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俺に懐いていた日焼けボーイッシュな後輩が、健気でしおらしい義理の妹になってしまった  作者: ゆめいげつ
第一章 不器用な義兄妹の日常

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第10話 「おにいちゃん、ご、ごちそうさま!」

「ふああぁぁっ!?」


 小夏が悲鳴と共にビクッとする。

 夜、リビングで夕食を食べる時にソースを取ろうとして、お互いの手が偶然触れ合ったからだ。


「あっ、すまん……」

「うっ、ううううううううん!? だっ、だだだだだだっ大丈夫、だよ……!?」


 俺が触れてしまった手をもう片方の手で押さえた小夏が顔を真っ赤にして首をブンブンと横に振る。

 その姿はちっとも大丈夫には見えなかった。


「そ、そうか……? あの後から、様子が変だけど……」

「そっー! そんなことぉ……ない、よぉ……!?」


 そんな事しかないのである。

 放課後、体育倉庫で隠れて抱き合って以降、小夏の様子が変なのだ。

 気づくとずっと上の空なのに、俺が話しかけたり近づくと過剰に反応する。


 これで何も無いと思える方がおかしかった。


「わ、わわわわわっ私! し、宿題、あるから! ごごごっ、ごちそうさまっ!!」

「あっ、こ、小夏っ!?」


 凄い勢いで食事を終わらせた小夏が食器を片付けてリビングを飛び出していく。

 義妹モードでは初めて見る勢いの早食。

 仕事でいつも義母さんがいたら絶対にやらない、後輩の時のような周りを一切気にしない食べ方だった。


「小夏……」


 リビングに取り残された俺は一人呟く。

 いつも同時にごちそうさまをするから、久しぶりの寂しい食卓になってしまった。

 

「理由はやっぱり、体育倉庫だよなぁ……」


 流石の俺でも理由に察しはつく。

 体育倉庫で小夏と抱きしめ合ったからだろう。

 そしてその後に、入ってきたマネージャーの佳穂から隠れる為に抱きかかえた。

 アレは不可抗力とは言え、結構無理やりだったなと反省だ。


 だけどこの時は、明日には元通りになっていると……そう思っていたんだ。


  ◆


「こな――」

「せ、せんぱい!? さ、先に行くっス~!!」

「――つぅ!?」


 朝。

 俺が部屋を出た瞬間に制服姿の小夏と鉢合わせたと思ったら、逃げるように階段を駆け下りてそのまま家を飛び出してしまった。

 昨日の夜に引き続き、一人ぼっちの寂しい朝食だった。


「……あ、楽々(ささ)う」

「あーっ! 教室に忘れ物しちゃったっス~!!」

「ら……」


 昼。

 移動教室の時に廊下ですれ違うかと思った瞬間に、小夏が急に大声を出し反転してそのまま廊下を走り去っていく。

 走ってはいけない廊下で、それはもう見事なまでの全力疾走だった。


「……なあ、こなつ」

「っ!? わ、私教室に忘れ物しちゃったっス~!!」

「いや、流石に連続は無いだろ……」


 放課後。

 部活練習の隙を見つけて話しかけた途端、昼休みとまるっきり同じ理由で逃げられてしまった。

 そう、俺は小夏に逃げられたんだ。


  ◆


「はぁ……」


 小夏に完全に避けられている。

 それを理解した俺のコンディションと言うかモチベーションは最悪だった。

 やっぱり昨日無理やり抱きしめて隠れたのは失敗だったと言うか、本当は嫌だったのかもしれない。

 頑張るって言ってくれて勇気も出してくれたのに、俺が隠れたのがいけなかった。

 そんな自責の念が胸の中で渦巻いていく。


「そりゃあ……先に帰るよな」


 部活が終わり、やっぱり小夏は先に帰っていた。

 俺達はいつもは着替える時間をわざと遅らせて一緒に下校していたので、帰り道も一人ぼっちになってしまった。


「…………」


 小夏がいるのに、いない生活。

 夏休み前、いや二年生になるまでは当たり前だったのに、今は文字通りぽっかり胸に大きな穴が空いたようだった。


「……帰るか」


 小夏が避けているのなら、俺は小夏を尊重したい。

 ずっと家では良い子として生きてきた小夏が他者を、俺を自分の意志で避けているのなら、義兄である俺はそれを叶えてやるのが正しいと思った。


「はぁ……」


 だけどやっぱり、辛い。

 好きな人に避けられるのは、想像以上に苦しかった。

 このまま帰っても、気まずい生活がまだ続くのだろう――。


「たーかーおーみー! 何さっきからずっと辛気臭い顔してんだコラぁー!!」

「うおおっ!?」


 ――そう、思っていた。

 背後から突然現れた部長が、思いっきり俺の後頭部をひっぱたいてくるまでは。

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