表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第二章 初々しい義妹の暴走

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

第15話 『たっかおみく~ん、い~ますかっ!』

「たっかおみく~んっ! い~ますかっ!」


 その軽快でおっとりした声が聞こえたのは、昼休みに入ってすぐの事だった。

 突然の大声に俺はクラスメイトと一緒に教室の入り口を見ると、そこには見知った女子生徒が笑顔でキョロキョロと教室の中を見渡していた。


「え、誰……?」

「隣のクラスの綿引さんだよ、ほら陸上部マネージャーの……」

「マジで? 良いな、陸上部ってあんなに可愛いマネージャーいるのか……」

「だから陸上部の鷹臣を呼んでるのか……。え、普通に羨ましいんだけど……?」


 クラスメイト達が言うように、やってきたのは陸上部マネージャーの佳穂である。

 彼女は自分が注目されているのなんてまるで気にせず、ずっとニコニコしていた。


「あっ! いたいた~! お~い! たかおみく~んっ!」


 そんな明るさ全開な佳穂が俺を見つけると、そのまま堂々と教室に入ってきた。

 問答無用で違う教室に入ってくるその胆力は、見習うべき所があるかもしれない。


「デ~トしよ~ぜっ!」

「はぁ!?」


 だけどその口から飛び出したのはとんでもない爆弾発言で。

 有無を言わさずに俺を引っ張り、驚愕の視線が集まる教室を飛び出したのだった。


  ◆


「ありがとね鷹臣くん~! わざわざ呼び出しちゃってさ~!」

「呼び出したと言うか、連行されたんだけど……」


 場所は変わって、俺と佳穂は学生食堂にやってきていた。

 昼休みと言う事もあって食事をしている生徒は多く、彼女が俺の手を全力で引きながら陸上選手顔負けの速度で走らなければきっと座れなかっただろう。


「まあ募る話があったり無かったりするけどもぉ、とりあえず食べよぉ~?」

「あるのか無いのかどっちだよ……」

「もちろんあるんだけどねぇ。鷹臣くんが奢ってくれるって言うからぁ、今日の私はハッピーが溢れているんだよぉ」


 ハッピーが溢れるって何だろうか?

 だけどこの前の体育倉庫のアレコレで、真面目な彼女に倒れたライン引きの仕事を押し付けてしまったのも事実だった。だからここで借りを返せて喜んでもらえるのなら何よりである。

 だけどハッピーが溢れるって何だろうか?


「なるほどなるほどねぇ。こうやって小さな優しさを積み重ねていくのがぁ、モテる男の秘訣なんだねぇ~」

「モテるモテないは関係ないって言うか……いやそうだ! 何でさっきデートなんて言ったんだ!?」

「おぉ~、ノリツッコミも上手~!」


 佳穂が笑顔でパチパチと手を叩く。

 こうして話してみると佳穂は小夏とは違う意味で人を振り回す才能に長けていた。

 普段の佳穂は部長の突拍子の無い行動に巻き込まれているので、てっきり俺と同じで巻き込まれる側の人間だと思っていたのに……。


「鷹臣くんってぇ、小夏ちゃんとお付き合い始めたでしょ~?」

「……まあ、おかげさまで」

「だから私もぉ、鷹臣くんとお付き合いしてみようと思ってねぇ~」


 なるほど。

 俺が小夏と付き合ったから、佳穂は俺と付き合おうと。

 ……ん?


「お、お付き合い!? どうした佳穂、お前大丈夫か!?」

「え? あぁ~、違うよぉ! 鷹臣くんと本気でお付き合いするとかじゃなくてぇ、ただのお試しだから安心してよぉ~」

「お試しっ!?」


 何で訂正してもっと悪い方向に行くんだ!?

 え、こう見えて佳穂って実は超が付くレベルで遊んでるのか!?


 見た目ゆるふわでおっとりしてるのに!?


「そう、言わばぁ、昼休みに学食を奢ってもらうだけの関係みたいなぁ?」

「何だその関係!?」

「だからお試しだってばぁ~! 本気で小夏ちゃんから鷹臣くんを盗ろうとか思う訳ないじゃ~んっ!」

「……それは良かった。いや、良いのか?」


 やだなぁ~と笑いながら佳穂は紙パックのオレンジジュースを飲んでいる。

 佳穂が本気じゃないと分かったとは言え、まだまだ分からない事だらけだった。


「ただこうしてお話しながらご飯を食べてるだけだとねぇ、お友達とでも出来ちゃうでしょ~? だからこういうのはぁ、最初にデートって言うのが大事なんだよぉ」

「それはそうかもしれないけど、何でデートなんだ? しかも俺と……」

「私はねぇ、鷹臣くん。恋に恋してるんだよぉ」

「恋に……恋?」

「そうだよ~! 私は小夏ちゃんみたいにぃ、理想の恋をしてみたいんだぁ~」


 まるでサンタからプレゼントを待つ子供のような無邪気な笑顔。

 見た目ゆるふわ系マネージャーのゆるふわな発言は、俺の頭を混乱させていった。


「でもそれなら俺じゃなくても良くないか? 例えばほら、佳穂のクラスメイトとか陸上部の男子とか、俺以上に佳穂の事を知ってる人は多いだろ?」

「鷹臣くん……そこなんだよぉ~!」


 ここに来て初めて佳穂が表情を崩し、大きな溜息を吐いた。

 吐いた息を取り戻すように、オレンジジュースが入った紙パックがへこんでいく。


「私は恋をしたいけどぉ、理想の人がいないと言いますかぁ……」

「……いないと言うか?」

「下手に手伝ってもらってぇ、勘違いされたらやだなぁって……」

「……あぁ、うん」


 理解するのが嫌だけど、言いたい事はよく分かった。

 よく話してみるとこんな感じだけど、見た目だけなら佳穂はかなり可愛い……いや美少女と言って良いだろう。

 ウェーブのかかったセミロングの明るい茶髪に、垂れた目尻と眉が特徴的な可愛い顔、表情も豊かでおっとりしていて、身長は平均より高めだけど健康的な肉付きで、それこそ陸上部の女子と比較するとスタイルの良さが抜きん出ていた。


 見た目良し、性格も真面目でおっとりしていて、言葉を選べばユーモアがあり人を連行するような行動力もある。 

 そう言われると確かに、普通の男子だと本気で恋をしてしまうのかもしれない。


「なので小夏ちゃんラブな鷹臣くんがぁ、適役なんだぁ。よっ、理想の王子様ぁ~」

「……ひょっとして俺、都合の良い男認定されてない?」


 どうしよう。

 聞けば聞く程、断りたくなってくるんだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ