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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第二章 初々しい義妹の暴走

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第26話 「おにいちゃん、私だけを見て……」

 小夏が風呂に入ってきた。

 バスタオル姿の小夏が、風呂に入ってきた。

 部室のシャワールームじゃなく、俺達の家の風呂に。

 部長と一緒のユニフォーム姿ではなく、小夏一人のバスタオル姿で。


 そんな突然訪れた極限状態の中で、俺の口から出た言葉はただ一つだった。


「さっき風呂入ったろ!?」


 違う気がしたが、違わなくもあった。

 部活後にユニフォーム姿でシャワーを浴びた後、家に帰ってすぐに小夏は入浴を済ませているのである。

 ある種の着衣泳後みたいな感じだったので小夏に風邪を引かせる訳にはいかない。


 そう思った俺は真っ先に風呂を沸かして小夏を先に入浴させた後、今に至る。

 つまり小夏は今日、二度目の入浴と言う事になるのだ。


「う、うん……じゃあ、入るね……?」

「き、聞いてくれっておおぉっ!?」


 うん、じゃないが。

 じゃあ、じゃないが!

 有無を言わさずに小夏が、俺のいる湯船に入って来る。

 浴槽の縁から大量のお湯が、滝のように音を立てて流れ出した。


「ちょっと、狭い、ね……」

「いや、あの、いや、あの、いや……!」


 いや、と、あの、しか言えなくなってしまった。

 だってそうだろう小夏はバスタオルだけど俺は裸なんだぞ!

 そんな状態でごく普通の一軒家の風呂に一緒に入っているんだぞ!


 入浴時にバスタオルをつけるのはマナー違反と言うけれど、今だけはあって良かった……本当に良かった!!


「な、何の……ご用で、しょうか……?」

「お、おにいちゃんと、入りたくて……」


 敬語になる義兄。

 可愛すぎる義妹。

 世界の真理がここにあった。 

 駄目だ混乱してまともな思考が何も出来ない。


「えっと、その、くるみ先輩が……言ってた、から……」

「ぶ、部長が……?」

「お、お風呂以上に……自分らしく、いられる場所……無いって……」

「…………」


 言ってた。

 確かに部長は言ってた。

 だけど小夏はそれを真面目に受け取り過ぎじゃないだろうか。

 まだ恋人になって間もないのに、色々な段階をすっ飛ばしている気がする。


 こんなの、誰かに見られたら……って!?


「や、ヤバくないか!?」

「ひゃっ!? な、何が……?」

「何がって……! 今日は義母さん家にいるだろ! こんなところ見られたら――」

「だ、大丈夫だよ……おにいちゃん。お母さん、昨日の夜勤で疲れてるし、一度寝ちゃったら、朝まで起きない、から……」


 なら大丈夫か、とはならない。

 小夏の言う事が本当だとしても、家に義母さんがいるという事実。そして小夏と現在進行形で風呂に入っているという事実。

 

 どれを踏まえても危なすぎる。

 部長が小学生の弟さんと一緒に風呂に入ってるのなんて気にならないレベルでヤバいのだ。


「そ、それに……さ、最近のおにいちゃんは、駄目、だよ……!」

「駄目っ!?」

「う、うん……わ、私って彼女がいるのに……最近は、他の女の子と、一緒で……」

「か、佳穂はともかく部長は練習で……」

「お、おにいちゃんは私のなのっ……!!」


 小夏が至近距離から俺を見上げる。

 湯船で色づいたにしては赤すぎる頬とその真剣な瞳は、学校での元気いっぱいな姿はどこにも無かった。


「だ、だから……おにいちゃん、には……」


 気弱で、大人しくて、だけど精一杯に、空回る事を恐れずに、頑張る。

 

「わ、私だけを……見て、ほしいの……」


 そして独占欲がとても強い。

 それが本当の、小夏の姿だった。


「……小夏」

「……あっ」


 そんな小夏に、俺は手を伸ばす。

 濡れた頬はしっとりしていて、いつまでも触れると思った。


 ここまで真っ直ぐ想いをぶつけられて、何も思わない筈が無い。

 俺は小夏の先輩で、義理の兄で、恋人なんだ。

 

 だから俺も、それを行動でお返しする。

 湯船の中、そっと触れた頬に小さく震えた小夏を抱き寄せるように近づけて――。


『小夏ぅ? 大きな声聞こえてきたけど、大丈夫ぅ……?』

「っ!?」

「っ!?」


 ――そんな時だった。

 浴室の扉の向こうから、義母さんが話しかけてきたのは。

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