第58話 『鷹臣、頭冷えたか?』
シャワーが床に落ち、排水溝に流れていく。
温かいお湯が汗を流すが一緒に冷や汗が流れ出していた。
流すのに流れている、日本語って難しい。
「ふぅー……、やっぱシャワーは良いよなぁー!」
「……っすね」
簡単に言うのなら。
午後の授業をサボって女子更衣室のシャワールームで部長と二人きりでシャワーを浴びているというこの状況がヤバすぎるという事だった。
「んー? 何遠慮してんだよ? もっとこっち来いよほらほらー」
「ぶ、部長!? や、ヤバいですって!?」
「あー? まだそんな事気にしてんのかー? 別にサボりはサボりなんだから何したって変わらねーだろ?」
「変わりますよ!?」
部長が俺の手を引っ張りシャワーの下、つまり自分の目の前に誘導してくる。
ヤバいなんてもんじゃなかった。
バレたら不純異性交遊まっしぐらのこの状況……お湯に濡れたままユニフォーム姿を着る部長の姿が妙に艶めかして、罪悪感と背徳感が押し寄せてくる。
「おー、いーなそのツッコミ。ちったぁ頭、冷えたか?」
「逆ですけど!?」
「あん? 水温下げっか?」
「そういう意味じゃないですけど!?」
むしろ熱が出そうだった。
この前は小夏と三人だったが、今は部長と二人きりなのだ。
いや三人でシャワーもそれはそれでヤバいが、それに増してヤバさが凄い。
家の風呂ならともかく、更衣室のシャワールームは個々人が使えるように最低限の壁で仕切られている。
つまり一つ一つの空間がとても狭い。
そこに年頃の男女が、こういうと陸上のユニフォームという上下セパレートタイプのかなりの薄着で一緒にシャワーを浴びていれば……事案も事案なのだった。
「もー面倒くせーなー! ほら頭貸せ頭!」
「ちょ、ちょっとぉ!?」
――ワシャワシャ!
部長が強引に俺の頭を洗い出す。
部長は俺よりも小柄なので必然的に俺が中腰になる状態だ。
乱雑だが部長も女の子だと分かる細い手は、想像以上に気持ち良かった。
頭上から当たるシャワー、部長の指がマッサージのように髪と頭をほぐしていき、落ちた視線の先ではシャワーで濡れた部長の下半身というか脚が見えて、何て言うか……何て言うかだった。
「ったくよぉー、世話焼けんなー、お前はよー!」
部長が俺の頭を洗い続ける。
「不器用って言うかよー、不器用なら不器用なりの立ち回りを覚えろよなー?」
それと一緒に、思いやりのある言葉が聞こえる。
「悩むのも良いけどよー、もっとオレを頼れよなー……っておい、聞いてっか?」
俺の視界には部長の下半身しか見えてなくて、それどころじゃなかった。
「……部長」
「あん?」
部長に頭を預けたまま、俺は言う。
「……もっといい場所、無かったんすか?」
「二人きりで落ち着いて話せて汗も流せんのに、これ以上の場所がどこにあんだ?」
「落ち着けませんよ!?」
この状況で、落ち着けって方が無理な話だった。




