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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第二章 初々しい義妹の暴走

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第36話 「おにいちゃん、一緒に寝よ……?」

「おにいちゃん、一緒に寝よ……?」

「……おう」


 深夜、と言っても日付が変わるちょっと前。

 お気に入りの枕を抱いた小夏が俺の部屋に入ってきた。

 流石に寝る前なので変な格好ではなくて、オレンジ色のカチューシャとフチなしのメガネにふわもこな寝間着の義妹モードである。


「え? あ、う、うん……!」

「……何で小夏が驚いてるんだ?」

「だ、だって……おにいちゃん、もっとビックリすると思ってたから……」

「……強いて言うなら、そう思える小夏の純粋な可愛さにビックリしてる」

「ふぇぇっ!?」


 抱いた枕に半分埋めた小夏の顔が真っ赤になる。

 ……アレだけ夕食の時にテーブルの下で俺の足を弄ってきて、それで終わりだとはどう考えても思えなかった。


 それでまあ予想通り小夏が部屋にやって来た訳である。

 律儀なのは、ちゃんと多忙な義母さんが確実に寝ている時間を見計らっているという所だった。


「お、おにいちゃんの方がカッコいいよ……!」

「お、おう……!?」

「お、お邪魔します……!」

「お、おう……!」


 おう、しか言えなくなってしまった。

 小夏の謎なカウンターが炸裂して俺の心臓が飛び跳ねる。

 顔を真っ赤にした小夏に突然カッコいいと言われて固まる俺の横を通り、小夏は俺のベッドに入っていく。


 怪盗になれるんじゃないかってぐらいに鮮やかなハニートラップだった。


「お、おにいちゃんも、きて……?」

「……おう」


 お前、本当に、お前……!

 心の中ではそう言えるのに、現実ではおうしか言えない。

 誰か俺に副音声を付けてくれ。


 そうじゃないと俺のベッドの中から顔を出して上目遣いで見上げてくる義妹の誘惑に勝てないんだ……!


「お邪魔、します……」

「い、いらっしゃい……」


 あれ、俺のベッドだよな……?

 いつの間にか立場が逆転してしまった俺が、小夏の待つベッドの中に入っていく。

 

 俺のベッドの筈なのに、中は小夏の甘い匂いで満ちていた。


「えへへ……」

「っ……!?」


 入って早々に小夏が俺に抱きついてくる。

 ふわもこの寝間着を抜きにしても、小夏の身体が柔らかすぎんだ。

 俺の胸元に押し当てて、むにゅっと形が変わる大きな胸。

 まるで俺を抱き枕にでもしているかのように足を絡めてきていて、完全に身動きが取れない状態になってしまった。


「おにいちゃん……」

「っ~~!?」


 ――スリスリ。

 小夏が俺に頭を擦り付けている。

 お風呂上りを抜きにしても良い匂いがする。


 いや、良い匂いしかしなかった。


「さっき、しちゃったん、だよね……」


 お気に入りの枕を持ってきたのに、今は俺の枕に頭を乗せている。

 一つの枕に頭が二つ。

 一人用の枕では余りにも狭すぎる。


 頭が落ちないようには真ん中に寄るしかなくて。

 俺達の顔はいつの間にか、また吐息が触れ合う距離になっていた。


「おにい、ちゃん……」

「こ、小夏……」

「あっ……」


 愛おしそうに俺を見つめる、クリッとした大きな瞳。

 ミディアムショートな黒髪が顔にかかるのを、気づけば俺は指で払っていた。


 サラサラでしっとりしている艶のある黒髪の感触。

 そこから指を落として、きめ細やかですべすべな頬に触れる。


 ピクッと震える小夏のいじらしさが可愛くて、まるで魅了でもされたかのように俺から距離を詰めていった。


「なあ、小夏……」

「う、うん……」


 小夏は自分から誘ってきたのに緊張している。

 それはそうだろう。

 今度は俺から返そうとしていたんだから。


 さっきは小夏からの不意打ちだったけど、今度は俺からキスをしようとしている。

 指で軽く触れるだけだった頬に手を添えた。


「…………」


 そこで脳裏を過ぎったのは、やっぱりあの気持ち。

 だけどこの気持ちをどう伝えるのが正解なんだろうか。


「小夏、は……」


 義妹モードの可愛い小夏。

 正直、俺だけが見ていたい。

 皆に受け入れられるきっかけになったし、これが小夏の素の性格だけど、そういうのは抜きにしても俺だけの小夏でいてほしかった。


 そう思うのはとても我儘で、傲慢なのだろう。

 でもそう思ってしまうのは、俺が最初に好きになった小夏が、後輩の時の小夏だからだ。


 後輩の小夏を好きになって、小夏が義妹になってからはもっと好きになった。


 どっちの小夏も好きなんだ。

 どっちも本当の小夏で、だからこそどっちが良いとか選べない。


「…………」

「……おにい、ちゃん?」


 そんな小夏を、独占したいという気持ち。


「……小夏」

「……え?」


 あぁ、そうか。


「俺だけの、小夏でいてくれ」

「ふぇっ――」


 小夏も、同じ気持ちだったんだ。

 振り回される事に必死で気づけなかったけど、小夏は最初からずっとそれをしてくれていた。


 だからその気持ちを、愛しさを、俺も小夏にお返しする。

 小夏がしてくれたように、その後にはもう、言葉は必要なかったんだ。

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