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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第三章 たどたどしい義兄の決断

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第38話 「鷹臣、走れ走れーっ!!」

「おらおら鷹臣! 走れ走れ走れーっ! そんなんじゃ小夏ちゃんにカッコ悪いとこ見せるだけだぞおらーっ!!」

「う、うーっすっ……!!」


 地獄だった。

 端的に言うと、地獄だった。

 背後に突然現れた部長のヘッドロックから解放されてすぐ、俺は校庭をずっとグルグル回るだけの地獄の耐久走に付き合わされていた。


 しかも今回は部長が前を走って先導するのではなく、ひたすら後ろから俺に激励を飛ばして煽ってくる特別仕様。


 ハイペースで乱れまくる呼吸。

 視界の隅では、他の陸上部員達も各々の持ち場で練習を始めていた。


「鷹臣! よそ見してる暇あんなら前見ろ前! 姿勢が崩れてきてんぞー!」

「う、うっす!!」

「後ろのお前らもペース上げてついてこーい! 負けっぱなしで良いのかー!?」

「ま、負けられるかー!」

「は、走ってる時まで女子が近くにいるとかズルいぞ鷹臣ー!!」

「お、俺は……俺は純粋な走りでも奴に勝てないのか……っ!?」


 俺の後ろには部長が、そしてその後ろにはチームメイトの男子部員達が揃って部長にしごかれていた。

 今この場で一番元気があるのは間違いなく部長である。


 男勝りとかボーイッシュとか、そういう事を抜きにしても一番は部長だった。


「よし鷹臣! ようやくペースに慣れて呼吸も安定してきたな! じゃあそろそろ、小夏ちゃんと何があったか喋ってもらおうか!」

「い、今すか!? ま……マジすか!?」

「当たり前だろーが! まさか練習前に散々見せつけておいて、今喋れねーとか言わねーよな!?」

「……喋る余裕の方の、話……なんですがっ!」

「心拍強化だ! 外じゃあ環境はいつも味方してくれねーぞ!」

「う、うっーす……!」


 控えめにいって化け物だった。

 後ろからペースを上げて隣に並走してきた部長が、このままのペースで俺に話をしろと言う。確かに夢中になる事で苦しさから解放されると言うメンタル的な面も存在するが、それをこのオーバーペースでやらされるのは地獄以外の何物でもなかった。


「こ、小夏とは……改めて想いを伝えあいましたーっ!!」

「前向きでいーじゃねーかー! 腑抜けてたらもう一度ヘッドロック決めてやる所だったぞー!!」


 叫んだ原動力からだろうか。

 少しだけ身体が軽くなった気がした。

 だけどそれにも部長は追走してくるどころか俺の前を行こうとする。


 本当に何なんだろうかこの人のバイタリティは……。


「それでー!? 仲良いのは前から知ってっけどよー! どーしてそこまで急に変わったんだー! まさか、ヤっ――」

「健全なお付き合いをさせていただいておりますー!!」


 校庭を走りながらとんでもない事を口走りそうになった部長に負けじと俺は叫ぶ。

 俺は誓って、一線は超えてない。

 確かにキスと言う一線は超えたけれど、本当の一線はお互いの家族のアレコレがある以上はまだだと……しっかりと線引きがされているんだ。


「あーん!? 言ってくれるじゃねーかー! さっきの見せつけ抱擁が、健全だってぇのかぁー!?」


 しかし部長も負けてはいなかった。

 正論と言う爆走で声を張りながら俺の前に躍り出る。


「だって……仕方ないじゃないですかー!!」


 だが俺も負けずにペースを上げて叫びだす。


「小夏のおかげで……俺はこうして陸上を辞めずにいられてるんですからーっ!!」


 これだけは、この想いを叫ぶ間だけは……俺は誰にも負けられないのだから。

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