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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第二章 初々しい義妹の暴走

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第21話 『鷹臣、一緒に汗流すか!?』

「はーっ……はーっ……!」

「どうした鷹臣、ペース乱れてんぞ! 苦しい時こそ顔上げろ! 胸張って酸素吸え酸素!」

「は、はい……っ!」


 放課後の陸上部。

 俺は復帰した部長にしごかれまくっていた。

 今日はひたすら校庭を走り続ける地獄の基礎体力トレーニング。

 外で走るマラソンと違いほとんど景色が変わらない光景の中で、俺は死ぬ気で走っていた。


「そうだ鷹臣! 気持ち! 気持ちだ! 最後は気持ちだ気持ちで負けんな! お前はもう十分速ぇ! だから苦しい時、ヤバい時、最後は気持ちの勝負になる! 苦しいって事は回復する大チャンスだ! 息する度に自分の身体が回復してくと思え!」

「わかり、ました……っ!」

「しゃあ! 良い顔だ! 残り半分気合入れていくぞ!」

「あざっす……っ!!」


 上には上がいる。

 それを俺は目の前を走る部長から思い知らされていた。

 男子とか女子とか関係なく、部長はとんでもなく凄かった。

 俺より速いペースで前を走りながら、俺が乱れたらペースを変えて隣に来ては息を切らさずに叱咤激励し、そしてまたペースを上げてついてこいと前を走る。


 その洗練された後ろ姿は、時々化け物なんじゃないかと思うぐらいだった。


「……ふぃー。終了っとぉー! 鷹臣、お疲れさんっ! こっからはペース落とすぞー! 走ってる時よりももっと意識して息しろよー! これも大事なトレーニングだかんな!」

「は、はい……!」


 そしてひたすら部長の背中を追いかける時間が終わり、そのまま俺達はペースを落としてジョギングの速度で走り続ける。

 これは身体に負担をかけない為だ。

 長時間限界まで走り続けた後はすぐに倒れて休みたい気持ちになるが、そうすると走る事に適応していた身体に急な変化が訪れてとても危険なのである。


 正月の駅伝とかを見ているとゴールした選手がその場で崩れ落ちているが、アレは本番で絶対に負けられないから出し尽くした後の姿なだけだ。

 練習で毎回それをやったら、間違いなく速攻で身体が壊れてしまうだろう。


「大丈夫か鷹臣ー? オレの方が受験でなまってんのに、今日は一度も前に出なかったじゃねーか!」

「……すいません、少し、寝不足で」

「お前それは先に言えよ! ったく、体調管理もオレ達の仕事になるんだぜー?」

「すいません。昨日、小夏が寝かせてくれなかったもので……」

「何でそっちを先に言わねぇんだアホが! 体調なんかよりも重要だろうが!!」

「何でこっちの方が強く怒られるんですか!?」


 部長が走りながらブチ切れた。

 一言前に体調管理が重要って言ってた人とは思えないぐらいブチ切れていた。

 幸いにも今走っているのは校庭の端なので、近くに他の生徒はいない。もし誰かいたら、それこそ昨日の浮気騒動みたいになっていたかもしれなかった。


「何でって、そりゃお前……ぶっちゃけ走る方はもうほとんどメンタルの話だけど小夏ちゃんとの家族と恋人問題は初心者も初心者だろ」

「うっ……それは、そうですけど。でも、失礼ですが……部長は分かるんですか?」

「当たり前だろ! オレにも弟がいっからな!」

「え? 部長、弟いるんですか!?」


 初耳だった。

 中学から部長のお世話になっているけど、部長に弟がいるなんて知らなかった。

 まあ俺も小夏の事を話したのはつい先日なのでお互い様だが、それでも驚いた事は間違いのである。


「おう! 超仲良いぜー!」

「昨日も一緒に風呂入ったからな!」

「ふ、風呂!? 弟と一緒に風呂入ってるんですか!?」

「……お前、なんか変な勘違いしてねーか? 弟つっても今年小学生になったばっかだぞ?」

「え、小学、生……?」

「おうよ! オレと十歳も違う! 凄くね? 父さんと母さん、今もいい歳してラブラブでさー!」


 驚いた。

 いくら男勝りな性格とは言え、弟と一緒に風呂に入ってると言われた時は本気でビックリした。

 確かに小学校低学年なら納得である。

 もし数歳しか違わなかったら、それこそ佳穂が食いついていただろう……。


「まあそんな訳で、鷹臣は時期的には二番目に出来たオレの弟って感じだな!」

「お、俺も弟なんすか!?」

「当たり前だろ! 手のかかる弟ほど可愛いってな!!」

「弟って……後輩ですけど……小学生で一緒に風呂に入ってる弟さんと同じにしちゃ駄目でしょ……」


 どうやら俺はこの数年間、部長からデカい弟だと思われていたらしい。

 だけど部長の弟は小学生で俺は高校二年生。

 流石に男としての、後輩としてのプライドがあるんだ。


「そうか? 別にオレ、鷹臣とだったら一緒に風呂入れっけどなー」

「…………はい?」

「あ! 何ならこの後、一緒に汗流すか!?」

「部長ー!?」


 そんな俺の小さなプライドが。

 何気なく言った部長の一言で、いとも簡単に壊れようとしていた。

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