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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
最終章 歩み出す先輩後輩のこれから

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第53話 『たっかおみく~ん、来なよ……屋上にね!』

「…………」


 小夏を父さんにお願いして、登校する。

 歩いて二分もあれば学校に着くのに、俺の足はとんでもなく重かった。

 小夏が心配だ。

 だけど俺は何も出来ないし、一緒にいると余計に辛い思いをさせてしまう。


「…………」


 学校横の小路を抜けるとすぐに校門が見えて、そこには大通りから登校する生徒達の姿が見えた。

 友達と談笑する人、眠そうに一人で歩く人、急いでいるのか走り抜ける人、のんびりとスマホを見ながら進む人……と、様々だ。


「…………」


 その中の俺は、どこに位置するのだろう。

 溜息を吐く気力も起きず、ボーっと無気力にそれを眺めながら、人の波に入るだけ入って校門をくぐる。


 今までは小夏と一緒に登校していたのに、今日は小夏が隣にいない。

 たった数ヶ月。

 二学期が始まってからだと本当に一カ月とちょっとで、小夏が隣にいてくれるのが当たり前になっていたんだ。


「…………」


 教室に着いて、何人のクラスメイトに話しかけられた気がする。

 だけど何て聞かれて、何て答えたかは覚えていない。


 昨日はどうしたんだよー、とか。

 テスト終わったしサボりたくなったかー、とか。

 先生も連絡無いって言ってたから心配したんだよー、とか。


 ありがたいけど、その優しさが辛くて。

 それは、小夏も同じだったんだとふと思うと、余計に……辛くなって。


「…………」


 ただ意味もなく、時間だけが過ぎていく。

 先生が黒板にチョークで教科書の内容を書いて、それをクラスメイト達がノートに写している。

 窓の外の校庭からは体育をやってるクラスの声が聞こえてきて、風に乗って部長の声が聞こえたような気がした。


 だけどその間も、俺は小夏の事で頭がいっぱいで、何も入ってこなかった。


「…………」


 俺は一体、何をしてるんだろうか。

 いや、何もしていないし、何も出来ていないんだ。


 この感覚を、俺は知っていた。

 俺が走るのを、陸上を辞めようとした時と同じだった。

 好きなのに、出来ない。

 何も出来ない無力感、何も出来なかった罪悪感。


 それがまるっきり、昔の俺と今の俺とで被ってしまった……。


「…………」


 だけど今回は諦めたくない。

 小夏に元気になってほしい、隣で笑っていてほしい。


 けれど俺は、何も出来ないし、出来なかった。

 義母さんが倒れた時も、病院で検査が終わるのを二人で待っていた時も、父さんが来てくれて家に帰り小夏が泣きだしてしまった時も。


 そして小夏が調子を崩して、俺に心配かけまいと笑ってくれた時も……。


 俺は何も、してやれなかったんだ。


「…………」


 駄目だ。

 駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目駄目だ!


 こんな顔、小夏には見せられない。

 小夏が笑ってくれるのなら俺も小夏と笑っていたいのに、一緒にいて、笑えない。


 本当に辛いのは小夏なのに。

 俺が辛いなんて、考えちゃいけないのに!


 ただただ、何も出来ないこの状況が、すごく……辛かったんだ。


「…………」


 だからこのまま何もせず、何も出来ずに時間が過ぎてくれる事を待つ俺に……。


 ――ガララララッ!!


「たっかおみく~ん! い~ますかっ!」


 勢いよく教室の扉を開いて現れたのは、昼休み開始のチャイムが鳴ったのとほとんど同時だった。


「あっ! いたいた~! お~い! たかおみく~んっ!」

「…………佳穂?」


 彼女は、陸上部マネージャーの佳穂は、俺を見つけるやいなや手をブンブンと振りながらズカズカと教室に入ってくる。


 その姿は、つい先日の、お試しデートの時とそっくりで――。


「来なよ……屋上にね!」

「…………は?」


 でもあの時とは、まるっきり真逆の事を言って――。


「あ~ウチの学校、屋上入れないんだった~! じゃあ~、体育館裏で良いよね~! しゅ~ご~れんこ~れっつご~!!」

「は、ぁぁぁぁっ!?」


 ――そのまま俺の手を引いて、問答無用で教室を飛び出したんだ。

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