13親子喧嘩
「黒波ー!ちょっと降りてきなさい!」
「はぁ」
部屋でぼーっとしていると、下の階から名前を呼ぶ声がした。
ババアの声だ。
めんどくせ。
「なにー!?」
「いいから降りてこい!」
今度はジジイの声がした。
一緒にいんのかよ…….
てかさっき言い合いしたばっかなのに。
私は起き上がって渡り廊下から返事をした。
「ちっ、なに?」
部屋から出るってのも嫌なのに、なんであいつらと話さなきゃいけねぇんだっつうの。
1階に降りると、ジジイとババアが食卓に座っていた。
「座れ」
「は?なんで」
「いいから座れ!」
ジジイは珍しく叫んだ。いつもは存在が空気のくせに。いきなり叫ぶから頭痛いわ。
「…..」
「黒波。学校を辞めなさい」
「は———?」
ジジイが言うことといえば、勉強しろだとか、ババアの言うこと聞けだとか。
でも今回は違った。
学校を、辞めろ?
何言ってんだこいつ。
「は?何言ってんの」
「いいから、学校を辞めなさい」
「だから何言ってんだよっ!!」
バン!!
机を叩いて立ち上がった。
「高校卒業までって約束だろ!?」
ジジイとは、高校卒業までは学費を払うと高1の時に言ってきた。担任ともそう話しているはずなのに。担任も卒業させてあげると言っていた。
「そもそも、将来も何も考えない奴は学校に行く権利などない!」
「ふざけんなよ…..」
私はストンと椅子に座った。
「学校もまともの行かずに、お金をドブに捨ててるようなもんだ」
ジジイは私のことを睨んできた。いきなり呼び出してなんなの。
「黒波は大学に行く予定はあるの?」
「ねぇよ」
「なのになんで”高校卒業”に執着するの?」
「…….」
高校を卒業しないと、私は”あそこ“に所属できなくなる。でもそんなこと絶対に家族なんかに言えない。
「何か理由でもあるのか?」
「てめぇらに関係ないだろっ!」
もう、こんなところいたくない。話したくもない。顔も見たくない。
「黒波!?どこ行くの!」
「待ちなさい!」
私は耐えきれずにそのままの服で外に出た。少し早歩きで家からだいぶ離れて行った。
私にはどうしても高校卒業という地位が必要。でないと本当にまずい。
「つかれた」
しばらく夜道を散歩した。たぶん、もう家からかなり離れた。
どうせジジイとババアは探しにこない。きっとせいせいしているに違いない。あの家は上の女がいるだけで十分。将来有望だし、有名大学だし、就職もいい感じっぽいし。
本当にムカつく。
なんで家族ってあんなにムカつくの?
もうどうでもいいや。
左を見ると、広い原っぱと、長い川が広がっていた。上には無数の星が広がっていた。
斜面になっている原っぱに寝転がり、星を眺めた。
「…….」
「黒波?」
「は?なんであんたがいんの?」
「黒波じゃーん!そっちこそなんでいんの?」
そこには、昼頃一緒に遊んだ、はながいた。そばには自転車が置いてあった。
「家この辺なん?」
「全然」
「うちはあのマンションで、最近気晴らしに夜に外出てんだー」
「…….」
「えちょっと待ってテンションひっく。なんかあったん?」
「喧嘩した」
「こっち?」
はなはそう言いながらグーパンチのジェスチャーをした。
「ちげぇよ」
「じゃあー家か」
「…….」
「うちも家族と喧嘩したことあるけど、んなものに良いことなんかねぇよ。うちは喧嘩して母親が出てってもう4、5年経つからさ」
「会ってないの」
「そう。もう家はぐっちゃぐちゃだよ。上に1人いるんだけどさ、そいつがまー優秀で。父親と2人暮らししてるしね。私はあのマンションで一人暮らし中」
「ふーん。なかなか壮絶」
「よく言われる。父親はこんな娘大嫌いだから家出ていった。そこから家族は完全に決別した。学費が払えなくなって、高校を辞めてからは体を売ったりして生計を立ててた。もうボロボロだよ」
「.....なんで、あの塾に入ったの」
「ある日、裸の私を盗撮しようとしてた人がいて。そいつに殴られてたら、たまたま通りかかった塾長に助けられた。そして塾で保護されることになって、もうそこからはずっと.....って感じかな。あんたなんかかわいい方だよ」
「その言い方ムカつく」
「もしら自分の体を傷つけたくなかったら、他人より少しでも優位に立ちな。もちろん知識量でね。将来の自分を救えるのは、環境でも先生でもない———
いまの自分だけ」
「.......」
「ほれ、さっさと帰りな。この辺りは輩がいて危ないよ〜。んじゃ、また明日!」
はなは自転車に乗って走り去って行った。




