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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第三章 たどたどしい義兄の決断

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第31話 「せんぱい、手、握って……っス」

「……小夏、本当に大丈夫か?」

「う、うん……。入学式の時も、してたから……」


 食事を終え、揃って一緒に家を出る。

 そう言う小夏のクリっとした瞳には、若干不安の色が見えていた。


 今の小夏は制服こそ着ているが、メガネをかけたままの義妹モードだ。

 活発な瞳もフチなしメガネというフィルターがかかれば途端に垂れ目が目立つ。

 艶のある黒のショートカットには、オレンジ色のカチューシャまでつけていた。


 けれど恰好はいつもの学生服、いつもの短いスカートから覗く健康的に焼けた足とそれを包むいつもの白いソックスと茶色のローファーと、いつもの後輩な小夏だ。


 誰かが言っていた、好きな人を自分好みに染めるとかなんとか……。

 それが今、現実に起きようとしている。

 何故なら俺が最初に好きになったのは後輩の時の小夏だし、だけど家での健気な義妹の小夏を知ってもっと好きになっていった。


 つまり後輩モードなのに大人しい小夏は、それだけでヤバいのだ。

 この状態で外に出る事自体が、何だかイケない事をしているみたいだった。


「そ、それに……おに……せんぱいも、いる……っス」

「……お、おう。何かあったらすぐ言うんだぞ」


 グッときた。

 グッと、きてしまった。

 制服姿の大人しい小夏に「せんぱい」と呼ばれる事の破壊力が凄まじい。

 いつもと違いすぎる義妹、いや大好きな後輩の姿に、グッと来ない筈が無かった。

 

 こんなたどたどしい「っス」は、かなりすごくとてもヤバいんだ。


「……部活もそれでやるのか?」

「も、もちろん……このメガネ……スポーツ用、だから……!」


 自信満々かつ不安そうに言う。

 後輩モードかと思ったらやっぱり若干義妹モードが抜けていなかった。


 これはこれで可愛いが、やっぱり不安を感じる。


「……近い、ね」

「……だな」


 家から学校まで徒歩二分だ。

 最高過ぎるこの立地は、逆を言えば通学時の余韻をほとんど感じられない。

 しかも今は普段と違う事をして緊張している小夏がいる。


 心の準備をする時間がほぼ無いのだ。

 例えるなら、予防注射の列が急に進んででいきなり自分の番になってしまうような感覚だろうか。


「……せ、せんぱい」

「どうした?」

「……手、握ってて、ほしい……っス」

「…………任せろ」


 俺の後輩が、義妹が、恋人が可愛すぎる。

 朝からこんな可愛さを摂取して良いのだろうか。


 だけど俺は小夏の先輩で義兄で恋人だ。

 だから頑張る小夏を守る為に、その手をしっかり握るんだ。


「えへ、えへへ……せんぱい、手……おっきい、っス……」


 もう一度言わせてくれ。

 今日の小夏は、いつにも増してとんでもなく可愛かった。

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