29話 負けず嫌い
パイロットスーツに着替えたあと、格納庫へとやって来た俺は、父からの指示ですぐにCAに搭乗することとなった。
――あれが父さんの機体か。
俺の乗る機体と異なっている点は、背中に付いている謎のバックパックだ。
父の機体を眺めてすぐ、自分のコックピットへと入る。
練習場へと移動し、しばらく指示を待っていると、父からの通信が入って来た。
『カイ、聞こえるな。お前の技能は事前に佐倉大尉から聞いている。早速だが、軽く俺と手合わせしてもらおう。』
「わかった」
『返事は"はい"だと言っただろう!ハァ……、まずはその甘ったれ性格を叩き直すところから始めんとな』
そう言い切るや否や、父の乗るCAがこちらへと向かって来る。
振り下ろされた刀をバックステップで躱す。
次々と襲いかかって来る攻撃を間一髪で避け続ける。
――見える、俺でも父さんの攻撃を見切れるぞ!
時折盾で防ぎつつ、相手の動きを見切ることに専念する。
『どうした?逃げてるだけじゃ勝てないぞ!』
――うっせぇな。実力差があるんだから、敵の動きを見切ってからの方が勝てる確率が上がるに決まってんだろ!
全く攻撃を仕掛けてこない俺に父が挑発を仕掛けてくるも、依然変わらず受けに専念し続ける。
このままでは練習にならないと感じたのか、攻撃のスピードを徐々に上げ始めた。
――よし、ちょっとずつ父さんにも隙が出て来たな。後は距離を保ちつつ攻撃を――――
そう思った矢先、相手の動きが先程までと変化する。
ついさっきまでは地上戦を続けていたのに対し、スラスターを使いつつ空中からの攻撃方法を増やしてきたのだ。
『ほら、受けに回り続けるから劣勢に追い込まれるんだぞ』
「クソッ――」
『少し緊張感を与えてやろう。もしこの勝負で一度も俺に攻撃を当てられなかったら、今日のお前の晩飯は抜きだ』
「は?ふざけ――」
『嫌ならさっさと本気を出すんだな』
晩飯抜きだけは避けたいので、隙を見て攻撃をし始める。
『おいおい、そんな攻撃じゃいつまで経っても当たらんぞ』
「……今だ!」
相手と鍔迫り合いが起こったその瞬間、刀身を受け流すと同時に、スラスターをフル活用し目一杯機体を回転させる。
そうした結果、相手の体勢を崩しつつ、背後を取ることが出来た。
――よし、獲った!
刀を相手に振り下ろす。
勝負は決まったかに思われたが、突如相手のバックパックが開き、中から銃を装備した副腕がいくつも飛び出して来た。
画面がペイントで覆い尽くされる。
一瞬の出来事で理解が追いつかない。
すると、終わりを告げる父からの通信が入って来た。
『勝負あったな』
「は?あんなのズルだろ!俺は何もカスタムしてないんだぞ!」
『実戦じゃ相手がどんな攻撃をしてくるかわからんぞ。甘ったれたことを言うな』
――そうだった。昔っから父さんは負けず嫌いだったっけ……。
俺はやるせなさを感じつつも、軍人である父相手にそこまで追い詰めることが出来た、という事実に嬉しさを感じていた。
格納庫へと戻りCAから降りると、手合わせを見ていた周りのパイロットから、賞賛の嵐が俺へと向けられた。
「君、凄いなぁ。あの神谷中佐とここまでやりあえるなんて!」
「お世辞抜きに惚れ惚れしちゃったよ。私の隊に入らない?」
「いや、この子は俺の隊で育ててみせる!是非とも俺の隊に来ないか?」
照れながら父の元へと向かうと、俺が賞賛されているのが嬉しいのか、誇らしげな顔で佇んでいた。
「カイ、良かったな」
「あぁ……じゃなくて、はい!」
「少し休憩したらまた訓練再会だ。体を休めておけ」
「了解!」
ここまでは良かった。
父と歩いていると後ろの方でボソッと、
「今の神谷中佐ならワンチャン勝てるんじゃないか?」
と口に出したパイロットがいた。
父の歩みが急に止まり、今来た道を戻って行く。
その後、練習場からは悲痛な叫びが響いていたのは言うまでもないだろう……。




