第23話 「せんぱい、は、裸っスかぁ!?」
今、俺は女子更衣室に忍び込んでいる。
それだけでもアウトなのに、ここは女子更衣室のシャワールームだった。
俺が普段使っている男子更衣室の青いタイルとは違う、薄桃色のタイルが何かもう、アレである。
扉の位置やシャワーの配置は鏡で反転しただけに見えるのに、女子更衣室のシャワールームと言うだけで特別感がヤバかった。
そんな全生徒下校時間をとっくに過ぎた放課後の女子更衣室シャワールームで。
カーテン式の入り口を閉めた狭いこの空間に、俺は……いや、《《俺達三人》》は顔を合わせて入っていたんだ。
「じゃあ、さっさと始めっか!」
と、右側にいる部長が笑顔で言った。
受験が終わり部活に復帰してユニフォーム姿に戻った部長を、屋外ではなくこの狭いシャワールームで見ると凄く違った印象を覚える。
いやこれは部長に限らずどんな女の子だってそう見えてしまうだろう。
それだけこの空間は密室であり、とても狭いのだ。
「は、始めるって何をっスか!?」
と、左側にいる小夏が顔を真っ赤にして言った。
部長と同じく小夏も赤のユニフォーム姿でとても見慣れているが、やはりシャワールーム効果はとても凄く、俺の心臓は長距離と同じぐらい速く鼓動を鳴らしている。
何よりユニフォームとその後ろに見えるシャワーノズルの組み合わせが凶悪だ。
見た事は無いが、バスタオルより何か倒錯的な匂いがする。
「何をって、汗を流ーす! さっき言ったろー?」
「い、言ったっスけど、おかしくないスかぁ!?」
「楽々浦。オレはな、お前達兄妹にもっと仲良くなってもらいてーんだ! 楽々浦だって昨日みたいにギクシャクするのやだろー?」
「そ、そりゃそうっスけど……って、き、兄妹って!?」
状況に流されまくっていた小夏が部長に噛みつくが、部長は平然としていた。
そう、このトンチキすぎるインモラルな状況は部長の善意から来ているのである。
だから俺は強く言えない。
しかし小夏はそれよりも、部長が言った言葉に引っかかったようで――。
「せんぱぁい……!?」
――驚き、助けを求める視線を俺に送ってきた。
小夏はまだ俺達の関係が誰にも知られていないと思っていたからだろう。
「すまん……小夏と、義妹と仲直りをしたいって部長に相談した次の日に、俺と小夏が付き合い始めたって言ったろ? それで部長に隠しきれなくなってさ……」
「あ! あ、ぁぅぅ……」
目をクワっと見開いた小夏の顔が更に赤くなっていく。
点と点が線で繋がり、そこに自分の行動が加わっていた事に気づいたんだ。
小夏は賢く、こういう時の頭の回転が凄い、自慢の後輩であり義妹な彼女だ。
「ま! そーいう事だからこれからはオレも協力してやるぜ楽々浦! いやめんどーだなこれ! オレ達だけの時は小夏で良いなー!」
「く、くるみ先輩ー……っ!?」
そんな小夏の肩に手を回した部長がその身体を引き寄せる。
どうやら流石の小夏も秘密を知られてグイグイ来る部長に学校の後輩モードを維持するのが難しいようだった。
……それにしても日焼けスレンダーな部長と日焼けナイスボディな小夏がくっついている姿は、俺じゃなくても日焼け好きには最高の光景である。
「つー訳で鷹臣! 早速、裸の付き合いしよーぜ!」
「は、裸っスかぁ!?」
「ユニフォームは着たままですよね!?」
直視出来ない。
無敵か、この人は?
部長はユニフォームの胸元を指で引っ張る。
伸びた生地の内側に隠れていた日焼けしていない白い肌がチラッと見えてしまい俺は慌てて視線を逸らした。
すると、どうだろうか。
逸らした視線の先では、小夏が俺をジト目で睨んでいたんだ。
「……せんぱぁい?」
「…………不可抗力、です」
思わず敬語になってしまった。
男子の視線に女子が気づくのは本当のようである。
だけどそれが本人じゃなくて、隣にいる部長に向けた視線でも悟られるなんて思わないじゃないか。
「よーし! じゃあシャワー流すなー!」
「うわっ!?」
「ひゃぁっ!?」
そんな俺達の攻防なんてお構いなしに。
部長がシャワーのノズルを勢いよく回す。
本来は三人も入る事を想定していない、一人用のシャワールームに。
シャワーノズルから勢いよくお湯が噴射し、俺達の身体を濡らし始めたんだ。




