23話 騒々しい人
俺は父さんからのお願いを了承したことに後悔し続けていた。
あの後、今日はもう遅いので翌日からCAに乗ってもらうと言われ、春乃のいる牢に帰された。
春乃はすっかり眠っているが、俺は全く眠れずにいた。
いや、眠ったらすぐに明日が来てしまうため、眠らないようにしていると言う方が合っているだろう。
「あんな父親を持って損したわ。俺の数少ない宝物を人質にしてくるなんて……」
どんなに後悔しても、もう遅い。
はぁーっ、と大きなため息をつき頭まで布団を被る。
――
――――
朝が来てしまっていた。
寝たくない気持ちとは裏腹に体は一刻も早く休みたかったのかもしれない。
スマホの時間を見ると時刻はまだ7時だった。
「まだ7時か……。よし!今日は学校があるはずもないし、もう一寝入り――」
「おはようございます!」
牢へのドアが開いたと同時に、元気のいい朝の挨拶が発せられる。
そこに立っていたのは同年代ほどの整った顔立ちの女性軍人だった。
「君が神谷中佐の息子君だね!」
「いえ、人違いです」
「あれっ、失礼しました!」
こんな早朝から面倒ごとだなんてごめんだ。
俺はそう考え、女性の軍人へ人違いだと伝えると、足早に出ていってしまった。
――まだ3時間くらいしか寝ていないのに冗談じゃない。
「嵐はさったな、じゃあおやすみなさ――」
「やっぱり君で合ってるじゃないか!」
二度寝をキメようとした俺をまたもや妨害してくる。
「私を騙そうだなんて10年早いわよ!」
「さっき簡単に騙されたじゃねぇか……」
「あ、あれはわざとよ。そう、わざとなの!」
騙されたことを指摘された彼女は、顔を真っ赤にしながらしどろもどろ見栄を張っている
コホン、と咳払いをし自己紹介とここへ来た理由を話し始める。
「私は佐倉 霞大尉です。神谷中佐から息子君への指導を頼まれて来ちゃいました!」
「あ、俺は神谷廻人です。父さんにはなんか適当に才能がなかったとか言っといてください。じゃ、おやすみ!」
「えぇ、おやす……じゃなくて、それは困るよ〜。ねぇってばぁ!」
頭から布団にくるまり、アルマジロのように丸くなる。そんな俺を起こすべく、佐倉大尉は無理矢理布団を引き剥がそうとしてくる。
「ほら、早く起きなさ――」
「うわぁっ!」
強引に布団を引っ張ったことにより、俺は彼女を床に押し倒すような形でベットから落下してしまう。
「……いってぇ〜」
「痛がってるところ悪いんだけど、早くどいてくれないと彼女さんが……あっ」
「すみません。すぐにどき……あっ」
2人の視線の先にいたのは、口を大きく開け、この状況を理解できずにいる春乃だった。
「お前、いつから起きて……じゃなくて、これは誤解なんだ!」
「そうよ!全部悪いのは廻人君で……」
「廻人君……?へぇ〜、カイちゃん、いつの間にそんな美人な子と下の名前で呼び合う中になったんだ」
「ち、違……話を聞――」
説明をしようとする間も無く、春乃の拳が俺の顔を襲う。
俺は意識を刈り取られ、一発KOを喫してしまった。




