39話 奇襲
第0小隊が機体を反転させ、後方へと向かう中、俺は突然の出来事に固まってしまっていた。
「おい、神谷二等兵。ボーッと突っ立ってないで動け!」
「す、すみません」
「俺らの隊はこれから退路の確保に行く。このままだと挟まれちまうからな。とにかく敵を倒しまくれ!」
「はい!」
香山中尉の後ろを着いていく。
道中、2つの小隊と合流し、作戦の共有を行う。
伊田大佐の状況判断は早く、本部からの通達が来るよりも先に、他の隊全てに作戦の変更を伝えていた。
前方にいる小隊は爆弾を設置したのちに、入り口まで退却、残りの後方にいる部隊全てで退路の確保を行う。
大穴内での敵本隊との戦闘は避け、爆発後に入り口から出てきた残党を殲滅するように変更された。
ただ1つ難点がある。
一方だけで済む大穴内と違い、入り口全体を見張る必要があるため、撃ち漏らしが出るとそこから崩れてしまい、最悪の場合大量のセージが横浜に解き放たれてしまうこととなる。
全体へ作戦を伝え終わる頃には、セージの発生地点にかなり近づいていた。
敵の進行スピードにもよるが、早ければもう戦闘になる可能性がある。
進んでいくに連れ、心臓の鼓動が速くなっていくのがわかる。
しかし、進んでも進んでも敵は現れず、気がつくと出現地点まで来てしまっていた。
『おいおい、もうここは出現地点だろう?一体たりともすれ違ってねぇぞ!?』
『香山中尉、少し落ち着いて。……でも、本部からも敵が入り口に向かっているといった情報は入ってきてないし、一体どこへ……?』
一本道の大穴で、隠れる場所などどこにもないはずだ。
考えても何も浮かばず、全員が不思議に思っている中、ポツリと早川少尉がこぼした。
『……なんでいつも急に出て来るんだろう。探知出来るんなら、ある程度の距離に入ればわかるはずなのに……』
この言葉に俺は引っかかった。
今回の侵攻は半日以上前から気づいていた、と言うことは、かなりの距離まで探知ができるということだ。
それなのに、つい先程の奇襲には気が付いていない。
そもそもどこから出てきたのだろうか。
考えているうちに、俺は1つの仮説に辿り着く。
それを確かめるために、伊田大佐に1つ質問を投げかけた。
「伊田大佐、今までセージを探知できた時って、もしかして入り口に敵が来てからですか?」
『おそらくそうだ。本部が探知してるから細かい場所はわからないけれど、戦闘地点等から逆算すればその通りだと思うよ』
予想が的中したかもしれない。
俺はその予想を伝えるべく通信を開こうとした時、背後の壁から何か鈍い音が聞こえた気がした。
咄嗟に距離を取ったものの、何も変化が起きない。
『神谷二等兵、どうした?』
何か起きたのかと伊田大佐が問いかけてくる。
「背後から何か音が聞こえた気がして……」
『壁の中……。――!総員、警戒態勢に移れ。できるだけ壁から離れて中央に寄るように!』
伊田大佐も何か考えついたのか、近くにいる小隊全てに指示を飛ばす。
全員が中央で円を描くような陣形を組むと、全体通信が入ってきた。
『諸君、敵は壁の中を移動している。それもなんらかの方法でステルス状態になっている可能性が高い。そういう個体なのか、はたまた何かを利用しているのかはわからないが、とにかく壁から距離を取り、頭上や下も注意してくれ』
伊田大佐の言っていることは、俺の考えと全く同じだ。
これなら探知に引っかからないため、ギリギリまで敵の存在に気が付かなくてもおかしくない。
不穏な空気が漂う中、コン、コン、と機体に何かが当たる音が聞こえてくる。
「これは……小石?」
『みんな、上だ!』
上を向くと、セージが俺たちに襲い掛かろうと降って来る最中だった。
レーダーにはいつの間にか、数多の敵が表示されていた。
作者体調不良により、先週の更新が出来ませんでした。
今週からまた更新していきますので、よろしくお願いいたします!




