26話 違和感
眠りから覚めると、時刻は18時を回っていた。
どうやら6時間以上眠っていたらしい。
部屋にいるはずの春乃の姿は見えない。どこかへ行っているのだろうか。
しばらくベットに座っていると、食料と水を持ってきた彼女が部屋に戻ってきた。
「あ、ちょうどいいタイミングで起きた。これ、少し前に配給の放送があったから取りに行ってたんだ〜」
「サンキュー。ちなみに今状況はどんな感じになってるんだ?」
「まだかかってるみたいだよ」
「そうか、まだ終わってないのか……」
敵は500以上いるのに対して俺たちが出せるCAはこの基地だけで50機前後、近くの基地からも応援が来るとしても数百機も集めるには一苦労するだろう。
できるだけ被害が少なくなることを願いつつ、俺は春乃の持ってきた配給に手をつける。
そこから小1時間程だろうか。施設の放送にて、敵の殲滅が完了したという情報が発信された。
この日はそれ以降、特に大きな変化等も無く、日付けを回る前には明日に備え寝ることにした。
――
――――
翌朝。
昨日寝ている時間が多かったからか、6時には目が覚めてしまった。
特にこれといってやる事もなく、暇を持て余してしまうため、体力作りも兼ねて早朝のランニングでもしようと決めた。
春乃を起こさないように部屋を出た後、休憩を挟みつつ1時間半ほど走ると、終わる頃には足は棒のようになっていた。
部屋に戻り汗を拭こうと歩いていると、偶然廊下の奥からこちらへ向かってくる父さんと鉢合わせした。
「カイか、こんな時間に汗だくで何やってたんだ?」
「ランニングだよ。もしもの時に備えて少しでも体力を作っておいても損はないからな」
「――――」
普段の俺からは想像できない行動に父さんは目を見開いている。
――なんでどいつもこいつも俺のことを怠け者かなんかだと思ってんだよ。……まぁ、つい最近までだらけてはいたけど。
そんなことを考えていると、父さんは俺に今日の訓練について伝えてくる。
「カイ、今日からお前の訓練は俺がやってやる」
「……え?佐倉大尉じゃないの?」
「佐倉大尉はしばらく……いや、今後お前に指導することはないだろう」
「……なんで?」
「いや、気にするな。俺の方が詳しく説明出来るしな」
確かに、父さんに教わった方がきちんと指導してくれるだろう。
佐倉大尉について父さんの言い方に違和感を感じたが、俺が話し始めるよりも先に話を進められてしまう。
「8時からしごいてやる。その階段を降りて左に曲がると保健室があるのは知っているな。そこから先に進んだところにシャワー室があるから汗を流しておけ」
そう言うと父さんは足早に去っていってしまった。
いくつか聞きたい事もあったが、また時間が空いている時に聞けばいいと考え、シャワー室へと向かう。
言われた通りに進んでいると、保健室に差し掛かった。
そのまま先へ行こうとすると、保健室の中から悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「この声は……佐倉大尉?」
嫌な胸騒ぎがする。
恐る恐る扉を開けると、ベットの上で大粒の涙を流している彼女がいた。
ただ、昨日と違っている点が1つあった。
それは、昨日まであったはずの彼女の右腕が消失していることだ。




