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46話 センス

『思ったよりも簡単だな』


 そう口にしたのは、今回が初搭乗となる細石だった。

 滝川さん、俺に続いて出撃した彼は、初めは機体がふらついていたものの、しばらくすれば俺と遜色なく乗りこなしていた。


「まだ簡単な動きだけだからな。戦闘になったらこうはいかねぇぞ」

『ふ〜ん。でもなんかどうとでもなりそうだな』


 昔から彼は初めてやる物事に適応するのが早かった。

 新作のゲームを一緒に遊んだ時や、授業の実習で同じ班になった時にどれほど彼のセンスを羨ましがったことか。


「俺もあんだけセンスがあればな……」

「カイちゃんはいつも下手だったもんね」


 こいつ……、吐くまで機体を揺らしまくってやろうか。

 細石はできるだけ笑いを堪えようとしているのだろうが、抑えきれず漏れた笑い声がこちらまで聞こえてきている。


『私からしたら神谷君も十分化け物レベルにはあると思うけどね〜。そんな悲観しなさんな。』

「ほら、お前ら聞いたか?滝川さんもこう言ってくれてんだぞ!」

『別に俺はなんも言ってねぇよ』

『おっと、おしゃべりはここまでにしよう。レーダーに敵の反応が出てきた』

 

俺のレーダーにも敵を指す赤いマークがちらほら出てきている。


『私らは片っ端から敵を排除していく係だからね。ここからは各自分かれて好きなだけ暴れてやりな!』


『「はい!」』


 指示を出した滝川さんは、ものすごい音と衝撃波を残して赤い機体とともに消えて行った。

 

「よ〜し、頑張るぞー!」

「お前は大人しく座ってるだけだぞ。細石、俺は慣れるまでしばらく一緒にいてやるから、怖くなっても心配すんなよ」

『おう、お前こそビビって漏らしたら加賀美さんに嫌われるんだから気をつけろよ』


 2人して軽口を叩き合い、敵を示す場所へと向かって行った。

 

 

 ――

 ――――


「しばらく俺がサポートするから、細石は好きなように動いていいぞ」


 偉そうに言ってみたはいいが、実際俺もそこまで実戦経験があるわけではない。

 むしろ誰かベテランの人に横についていてもらった方がいいくらいの新人だ。


『わかった。もし倒しきれなかったやつがいたりしたら、そっちは任せる』


 そう言うと細石は敵に向かって行く。

 少し離れたところにいるセージを倒しつつ、いつでも細石の援護をできるように身構えておく。


「おいおい、あいつ本当にセンスいいな」


 1体目を降下しながら撃ち抜くと、着地と同時に2体目、3体目を刀で斬り倒していく。

 まるで何回も戦ったことのあるような、軽やかな動きで敵を次々に倒す。


『この辺りの化け物は全部倒したぜ。案外簡単なんだな』

「お、おう。お疲れ……」


 こいつヤバすぎるだろ。

 俺が離れた敵を倒している間に、気がつくと近くにいるセージを全滅させやがった。


 凄まじいセンスを見せる彼に少し引いていると、上空から赤い大和が降りてきた。


『早いね〜。もうこの辺りの敵を倒しちゃったんだ』


 降りてきた彼女の大和は、敵の返り血で赤みが増していた。どんな戦い方をしたらここまで血で染まるんやら。


「お疲れ様です、滝川さん」

『お疲れ様です』

『2人共おつかれ〜。今避難者たちを別の場所に移動させてる最中だから、もう少し頑張って……って言う必要もないか。少し見てたけど、新人とは思えない動きだったし』


 そんなこともないっすよ、と謙遜したが、実のところ俺の鼻はニョキニョキと伸びていた。



 

 ――どれくらい時間が経っただろう。

 

 敵の出現が報告されるたびに俺たちはそこへと向かった。

 一般人の避難はとっくに完了したが、敵が次々に出現してくるため終わりが見えない。


 補給をするたびに万全の状態になる機体と反して、俺と細石は疲労のせいか口数が減ってきていた。

 対して滝川さんはハイテンションのまんま敵を葬り続けている。

 薬物でもやってるんじゃないのだろうか。


 3度目の補給を終え、敵のマーカーに向かおうした時だった。

 全体通信が突如として入ってくる。


『き、緊急事態です。本日できた大穴と、先日できた大穴から敵の出現を確認。双方合わせて――約2000です』


 味方の被害は今のところ少ない。

 しかし、戦闘が絶えず続いている今、俺たちの心を折るには十分すぎる数だった。

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