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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第二章 初々しい義妹の暴走

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第18話 「せんぱい、ドMなんスか?」

 幸か不幸かはさておいて。

 間接的に陸上部全員を巻き込んだ俺の浮気誤解騒動は、気づけば俺がバイセクシャルな日焼けフェチという話にすり替わっていた。

 どうしてそうなったと思う反面、やっぱり小夏を不安にさせて怒らせたのは俺だし、怒る小夏に悪い印象が向かなくて良かったとも思う。


 そんな、いつにも増して騒々しい部活が終わって――。


「――小夏、そろそろ……退いてくれないか?」

「嫌っス~!!」


 ――小夏が、俺の腕の中にすっぽりと納まっていた。

 夜、家のリビングにあるソファーの上で、後輩モードのままである。


「浮気したせんぱいは罰として、寝るまで可愛い可愛い後輩で彼女の小夏ちゃんをぎゅってしてくれないと駄目っス!!」

「……お、おぉ」


 俺の腕の中、そして俺の膝の上で、小夏がぷくっと頬を膨らませる。

 何故こんなことになっているかと言えば、俺が小夏を怒らせてしまったのももちろんだが、義母さんから仕事のトラブルで今日は帰れないと連絡があったからだ。

 いつもは夜遅くても義母さんが帰ってくるので小夏は家に帰るとすぐに素の大人しい義妹モードに戻るが、今日はその心配が無いので後輩のままだった。


 つまり。

 今、制服姿の、小夏が、俺の、膝の上、そして、俺の、腕に抱きしめられている。

 リビングで、ソファーで、二人きりで……!

 九月も終わり少しずつ涼しくなってきた夜にはちょうどいいぐらいの小夏のぬくもりと、とんでもなく柔らかい女の子の感触。

 そして後ろから抱きしめている事によって頭や首筋から凄くいい匂いがしている。


 こんなの、罰でも何でもなく……ただのご褒美だった。


「せんぱいは私のなんスから、他の女の子と喋っちゃ駄目っス!」

「……流石にそれは無理だ」

「それと日焼けしてる男の子にも喋っちゃ駄目っスよ~!」

「陸上部で誰とも話せないな!? ていうかそれは違うからな!?」


 新しく生まれた誤解をすぐに使ってくる。

 焦る気持ちと同時に、懐かしいとも思えた。

 小夏と付き合い……恋人になってからまだ一か月も経っていないが、こんな感じの先輩後輩としての賑やかなやり取りが減ってきていたからである。


 ……いや、恋人になった緊張や初々しさも最高なんだけど、それはそれとしてこういう俺達の今まで通りの日常を感じられるやり取りも大好きなんだ。

 

「じゃあ罰として、せんぱいはもっと強くぎゅーってするっス~!」

「……こ、こうか?」

「え、えへへぇ~、もっとっスよ~!」


 何だ、コイツ可愛すぎないか?

 後ろから抱きしめる俺の腕を小夏が掴む。

 俺の腕は小夏の腹部ではなく肩から前に回しているので、密着度はより高かった。

 しかもそんな俺に小夏が全身で寄りかかっているので、ぬくもりは更に倍になる。


 イチャイチャしてるだけな気がするけど、本当にこれが罰で良いのか……?


「な、なあ小夏……?」

「えへへ~、なんスか~?」


 上機嫌な小夏が、俺の腕の中で振り向く。

 クリっとした大きな瞳は、怒りを忘れて嬉しさで満ちていた。


「本当に、俺への罰、これで良いのか……?」

「……え? せんぱいって、ひょっとしてドM、なんスか?」

「違う!!」


 小夏が引いた。

 後ろから抱きしめさせておいて、酷い言いがかりだった。


「……誤解でお試しの頼みとは言え、小夏に相談せずに佳穂にあ~んをしたのは事実だ。小夏を不安にさせたんだし、償えるならもっとちゃんと償いたいんだ」

「…………今のでも、十分っスけど」

「けど?」


 かなり間をおいて、小夏が俯く。


「せんぱいが、良いのなら……」


 そうして掴んでいた俺の手を、もう一度、ぎゅっと握って。


「今日、一緒に、寝たいっス……」


 消え入りそうな声で、呟いたんだ。

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