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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第二章 初々しい義妹の暴走

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第28話 「おにいちゃんの、ばか……」

「すみませんでした!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 土下座だった。

 俺にはもう、土下座これしかなかった。

 いくら小夏の裸も守る為、見ない為とは言え、バスタオルが落ちた小夏の身体を抱きしめてしまったのは事実である。


 思い返せばそれは、ほぼ犯罪だったとさえ思えて……。


  ◆


「…………」

「…………」


 あの時、あの場所、あの瞬間。

 俺と小夏は風呂場の中でお互い裸で抱き合っていた。

 そこに何の誤魔化しようもなく、少し落ち着いた後で俺の身体に重なるありのままの小夏の熱と柔らかさが伝わってきたんだ。


「ひ、ひぁっ――」


 それは当然、小夏も同じだった。

 目の前で見開かれる、クリっとした瞳。

 日焼けが分からなくなるレベルで瞬時に真っ赤になる顔。


 震える口元から声が漏れた瞬間――。


「だ、駄目だ小夏!」

「っっっっっっっ~~~~~~~~~~~~~~!!!!????」


 ――俺は、小夏の口元を手で塞いだ。

 裸で抱き合いながら、風呂の壁に小夏を押し当てながら、大きな悲鳴を上げようとする小夏の口を、俺の手で。


 あの時のドキドキは、胸の鼓動は間違いなく過去最大級である。

 重なる肌、震える小夏の柔らかすぎる感触と、静寂に包まれた浴室の中で聞こえた換気扇の音が、お互いの心臓の音と混ざりあっていたんだ……。


  ◆


「すみませんでした!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 だから俺は土下座をしている。

 着替えて、戻った小夏の部屋で。


 到底許される事じゃないと分かっているけれど、俺にはこれしか出来ない。

 この前した勘違いの土下座とは違う、明確に俺が悪いと分かっての土下座だった。


「……おにいちゃんの、えっち」

「……うぐっ」


 そんな俺の頭上から、小夏の罵倒が降ってくる。

 当然だ。だって俺はそれぐらいの事をしたんだから。


「……おにいちゃんの、けだもの」

「……うぅっ」

 

 だけど義妹モードの小夏から言われる本気の罵倒は心に来るものがあった。

 罵倒なんだからこれも当然だろう。

 だけど後輩モードの時とは比にならないぐらいのダメージがあるんだ……。


「……おにいちゃんの、色情魔」

「……すみません」


 語彙力が凄い。

 小夏の凄い語彙力の罵倒を受けている。

 色情魔なんて言葉、普段の生活で絶対に使わないのによく知ってるな小夏……。


「……おにいちゃんの、土下座趣味」

「……趣味じゃ、ないです」


 それしか、言えないです。

 こんな事を趣味にしたくはない。

 もっと対等でいたいのに、気づけば何かしらのトラブルをやらかしている。


 俺は俺が思っている以上に弱いのかもしれない。

 もっとちゃんと、段階を踏んで小夏を安心させなければ……!


「……おにいちゃんの、」

「……小夏!!」

「ひゃぁっ!?」

「うおぉっ!?」


 そうと決まれば話は早い。

 俺は誠心誠意、小夏にお詫びをする事を決意して顔を上げる。

 すると想像以上に目の前にあった小夏の顔が離れ……ていうか小夏が尻もちをついた。


 真上から俺を見下し罵倒していたと思っていたのに、実際の小夏はしゃがんで俺に囁くように罵倒していたのかもしれない。


 ……いやそうじゃなくて!!


「大丈夫か小夏!?」

「ぁ、あうぅ……!?」


 カーペットの上とは言え、かなり盛大に尻もちをついた小夏に駆け寄る。

 俺は勢いそのままに小夏の上に覆い被さるようになっちゃったけど、今は小夏の身体の方が大事だった。


「怪我無いか!? お尻とか、太ももの筋とかやってないか!?」

「や、やぁぅっ……!?」


 小夏の背中に手を回して、座ったままだけど楽な姿勢を取らせる。

 俺の不注意で小夏が身体を痛めたり怪我をしてしまったらそれこそ一大事だ。


「や、やぁぅ……? も、もしかして背中か腰か!? す、すまん! すぐに応急処置するからこのままベッドに――」

「――お、おにいちゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 小夏が叫んだ。

 俺のさっきの土下座と、負けないぐらいの大声で。


「……小夏?」


 その声の大きさに、俺の目は丸くなっていただろう。

 俺の腕に抱かれた小夏を見下ろす。


「……お、おにいちゃんの」


 クリッとした瞳が、若干涙目になっていた。

 だけどその瞳は、すぐにぷいっと逸らされて。


「…………ばか」


 耳の先まで真っ赤になりながら、消え入りそうな声でそう呟いたんだ。

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