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43話 タイムリミット

「ふぅ……」


 訓練を一通り終え、シャワーを済ませた俺は、コーヒーを片手にこれからの流れを思い起こしていた。


「たしかこの後は、細石と父さんと話して、飯食って寝たらもう司令室に連れて行かれるのか……。どう考えても時間が足りねぇな」


 事前に父の耳にセージが向かってくることを伝えるべきか迷ったが、現状ソースが全くないため断念した。


 細石なら何とか事情を話せば手を貸してくれる可能性もありそうなのだが、まだ軍人でもなんでもない彼を今日中にパイロットにしてもらうのは現実的ではない。

 誰かの手を借りるのは現時点でかなり難しく、自分1人でどうにかするしかない。


 とはいえ、今できることは自分の腕を磨くことぐらいしか出来ないのがとても歯がゆい。

 

「あ、あとは春乃とのキスがセーブ地点になってるのも確認してぇな。……いや、もし仮にその説が正しかったら、次のループの時はもっと時間が少なくなるのか」


 現在の時刻は午後6時近く。

 伊田大佐が部屋に呼びにくるのは午後11時辺りのため、使える時間は約5時間しかない。


「流石にループ後に5時間しかないのは避けてぇな。クソッ、セージ共を追い払うまで試すのはお預けだな」

 

 空になったコーヒーをゴミ箱に投げ入れ、部屋へと向かおうとした時だった。


 ドン、と突き上げるような揺れが俺を襲った。

 この揺れを俺は何度も経験したことがある。


 ――そう、セージが大穴を作ったときだ


 

「――は!?待て待て待て、俺はこんなの知らねぇぞ!」


 凄まじい揺れの中必死に足を動かし、春乃を探しに向かう。

 前回の感じからして、今彼女は自室から食堂の間のどこかにいるはずだ。

 幸い今いる位置は食堂に近く、見つけるのはそこまで大変ではないだろうと考え、急いで食堂へと向かった。


 

 前回よりも揺れが早く収まったことにより走れるようになった俺は、食堂に到着したものの春乃の姿は見えない。


「もう、部屋に向かっちまったのか?」


 早く彼女を見つけなければと焦る気持ちを抑え、再度走り始めたが、角を曲がってきた人物に気が付かず正面衝突してしまった。


「――きゃっ!」

「あ、すみません、早川少尉。今急いでいるんで、今度何か奢りますね!」

 

 1分1秒が惜しいので、軽い謝罪をしすぐにその場を立ち去る。


「びっくりした……。あれ?私の名前なんで知ってるんだろ?」


 普段なら追いかけてシメていたところだが、そんなことよりも、自身の名前を初対面の人がなぜ知っていたのかという疑問が勝り、彼女はただ静かに、遠ざかっていく背中を見つめることしかできなかった。


 

 ――

 ――――

 

「収まった……?」


 自分と廻人の食事を運んでいる最中、轟音と共に揺れが春乃を襲った。

 持っていた食事は全て床に散乱してしまったが、そんなことを気にしている余裕は今はない。


「今のって、あの時と同じ揺れだよね?」


 ここも化け物に襲われるかもしれない。

 そう考えているだけで恐怖で体が萎縮してしまう。


「ここも安全じゃなくなるのかなぁ。……とりあえず部屋に戻ってれば、カイちゃんも戻ってくるよね!」


 廻人と合流することが最優先だと考え、震える足をなんとか動かし部屋へと向かい始めた。



 ――

 ――――

 

「……ハァ、ハァ。道間違えちゃったせいで時間かかっちゃったな。カイちゃんとすれ違いになってなければいいんだけど」


 部屋に入ろうとドアノブに手をかけたところで、少し離れたところから声をかけられた。


「加賀美さん、大丈夫だったか?」

「――!細石くん、私は大丈夫だよ。それよりもカイちゃん見なかった?」

「いや、見てないな。アイツとちょっと話がしたくてこの辺りに来たんだが、さっきの揺れでそれどころじゃなさそうだな」


 細石が見てないのなら、まだ部屋には来てないのだろう。

 ここで話していてもいいが、一旦部屋に入り、2人で廻人が来るのを待つ。

 

 数分後、彼がくるよりも先に、何やら外が騒がしくなってきていることに気がついた。


「なんか騒がしくなってねぇか?ちょっと外を見てくるわ」

「あ……うん、気をつけてね」

 

 細石が廊下へ出ようとドアに近づくと、それよりも早く、ドアが勢いよく開けられた。


「春乃!……と細石もいたのか。ちょうどいい、今すぐここから逃げるぞ!」

 

 慣れ親しんだ声を聞き、さっきまで不安でいっぱいだった心が少しずつ落ち着いていく。

 

「カイちゃん!無事で良かった〜」

「カイ、また化け物が襲ってくるってことで合ってるよな?」


 細石のその問いを聞き、廻人の表情が少し強張った。

 そして、問いに答えるべく、真一文字にしていた口が開かれる。


「いや、襲ってくるって言うよりも、もうすでにここは襲撃されてる」

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