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47話 今よりも先のことを

「2000って、そんな数どうすれば……」


 敵の増援が続きに続いていた結果、今稼働できるCAは全体の3分の1にまで減ってしまっている。

 それに加え、先ほどの戦闘でも弾薬を節約するために近距離戦闘を行うほど、補給できる物資の数の底は見えてきてしまっている。

 

『まさかこんなことになるなんてね……。悪いんだけど、君たちもちょっと覚悟を決めて――』

『全員聞こえるな。それでは今回の作戦を伝える』


 滝川さんの言葉を遮り、モニターに一条司令が映し出された。


『全軍、これより東京…市ヶ谷と横田へ撤退する』

「――!?」


 全軍撤退って……まさかここを放棄するってことなのか!?


『パイロットの諸君は各隊長に従い、輸送機が安全に飛び立つまでの時間稼ぎを、その後各自先ほど言った2箇所へ撤退。他の者たちは機密情報等を持ち輸送機へと向かうように。……個人個人思うところはあるだろうが、今は速やかに指示に従ってほしい。以上』


 モニターが消えると、コックピット内には長い静寂に包まれた。

 ここで多少無理をして、仮に死んだとしてもまたやり直すことはできる。


 ただ、今回の襲撃は前回になかった以上、これよりも状況がさらに悪化してしまう可能性もあるため、慎重にことを運ばなければいけない。


 しばらく沈黙が続いたあと、この隊の共有モニターが映し出される。


『2人とも、聞いていたね』

『「はい」』

『それじゃあ私たちの隊の作戦を発表するね。私たち、いや、君たち2人は――




 このまま東京方面へ撤退。間違っても絶対前線には来ちゃダメ』


 ……え?

 細石も滝川さんの言うことを想定していなかったのか完全にフリーズしている。


「た、滝川さん、それだと司令の命令とは違うんじゃあ……」

『うん、そうだね』


ワンテンポ遅れて細石も会話に加わる。

 

『俺もその作戦……命令には反対です。ただでさえCAが少なくなってるって言うのに、これじゃあ他の人たちが撤退するまで持たないかもしれません!』

「そうですよ!まだぺーぺーの新米ですが、俺たちだって多少腕に自信はあります!」


『だからだよ』


 意味がわからない。

 何がだからなのだろうか。

 俺たちの腕を見込んでくれているのなら、前線と言わなくとも支援、補助役くらいは任せてくれてもいいじゃないか。


『2人の言いたいことはよくわかるよ。でも、それでもダメだ』


 滝川さんが俺たちの主張をわかったのだとしても、俺には滝川さんの真意はさっぱりわからない。


「全然あなたの言っていることがわかりませんよ!俺たちだって――」

『もう!面倒だな!君たちはただ言われたことに従ってればいいのに!』


 悶々とした気持ちがつい溢れてしまい、声を張り上げてしまったが、まさかキレられるとは思わず少したじろいでしまう。

 細石も驚いたのか、何か言おうと開けていた口をゆっくりと閉じていく。


『いい?今回は数が数なの。一瞬の判断ミスで簡単に死んじゃうわけ、わかる?』

「そんなのとっくに覚悟して――」

『そんな覚悟してるかどうかなんて関係ない。この襲撃が起こるまで実戦経験のなかった新米パイロットじゃあここからは足手纏いになる。はっきり言って邪魔でしかないの』


 わかってる、わかってるさ。


 今回は今までと比べ物にならないくらい数が違う。

 1対1、もしくは2、3くらいならなんとかなるが、そんな数では済まないだろう。

 簡単に死んでしまう確率の方が高い。

 

 でもだからと言ってこのまま俺たちだけ先に逃げるのは嫌だった。

 他のみんなが必死に戦っている中、安全圏で待っているだけなんて耐えられない。


『ハァ……納得いかないって顔だね。今の言葉にキレてそのまま行ってくれたら良かったのに』


 これ以上言うのを諦めた。

 そんな仕草を彼女はしているように見えた。

 

「じゃあ俺たちも――」

『でもダメで〜す。君たちの実力はよくわかってるよ。だからこそ、君たちをここで死なせるわけには行かないの』


 彼女の口調が少し和らぐ。


『君たちなら少し練習を重ねれば簡単に私、なんなら第0小隊に伊田大佐って言う化け物がいるんだけど、そこらよりも絶対に強くなるのは目に見えてるからね。今よりも未来のことを考えて行動しなさい』


 たしかに、滝川さんの言うとおり、この戦いで終わりというわけではない。

 敵のことが全くわかっていない以上、これがいつまで続くのか誰も知り得ないのが現状だ。


『廻人、滝川さんの言ってることは悔しいけど正しい。今は指示に従わざるを得ないんじゃないか?』

「……クソッ、わかったよ」

『初めっからそうしてくれたらね〜。私ってこんな役回りのキャラじゃないのに』


 滝川さんが最初から細かく言ってこなかったのは、俺たちに余計な荷を負わせなくなかったからなのかもしれない。

 ただ、面倒だった可能性も若干ありそうな気はするが……。


「余計に突っかかってすみませんでした」

『わかったならよろしい。それじゃ、後は私たちに任せてとっとと行きな』

「はい。……後で必ず会いましょう」

『大丈夫だって!こんなところで私が死ぬわけないじゃないか!』


 声のトーンが低い俺に気がつき、余計な心配をさせないようにしているのか、笑みをこちらに向けている。


『先に行ってます……ご武運を』

『おぉ、かっこいい〜。また今度同じ隊になったら聞かせてもらおうかね』


 軽く細石をおちょくると、モニターが消えてしまった。


 赤い大和の方を向くと、どこでそんな操作を覚えたのかわからないが、こちらに向かってサムズアップをしている。


 俺たちは彼女に背を向け、戦線から離脱して行った。

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