34話 不安と決意
「……ではこれにてこの場を一度解散する。各隊の指揮官は明日の作戦についての話し合いを行うため、この場に残るように。残りの者は明日の12:00〈ヒトフタマルマル〉までになすべきことを済ませ、出撃準備を終わらせておくように。以上、解散」
そう言い終わるや否や、ここに集まっていた人たちは一斉に移動し始めた。
時刻はすでに0時を超えているため、半日程度しか時間は残されていない。
明日の自分の役割について父の指示を受けようと辺りを見回すものの、その姿は一向に見つからない。もしかすると、すでに他の場所へ移動してしまったのだろうか。
そう考えていると、不意に俺の後ろから声をかけられた。
「よう、神谷二等兵だよな。俺は第0小隊所属の香山 夏来中尉だ。伊田大佐と神谷中佐の命で神谷二等兵にCAや明日の作戦についてザッと教えることになった。ま、よろしくな」
赤銅色の肌に金髪のオールバックをした軍人が、軍にそぐわない飄々とした態度で自己紹介を始めた。
「私は神谷廻人二等兵です。こちらこそ、よろしくお願いします」
「そんじゃ、早速行こうか……と言いたいとこなんだけど、お前さん幼馴染の子がいるんだよな」
「……?はい、そうですけど」
――俺に紹介しろだなんて言い始めるんじゃないだろうな。
その風貌と態度から変なことを勘繰っていたが、その疑いはすぐに払拭された。
「一目見に行ってきていいぞ。その後、パイロットスーツに着替えてハンガーに来てくれや」
「え……でも、時間が――」
「いいんだよ。まぁ、つっても寝てるだろうから本当に見るだけになっちまうがな。……それでもあの時一目見ていれば、なんて後悔したくねぇだろ?」
「――!ありがとうございます。終わったらすぐに、着替えてハンガーに向かいます」
「おぅ!そんじゃ、とっとと行ってこい!」
そう言い終わると同時に、俺は春乃のいる部屋へと向かい始めた。
――
――――
音を立てないようにドアを開ける。
忍び込むように慎重に部屋へと入り込むと、彼女はスースー、と寝息をたてながらぐっすりと眠っていた。
「幸せそうに寝てんな。明日起きたらめちゃくちゃ驚くんだろうな。……必ず、必ず帰ってくるから安全なところで待っててくれ」
小声でそう誓い部屋を出ようとする俺に、寝ているはずの春乃が声をかけてきた。
「カイちゃん……死んじゃダメだよ……」
驚いて振り返ったものの、彼女が起きている気配は全くない。
「なんだ、寝言か。……大丈夫、お前を置いて死ぬつもりはないし、最悪戻ってやり直せるからな。……あそこまでまた戻されんのか?それもそれできっついな」
帰り道からのやり直しはもうごめんだ、と思う気持ちと、絶対に彼女を置いて死にはしないという決意を胸に、俺は部屋を後にした。




