第37話 「鷹臣くん、何してるの~っ!?」
俺の後輩が義理の妹で世界一可愛い。
そんなタイトルの本を俺が書いても良いぐらい、小夏が可愛かった。
だけど小夏の可愛さを世界中に広めたい反面、誰にも見せたくない俺がいるというのも最近のアレコレでよく理解している。
だからこそ、俺がやるべき事は一つだった。
「鷹臣くん、何してるの~っ!?」
「何って、小夏を後ろから抱きしめてるだけだけど……」
「ぴぎゅぅ……!」
放課後の校庭。
部活が始まる直前の準備時間。
ジャージ姿のマネージャー、佳穂が震える指で俺と小夏を指差してくる。
今日はコンタクトを付けて後輩モードも小夏が、俺の腕の中で丸くなっていた。
「え? え? え!? 昨日の今日で何があったの~!? おにいちゃんと妹の禁断のラブ~っ!?」
「禁断じゃないって。ただ、自分の気持ちに正直になっただけかな」
「鷹臣くんが何か臭い事言ってる~!?」
「か、佳穂ちゃん先輩ぃ……た、助けてっスぅ……!」
「そうは言うけど満更でも無さそうだね小夏ちゃん~!?」
昨日、小夏にキスをされて、キスをして。
自分の気持ちが、ようやく分かったんだ。
俺は小夏の事が大好きだ。
それにもうみんなも知ってるんだから隠す必要なんて全くない。
俺が隠さない事によって小夏に悪い虫がつかなくなるし、何より俺が嬉しいので、正に一石二鳥だった。
「聞いてくださいよ佳穂ちゃん先輩! 楠木先輩、休み時間の度に私たちの教室に来て小夏ちゃんを甘やかしてるんです!!」
「ま、毎回一年生の教室に~!?」
「はい! 楠木先輩ってとても独占欲が強いんですね! 見てる私達がキュンキュンしちゃいました!!」
「き、キュンキュンするような事を教室で~!?」
「親友の雌の顔! 羨ましさと脳破壊による破壊と再生の創生です!!」
「な、並々ならない感情を持ってるね~!?」
小夏と仲の良い一年生女子達が佳穂に駆け寄る。
やっぱり女子はこういう恋バナが好きなんだなぁ……。
「せ、せんぱぁい……そ、そろそろ離してくださいっスぅ……」
「部活が始まったら離れ離れになるんだし、もうちょっとだけな?」
「き、きゅぅ……」
「昨日の鷹臣くんが宇宙人にさらわれて中身が入れ替わったって言っても私は信じるレベルで変わってるよ~!?」
段々とユニフォームに着替え終えた部員が集まってきている。
だけどまだ全員じゃないので、今のうちに小夏から元気を貰わなければ。
「お、俺達はいったい、何を見せられているんだ……!?」
「だ、だが女子と無縁な俺達にとって、これはこれでアリなのかもしれない……!」
「色恋に現を抜かしている今が、走りで奴に勝つチャンスなんじゃないか……!?」
「困惑と悲哀と野望が混ざりあってるよ~!?」
佳穂が遠巻きから眺めている男子部員にも反応している。
流石は世話焼き苦労人のマネージャー、男女問わずサポートが行き届いている。
そんな佳穂に倣って周りを見ると、だいたい部員は揃いつつあった。
「じゃあそろそろ、部活始めよ――」
「始められる訳ねぇだろドアホー!」
「――うでぇっ!?」
突然の強烈な締め付けによる頭痛が俺を襲う。
「た、鷹臣くんが小夏ちゃんを後ろから抱きしめながら、くるみ部長にヘッドロックされちゃったよ~!?」
どんな状況なのか佳穂が全部言ってくれたけど、痛みでそれどころじゃなかった。




