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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
最終章 歩み出す先輩後輩のこれから

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第55話 『鷹臣くん、ありがとね~!』

「な、何でそれを……」


 俺と小夏の過去を、佳穂が知っていた。

 あの時の小夏は今と見た目も雰囲気も違ったし、実際に現場に駆け付けてくれたのは並走していた部長だけだったのに……。


「え? だって鷹臣くん達が義理の兄妹だって教えてくれた後ぉ、小夏ちゃんが嬉しそうに話してくれたよぉ~?」

「こ、小夏がっ!?」

「あっ、そっかぁ~! そう言えば鷹臣くんは男の子達の方に揉みくちゃにされてたもんね~?」

「…………」


 その答えは、いや犯人は小夏だった。

 う、嘘だろまさか小夏があの時に……いや、でも確かに、そうか……。


 あの後、小夏が家で俺を押し倒して、キスをしてくれたんだもんな……。

 その時に思い出話をしたのも、その前に部活で佳穂達と話していたからで……!


 それを理解した瞬間、自分がどれだけ恥ずかしい事をしていたかを理解する。


 だって俺はその次の日、小夏をみんなの前で後ろから抱きしめていた。

 あれ、女子部員のみんなからしたら全部事情を知りながら見ていたって事だろ!?


「……穴があったら、入りたい」

「鷹臣くんが入らなきゃいけないのは保健室のベッドだと思うな~」


 恥ずかしさで顔が、とんでもなく熱い。

 日陰なのに真夏かってぐらい、俺の顔が熱かったんだ。


「でも、今は俺より小夏が……」

「鷹臣くん。王子様が弱った姿を見せるのも、女の子はキュンとするんだよ~?」

「キュンって……」

「あれ? でもそれなら学校で休まない方が良いのかも~……?」

「どっちだよ!?」


 佳穂が自分で言って自分で矛盾に首を傾げる。

 終始マイペース、終始振り回されっぱなしで、終始独特な空気が流れていた。


「まあでも、鷹臣くんが小夏ちゃんの為に頑張りたいって気持ちは凄く分かるよ~、凄い分かる分かる~」

「……何で繰り返したんだ?」

「それぐらい分かるからだよ~」

「…………」


 佳穂がぽやぽやした笑みを浮かべる。

 何も考えて無さそうな笑顔だけど、そのおかげで緊張が解けていく気がした。


 あれ、何で緊張してたんだっけ……。


「小夏ちゃんがぁ~、大切なんだもんね?」

「……あぁ」


 そんな俺にまた佳穂が笑いかけてくれた。

 ニコニコと笑いながら、人差し指をピンと立てて空に掲げる。


「人生は~、トライアンドエラ~!」

「え?」

「当たって砕けろ、だよ~!」

「……砕けちゃ、駄目じゃないか?」

「そうでもないよ~! だってあの後の鷹臣くんもぉ、小夏ちゃんと再開するまでずっと砕けそうだったも~ん!!」


 その指が下げられて、ビシッと俺に向けられる。


「失敗して落ち込んじゃっても~、誰かの為だったら大丈夫なのです~! あの時の鷹臣くんは正直見てられなかったけどぉ、それでも新入生歓迎会の手伝いをしてくれたりして私も助けられました~、ありがとね~!!」

「ど、どういたしまして……?」


 腰に手を当てて俺を見つめるその顔は、渾身のドヤ顔で。

 話が二転三転して、最後には感謝され、俺の頭にはクエスチョンマークが大量で。


「鷹臣くんは優しいから~、誰かが困ってるとす~ぐに助けたくなっちゃうのです。それこそ顔も名前も知らなかった小夏ちゃんを助けるぐらい、お優しいのです~」

「あ、ありがとう……」

「でも自分の事には無頓着だよね」

「急に刺すのやめてくれないか!?」


 緩急が、緩急が凄い。

 ずっと笑顔だったのに急に真顔になるのは普通に怖かった。


「鷹臣くんが大好きな小夏ちゃんを心配するようにぃ、私達だって小夏ちゃんと同じぐらい鷹臣くんの事が心配なんだよ~?」

「……ごめん」

「ううん。だから~、話してほしいな~?」


 注意されているのに優しくて、厳しいのにとても温かかった。

 その気持ちが胸の中にスッと入り込んでくるようで。


 何だか……小夏とここで再会した時の事を、また俺は思い出していたんだ。

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