36話 憧れ
「これが米軍のCA イーグルか……」
午前10:00を過ぎた頃、米軍からのCAが到着した。
事前にはCAの提供と一般市民の避難のみと聞いていたが、以前からこの軍事施設と連携をとっていた米軍から、いくつかの部隊が共に戦いたいとのことで援軍に来てくれたらしい。
そして、目の前にある米国の新型CA イーグル、他の小隊には米軍で一般的に扱われているスターズが届けられた。
前者は圧倒的な機動力で速やかに鎮圧させることを目的とし、後者は日本のCA 大和の元となっていることもあり、機能性はかなり高水準にある。
日本も性能を落とせばもう少し大和を量産出来ていたらしいのだが、開発者が完璧主義者だったこともあり、中々増やすことが難しかったようだ。
しばらくイーグルを見上げていた俺は、背後から声をかけられるまでその存在に気が付かなかった。
「どうだ、お気に召したかな?」
「――伊田大佐!」
振り返るとそこにいたのは、俺が所属することになった第0小隊の隊長だった。
「あはは、驚かせちゃったかな」
「まぁ……少しだけ。それより、良いんですか?米軍の新型を俺みたいなペーペーパイロットなんかが使っちゃっても……」
そう、他の人の方が俺なんかよりも使いこなせるはずだ。ましてや実践経験もない、まともに動かしたのも2回ぽっち。そんな初心者同然の俺が、米軍のとはいえ新型なんか乗っていたら顰蹙を買うんじゃないか。
そんな不安をまるでお見通しかのように伊田大佐は俺に語りかける。
「君の心配もよくわかるよ。でも、君の練習場での動きを見ていたら、この機体にピッタリだと思ってね。一条司令に無理言ってこちらに回してもらったんだ」
「で、でも、大和しか操作したことないですし、期待に答えれるかどうか……」
「大丈夫。今この世界にある大半のCAはコックピットが同じに作られてる。一部例外があるとはいえ、イーグルは大和と同じだからどうにかなるよ。……機体の特徴は全く違うから慣れる必要があるけどね」
伊田大佐の期待に少し怖気付いてしまったものの、彼の言葉を聞いているうちに安心感を得ているような気がする。
期待に応えたい、そう思えるような雰囲気を醸し出す彼に、俺は初めて憧れを抱いた。
自分との違いに少し恥ずかしくなってきたため、コックピットへと入ろうとすると、再度、伊田大佐から声をかけられた。
「あんまり気負いすぎるなよ。……大丈夫、君の実力は僕が一番評価してる」
そう言うと彼は親指を立て、爽やかな笑顔を俺に向けた。もし、自分が女だったら惚れていただろう。
「はい、ありがとうございます!」
「よし!じゃあ、第0小隊全員が乗り次第、最終確認を行う。先に乗って待っててくれ」
「了解」
12時まで残り1時間弱、俺の初陣はすぐそこにまで迫ってきていた。




