第34話 「おにいちゃん、カッコ、よかった……」
「……何か、凄かったな」
「……うん」
夜、俺は小夏の部屋に来ていた。
理由はもちろん、今日の反省会と言うかお疲れさま会的なやつ。
お互い部活そっちのけで部員達に揉みくちゃにされまくったからだ。
「……ごめんね、おにいちゃん。私が……言っちゃったから」
「それはもう大丈夫って、小夏も分かったろ? 思った以上に、いや変な意味で受け入れられてて驚いたけどさ」
責任感の強い小夏が、胸に抱いたお気に入りのクッションに顔を埋める。
俺はそんな義妹の頭を優しく撫でながら、それはそれとして大変だったなと思わず苦笑いが浮かんでしまった。
「あ、あうぅ~……!」
対照的に小夏はクッションに顔を埋めたまま恥ずかしそうに首を横に振っている。
まあこれは俺が小夏の頭を撫でているせいなので仕方ない。
一度始めたら止められないんだよな、これが。
サラサラで、手触りが良くて、撫でる度に可愛い反応をしてくれるだけじゃなくて、良い匂いまでする。
だけど俺達の関係を暴露した事によって。
この光景ももし佳穂達に見られたらまた変な興奮をされるんだろうなって思ってしまうのだが。
「……やっぱり、見せたくないな」
「…………おにいちゃん?」
「あ、悪い悪い」
「えへ、えへへへへ……」
受け入れられて嬉しい反面、やっぱり心の何処かで独占したいと思う俺がいる。
そんな俺が撫でる手を止めたのを不思議に思った小夏が顔を上げたので、俺は慌ててもう一度小夏の頭を撫でてやると、今度はクッションを抱いたまま嬉しそうにはにかんだ。
何だこの義妹。
可愛すぎやしないか……?
「……おにいちゃんの、手、おっきい」
「……ま、まあ、な」
笑顔の小夏が小さく呟く。
それに俺は不覚にもキュンと、グッて来てしまい頷く事しか出来なかった。
……こういう時、どう返すのが正解なんだ?
「……さっきの、おにいちゃんも、おっきかった」
「さ、さっき?」
「う、うん……。みんなの前に、出てくれた時の、おにいちゃん」
「……あ、あぁ」
大きかった、かぁ。
そう言われて悪い気はしなかった。
だって可愛い義妹に、可愛い後輩に、可愛い恋人に頼りになったって言われてるようなものである。
あの時は小夏を守る事に必死だったけど、こう言われるとやって良かったと思ってしまうのが人間の性、いやおにいちゃんの性がないだろうか。
「すごく……カッコ、よかった……」
そんな邪な気持ちになっていた時、小夏は動き出していた。
出していたと言うのは、俺がそれに気づくのが遅れてしまったからだ。
「カッコ、よかった、から……」
「小夏……?」
頭を撫でる俺の手をものともせず、カーペットに座った小夏が隣にいる俺に距離を詰めてくる。
メガネ越しの日焼けした頬が赤く染まっている事に、俺はすぐに気づいた。
いや、気づいた時にはそれ程までに近づいていたんだ。
「もっと、カッコイイところ、見たい、な……」
「こ、小夏っ!?」
胡坐をかいていた俺の膝に、小夏が抱いていたクッションがぽすっと落ちた。
それは小夏が座る俺の両側に自分の手を置いて、そのまま顔を近づけてきたからである。
目の前に広がる、可愛い義妹の顔。
フチなしメガネの奥でクリッとした瞳が熱を帯びていて、日焼けした頬がどんどん紅くなっていた。
「おにい、ちゃん……」
「こ、こなっ――」
その熱は、小夏の吐く息で感じられた。
それが分かったのは、俺達の吐息が、混ざりあったからだった。




