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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第一章 不器用な義兄妹の日常

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第14話 「せんぱい、大好きっス〜!」

 小夏と想いが通じ合った。

 言葉にすれば一言で済むのに、その間にかなりの紆余曲折があった。

 出会い、部活、日常、変化、同棲、夏休み、告白。


 長いようであっという間だった日々を経て、俺と小夏は――。


「と、いう訳で鷹臣せんぱいとお付き合いしてるっス~!!」

「……してます」


 ――放課後に陸上部全員がいる校庭で、恋人になったと報告をしていた。

 昨日の今日でいきなりすぎる、突然の発表だった。

 いつも練習後、ユニフォーム姿の小夏が急に大声で部員全員を呼び出したと思ったらそのまま俺の腕を組んで笑顔で言い放ったのである。


 男女問わず驚き言葉を失う陸上部。

 そして俺の腕を包んで離さない、小夏の大きな胸の感触。

 この勢いと衝撃は、昨日俺が小夏に告白をした時の仕返しかと思ったぐらいだ。


「わぁ~! 小夏ちゃんと鷹臣くん、おめでとぉ~! 二人ともすっごい仲良しだったもんねぇ~!!」

「佳穂ちゃん先輩! ありがとうっス~!!」


 そんな中で口を開いたのは、お喋り好きで苦労人なマネージャーの佳穂だった。

 彼女がパチパチと手を叩くと、それに続くように女子部員が賑やかになっていく。

 ありとあらゆる意味で上級生と下級生の架け橋になっている二年生マネージャーの底力を、こんなところで実感するとは思ってもいなかった。


「小夏やったねー! いっつも楠木先輩の事好き好きって言ってたもんねー!」

「でも急過ぎるよー! 言ってくれればもっと相談に乗ったのにー!」

「どっちから! どっちから告白したのー!」

「……せんぱいからっス」

「「「キャーッ!!」」」


 小夏がよく一緒にいる一年生の女子達が黄色い歓声を上げる。

 昨日の事を思い出す恥ずかしさと、俺のいない所でも俺の事を話していたのかと言う嬉しさが心の中で反復横跳びしていた。


「た、単刀直入に聞くけど……二人は何処まで進んでるのかなっ!?」

「……よく、お互いの部屋に行く間柄っス」

「わぁ~!!」


 嘘は言ってなかった。

 だって同じ家に住んでるから。

 恋人になる前から、義理の兄妹だったんだから当然だ。

 でもそれは他の部員達は知らないし、むしろその質問をした佳穂や他の部員にとっては、爆弾発言にしかならなかった。

 

「ちくしょう鷹臣……! いつの間に、全部かっさらいやがって……!」

「富、名声、走力、可愛い恋人……何なら持ってないんだお前は……!」

「足が速いとモテるってのはやっぱり間違いじゃなかったんだな……!」


 それに合わせて男子達も騒ぎ出す。

 女子達とは違って、何か視線が凄く怖かった。


「そ、それでそれで……! 小夏ちゃんは告白されて、なんて返したのっ!?」

「えへへ~!」

「こ、小夏……?」


 その間もお喋り好きな佳穂を筆頭とした女子達の質問が続いていた。

 それを聞いた小夏が可愛らしくはにかみ、抱いた俺の腕から離れていく。

 

 俺は猛烈に嫌な予感がして――。


「せんぱい、大好きっス~!!」

「またかお前ぇっ!?」


 ――昨日に引き続き、小夏に飛びつき、抱きつかれる。

 それを見ていた部員達からは、今日一番の黄色い悲鳴が上がるのだった。


  ◆


 ガコンと軽快な音がする。

 昇降口に置かれた自動販売機から、缶ジュースが出てきた音だった。


「ほれ、今日の主役!」

「……あざっす」


 出てきた缶ジュースを、今日も部長は俺に投げる。

 練習以上に疲弊した心と体を、よく冷えた甘いジュースが癒してくれる気がした。


「まさか鷹臣の妹が楽々浦だったとはなー!」

「すみません、黙ってて……」

「いんや? 流石のオレでも複雑な事情があるって分かるぞ! あ、今度からはオレも小夏って呼ばないとややこしくなるのか!?」

「……俺達の両親がまだ籍を入れてないので、そのままでお願いします。流石に恋人だけじゃなくて義理の家族まで話が広まっちゃうと、アレなので」

「それもそうだな! 何はともあれ、お疲れさん!」

「あざっす」


 ニカッと満面の笑みを浮かべた部長と俺が缶ジュースで乾杯をする。

 確かにさっきまで大変な目にあったけど、部長のアドバイスが無ければ俺はきっとまだウジウジしていたと思うから、本当に感謝だ。


「なんか解決したにしては落ち着いてんなー! ハッ!? まさかそれが大人の階段を上った奴の余裕なのか!?」

「ち、違いますよ!!」


 だからって急に下ネタをぶっこんでくるのはやめてほしい。

 佳穂を筆頭とした女子にお祝いと称して連行された小夏がいたら絶対に誤解されていた事だろう。


「……確かに、部長のおかげで小夏と恋人にはなれました。でもまだ、俺達の両親には言ってないんです。二人とも仕事が忙しいし、俺達をずっと育ててくれたので、その二人の新しい幸せを邪魔しちゃう気がして……」

「複雑な事情過ぎてコメントに困るな! でもまた悩んで動けなくなったらオレの所来いよ? また尻を叩いてやっから!」

「……お手柔らかに頼みます」

「おう!」


 本当に太陽みたいな人だった。

 昔から知っているけれど、改めてこの人の凄さを実感する。

 

「しかし鷹臣の好みが楽々浦みたいな子だったとはなー! 意外も意外でめちゃくちゃ驚いたぜ!」

「……そうっすか?」

「そりゃそうだろ! 確かに胸のデカさじゃ負けるけどよー……俺と楽々浦、見た目は似てんじゃん?」


 自信満々に部長はニヤリと笑う。

 その日焼けした顔の不敵な笑みは、確かに小夏とよく似ていた。


「自分でそれ言うんすか……」

「いーだろ別に! 男女とか関係なくさ、可愛い可愛い後輩が頑張ったのなら、一緒に喜んでやるのがカッコいいセンパイの役目ってやつだしな!!」


 一気に飲み干された空き缶が放物線上に飛んでいく。

 それが綺麗にゴミ箱に入ると、部長は嬉しそうに微笑んだ。


「何はともあれ、楽々浦を泣かせんじゃねーぞ、鷹臣!」

「……うっす」


 そうしてまた昨日のように、握りこぶしを突き出してくる。

 今度は俺もそれに合わせて、お互いに握りこぶしを突き合わせる。


「もし泣かせたらその時は、今度は佳穂に代わって女子部員代表としてお前を殴りにいってやっからさ!」

「女子代表とか関係なく、陸上部の部長でしょ先輩は……」

「……それもそうだな!」


 マンガとかで男同士が友情を確かめるようなやり取り。

 それを男女でやっているのをあまり見ないけれど、部長には関係ない。

 陸上部部長、緑川(みどりかわ)くるみ先輩は、昔から男女問わず誰にでも真っ直ぐな人だったんだ。

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