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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
最終章 歩み出す先輩後輩のこれから

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第56話 『鷹臣くん、ヘイストップ~!!』

「……小夏のさ、力になってやりたいんだ」

「うん」


 経緯はどうあれ、俺は一度小夏に救われている。

 それが元々俺の方から小夏を助けたとかは関係ない。


「……小夏はさ、義母さんが倒れたのは自分がわがままを言ったせいだって思ってるんだ。体調を崩したのは本当だけど、その前から、ずっと苦しんでてさ」

「うん」


 あの日、俺は陸上を辞めようとしてた。

 それを小夏の真っ直ぐさが、好きな事は好きでいて良いんだと思い出させてくれて……俺は大好きだった陸上を、走る事を辞めずにいられたんだ。


「……小夏の力になってやりたい。小夏のせいじゃないって言ってやりたいのに、今は俺が隣にいると余計に小夏を苦しめちゃうんだ。小夏は優しいからさ、無意識の内に気を遣っちゃうんだ」

「うん」


 だから今度は俺が小夏を助けたい。

 だけど俺がいるせいで、小夏はまた自分のせいだと塞ぎこんでしまう。


「……自分が一番苦しくて、自分が一番辛いのに、おにいちゃん学校に行ってって言ってくれたんだ。辛いのに、俺の心配をしてくれてさ」

「うん」


 風邪が治れば良くなるのだろうか。

 だけど俺は今、小夏に笑ってほしい。


「これじゃあ、これじゃあさ。小夏は、まるで……」


 ――あぁ、そうか。

 言ってて気がついた、気がついて……しまった。


 今の小夏は、そう。


「あの時の俺と、そっくりなんだ……」


 大好きなのに、何も出来ない自分を責める姿が。

 自分のせいで、誰かに迷惑をかけてしまったと塞ぎこむ姿が。


 だから、だから俺は……!


「俺と同じ想いを、小夏にしてほしくない。俺が小夏の力になってやれれば、俺はそれで――」

「ヘイストップ~!!」

「――いいっ!?」


 やるべき事が、やりたい事がハッキリしたのに。

 佳穂がそれを全力で止めてきたんだ。


「ナンセンス! ナンセンス! ナンセンスだよ鷹臣く~ん! ナンセンス過ぎてナンセンスだよ鷹臣くん!」

「な、何かナンセンスって」

「それだけナンセンスって事だよ~!!」


 さっきは胸の前で両手を交差して作っていた佳穂のバツマーク。

 それが今では佳穂の頭上で大きく掲げられていた。

 

「そ、そんなに駄目だったか……?」

「そりゃそうだよ~! 鷹臣くんが小夏ちゃんの事を好き好き大好き~って気持ちはよ~く分かりました!」

「じゃ、じゃあ……」

「でも私からするとそもそも鷹臣くんも苦しんでるよね状態です! ぶっぶ~!!」


 佳穂が両手のバツマークを俺に向けてくる。

 それはさっきよりも意志の強い、声も仕草も大きいバツマークで。


「鷹臣くんが病院に行って、お医者さんがゲホゲホしてたら不安にならない?」

「え? 何だその例え……」

「今の鷹臣くんが正にそれだからだよ~!!」

「お、俺が……?」


 佳穂が両足でピョンピョンと飛び跳ね出した。

 どうやら俺の駄目さはバツマークだけじゃ足りないらしい。


「むむむぅ、無自覚と来たかぁ~! 鷹臣くん、恋愛もので無自覚が許されるのは相手からの好意に気づかない事だけだよ! 昨今はそれも許されないけど!!」

「いや、今度は何の話……」

「だからそんな重症な鷹臣くんに、セカンドオピニオンをご用意しております!!」

「……え?」


 また独自の謎理論が展開されるかと思いきや、佳穂は急に両手で拍手を始めた。

 パチパチパチと手を叩く音が体育館裏に木霊する。


 それと同時に、俺の背後からザっと足音が聞こえて――。


「鷹臣! 話は聞かせてもらったぞ!!」

「ぶ、部長っ!?」


 ――そこには、昼休みなのに何故かユニフォーム姿になっている部長がいたんだ。

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