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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第一章 不器用な義兄妹の日常

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第8話 「せんぱい、バレちゃうっスよ?」

 ここ最近はずっと残暑だ。

 もうすぐ十月になると言うのに平気で気温が三十度を超える日が続く。

 そんな夏が終わらない放課後の、風が何も通らない密室な体育倉庫の中で。


「…………」

「…………」


 ユニフォーム姿の小夏に、正面から抱きつかれていた。

 土と埃の臭いが充満していた体育倉庫に、制汗剤と小夏の甘い匂いが広がる。

 俺の背中に回した手は力強くも弱弱しくて、後輩と義妹を使い分ける、小夏そのものだと感じてしまった。


「こ、なつ……?」

「……駄目っスよ、せんぱい? このまま一緒に外に出たら、みんなから変に思われちゃうじゃないスか」

「じゃ、じゃあこれは、なんで……」

「……にひっ。どーせバレるなら、事実にしちゃいません?」

「っ!?」


 俺を抱きしめる小夏が見上げ、笑みを浮かべた。

 上目遣いから繰り出されたその蠱惑的な笑いは、昨日の夜の囁きよりも直接的に俺の胸を高鳴らせていく。

 もしかしたら心臓の音が、このドキドキが、伝わってしまっているかもしれない。

 だって俺の胸に押し当てられた小夏の胸が、つぶれて形が変わっているのが分かってしまうぐらいに密着しているから。


 ――ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。

 速く大きな、心臓の音。

 この胸の鼓動は、俺と小夏、どちらのものなのだろうか?


「……なーんて。そんな顔、しないでくださいっスよ」

「……え?」

「……流石の私も、せんぱいが本当に困る事はしないっス」


 俺の胸の中で、小夏が視線を逸らした。

 いつも、そして今も俺をからかっているが、小夏の素は《《良い子》》なのだ。

 だから小夏が言う通り、俺が本気で嫌がったり、困る事は一度もされた事が無い。


「…………今、困ってるんだが」


 と、言いつつそれは間違いでもあった。

 何故なら毎回俺の想定する悪戯やハードルのラインを軽く超えてくるからである。

 

 困る前に懐柔され分からされている。

 この表現が、一番正しかった。


「でもせんぱい、言ったじゃないっスか?」

「……何をだ?」

「私のおっぱい、世界で一番好きって」

「そこまでは言ってないぞ!?」

「あの流れで言ってないは嘘っス」

「っな!?」


 ――ぎゅむ。

 俺の胸に押し当たる、小夏の胸の形がまた変わった。

 小夏は腕だけじゃなくて、その長く健康的な脚も絡めてくる。

 お互いにユニフォームの短パン姿の抱擁は、裸でくっついているのとほとんど変わらないと思った。


「私の事、だーいすきなせんぱいが嫉妬しないように、こうしてマーキングしておくっス」

「ま、マーキング!?」

「……だってせんぱいは、私のっスから」

「――――」


 吐息が混ざる距離だった。

 真剣に、真面目に、余計な茶化しは一切なく、小夏はジッと俺を見つめる。

 まるで周りの時間だけが止まったかのように、鼓動を鳴らす俺達の心臓の音だけが響いていく。

 それがどちらのものかなんて、もはや気にならないぐらいのゼロ距離で。


「……こなつ」

「……あっ」


 俺は小夏を、そっと抱き返した。

 胸の大きさを強調するような、スタイル抜群の細い腰は、少し力を込めたら壊れてしまいそうだった。

 さっきまでの攻勢が嘘のように、家での義妹モードのような吐息が漏れる。


「……せん、ぱい」


 小夏が、小さく震えていた。

 俺は何を躊躇していたんだろうか?

 ここまでされて、何もしないし感じない訳が無い。

 むしろここまで勇気を出して、頑張ってくれた小夏に失礼だ。

 だから俺も、小夏の気持ちに負けないように、自分の気持ちを伝えるんだ。

 義妹に、家族になる前からずっと抱えていたこの想い。


 一人の異性として、小夏の事が大好きだと――。


「……俺は、小夏の事、が」


 ――ガララララッ!!


「っ!?」

「っ!?」


 その時だった。

 俺と小夏がいる体育倉庫の、古く重たい鉄の扉が、ゆっくりと開き出したんだ。

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