41話 成功か、失敗か
『大丈夫か?神谷二等兵』
死を覚悟した俺の窮地を救ったのは伊田大佐だった。
「はい、期待には特にダメージはないです」
『ならよかった。……それじゃあセージも倒し終えたようだし、一度下がろうか』
セージとの実戦経験があるのは承知しているが、それでもあの状況に晒されてなお、落ち着き払っている彼に、俺は少し恐怖を感じていた。
――
――――
来た道を少し戻り、生き残った者たちで部隊を再編成することとなった。
1部隊強の犠牲が出たことにより、第0小隊を含め2部隊分にしかならず、指揮を取れるものが2名とも亡くなってしまったことで、代役として香山中尉が嶋田少佐と共に1部隊を率いることとなった。
伊田大佐が率いる第0小隊には、俺が助けたパイロットが加わったものの、機体はすでに使い物にならないため、早川少尉の機体に同乗することとなった。
辺りを警戒しながら、しばらくの間作戦のすり合わせを行なっていると、前線にいる部隊から爆弾の設置が無事完了したことを告げられた。
報告してきたのは最前線の部隊を指揮している父であり、聞き慣れた声を耳にしたこと、それにより無事を確認できたことで俺は胸を撫で下ろす。
敵の奇襲が懸念されるが、爆弾さえ爆発させられればだいぶこの状況も和らいでいくだろう。
そう信じて俺はその時が来るのを大人しく待っていることにした。
――
――――
爆弾の設置から2時間ほど経過した。
最前線の部隊のモニターが共有され、セージの進行状況が目視出来るようになった。
敵の本軍が指定ポイントに到達するまで、目と鼻の先に迫って来ている。
かと言って、奇襲を警戒する以外に何か俺に出来るわけではない。
――もどかしい。
敵が近づいてくるにつれ、辺りが緊迫感で覆われる。
後数十秒でこの作戦の全てが決まると思うと、俺はモニターを直視することが出来なかった。
乱れて来た呼吸を鎮めるため、作戦が成功するよう願いながら両目を閉じる。
祈る。
――神様、今回だけ、今回だけは成功させてくれ。
祈る。
――俺の運を全部持ってっていいから。
祈る。
――爆発さえすれば、後は俺たちで頑張るから。
祈る。
――これさえ終われば、また春乃に――。
――
――――
急に俺の体に強い衝撃と、唇に何か柔らかい感触が押し付けられた。
何かとぶつかって転んだような、そんな感覚だ。
驚いて目を開けると、そこにはいないはずの春乃の顔があった。
「――は?」
突然のことに脳内の処理が追いつかない。
それは彼女と唇が重なったからではなく、なぜか戻されたからだ。
それも春乃とのファーストキスハプニングがあったあの場所へ。
「ご、ごめんね!?……あ、カイちゃんのお父しゃんが部屋に来てりゅから!じゃあね!」
噛み噛みに喋りつつ、彼女は走り去ってしまった。
未だ状況を把握しきれない俺を残して。




