一章 2話 プレゼント
春乃と合流した俺はさっき買ったネックレスを彼女に渡した。
「……え?まさか買ってくれたの?」
「あれだけ気に入ってそうだったからな。いらなかったか?」
「そんなことないよ!めちゃくちゃ嬉しい!大切にするね!」
そう言うと彼女は早速ネックレスをつけた。
明るめの茶髪、茜色の背景と相まってとても似合っている。
「どぉ?どぉ?似合ってる?」
「馬子にも衣装って感じだな。」
「ありがとう!ふふっ」
少しドキッとしてしまい咄嗟に誤魔化してしまったが意味は伝わっていないようだった。
――危ない危ない。俺がこいつを可愛いと思うなんてありえない……。何かの間違いだな、うん。
俺はそう思うことにして、できるだけ深く考えないようにした。
「ねぇ、ねぇ。明日から三連休だからどこか遊びに行こうよ。せっかく買ってもらったんだから私服もぴったり合うのにしてどこか行きたいな〜」
「別にいいぞ。この三連休誰も予定が合わなくて暇だったからな。どこか行きたいところとかあるか?」
「映画館に行きたい!ちょうど一昨日から見たい映画が始まったんだ〜」
「わかった。じゃあ明日は映画でも見に行くか!」
「うん!約束だからね。絶対に遅れないでね」
「はいはい、わかってるよ。お前こそ夜更かしして寝坊するとかやめろよ」
そんな軽口を叩き合いながら帰り道を進んで行った。
ポケットに入ったスマホがずっと震えていたが、学校からの番号だったので俺は無視することを決めた。
――だって反省文の半分がもう半分と同じだなんて怒られると思ったんだもん。
――もし、この時に一度でも電話に出ていたら、これから起きる地獄は少し変わったのかもしれない。そんなことは梅雨知らず、俺は春乃と暗くなりつつある空の下帰宅しようとしていた。