上何も言わないでよ。私だって分かってる。今この状況が良くないって。何かしら動かないとって。
真っ暗な部屋で一人で、また泣いた。
「はい?」
『もしもし黒波?今日来る?』
「あー今日はめんどくさいからいいや。みんなにも言っといて」
『えー!もう来るって言っちゃったよ』
「無理無理。今は立て込んでるからまたね」
『ちょっと!』
「じゃあ、胡桃はいまクラブを出て私のとこに来てくれるの?」
『は?何言ってんの』
「来れないならいいや。またね」
結局胡桃も同じなんだね。
最近はしばらくクラブに行ってない。行っても楽しいって思えなくなってきたから。家にいて、1人で過ごしてた方が楽。人と関わりたくないって、思うようになってきた。
「黒波?朝ごはん食べる?」
「いらない」
「もう学校行くの?」
「…..」
「今日はちゃんと出席してね」
「うっせ」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
朝ごはんを食べる気にもなれず、歯磨きだけして家を出た。なんか、いつもよりババアの反応が違った。普段は朝ごはんを無理でも食べさせるのに。まぁいっか。
今日は出席だけして早退してカフェに行って、いつものルートで。
「黒波〜!」
はぁ、この声は…..
「またあんた?」
「おっは〜!」
「またって失礼な言い方だな。うちら友達でしょ!」
琴子は肩を組んできた。
「鬱陶しいわ!朝からイラついてんの!」
「はいは〜いそうですか。今日塾来る?」
「行くわけないでしょバカが」
「一緒に勉強しようよー!勉強はやれば楽しいよ!」
私にはいまいち、勉強の楽しさが分からない。やり方も分からなければ、用意するものすら分からない。
「勉強って、バカみたい」
「勉強を舐めてもらっちゃ〜困りますな!もし勉強できたら、一気に世界広がるよ?」
「はいはい出たテンプレ。よく聞くよそのセリフ」
勉強=楽しい。この概念は誰が考えたんだってくらい意味不明。勉強なんてしてる時考えることは一つ。
何やってんだ自分。
学ぼうとしても覚えられないし、すぐ明日には忘れるしね。
覚えても忘れるもの覚えたところで何の意味もない。
「じゃあさ、勉強しなくていいよ」
「え?」
「椿塾はね、別に勉強するところじゃないの」
「じゃあ何するとこなの」
「ただの仲間集めだよ。やりたいことやって、孤独にならないようにする」
「.....」
琴子は笑顔で言った。
”あなたも、同じ思いでしょ?”って。
何か見透かされてるように見えた。心の内まで全て。この女は周りと何かが違う。
嫌というほどくっついてくるし、嫌というほど塾に誘ってくる。おはようと言われたら塾来る?って言う。
こんなに私に話しかけてくる人は初めて。みんな怯えて話しかけてくれない。話しかけても無視される。私は別にクラスメイトに嫌なことをしたわけじゃない。
「まぁ最終的に決めるのは黒波だからな〜。こっちからは言うことしか出来ないけど。じゃ、またね!」
行ってしまう。また、独りになる。
「琴子?」
「ん?」
「別に行きたくないけどさ、あんたのその変な集まり?行ってみてもいいかなーってなんつって」
「.....え、ほんと?」
「は?なに気持ち悪りぃ泣いてんの?」
「いやだって、絶対来ないと思ったんだもん」
「はぁ。あのね、わたしのこと、舐めてもらっちゃあ困ります」
「おっしゃ!もう決まりだね!じゃあ、今日は学校休んじゃお!」
「は?」
「ほらほら行くぞ!」
まぁ、1日欠席なったくらいで留年にはならないっか。




